僕が監修させて頂いている、書道漫画「とめはねっ! の単行本第一巻が発売されました(^^) 表紙の書と帯を書かせてもらっています。河合先生の手にかかると書の世界がこんなになるとは。


また僕が題字を書かせて頂いている北方謙三先生の「楊令伝 」の第一巻が発売されました。「水滸伝」の登場人物の書も全部違う書風で書いています。ご覧頂ければ幸いです。北方ワールドは強烈です。


さて、今回は「智慧」(智恵)についておもしろいエピソードを聞いたのでご紹介しますね。僕の作品集にも「智」がありますが、最も好きな漢字の一つです。


先日、お仕事のオファーでメーカーの社長さん(Aさん)が僕のアトリエにいらっしゃいました。風貌は金髪でとんがった40代の男性ですが、少し話しただけで「あっこの人、普通の人とは全然違う。」と感じました。


Aさんは、初対面の僕に対して、様々な苦難の過去を語ってくれました。生まれつき両親がいないという彼は、いつも孤児院を脱走していて、幼い頃の思い出はパトカーの後部座席くらい。国の奨学金で何とか食いつないで生きていたそうです。


10代の最後の頃に、貧乏仲間で男4人が集まって、幻覚が見えるほどお腹がすいたことがあったそうです。そこでなけなしの金を出し合ったところ、全部で1200円くらいだった。


この1,200円で何を買おうか悩んでいた時に、B君が「俺に任せろ」と言って持って出て行った。残された3人は彼を信じて待っていたが、帰ってくる気配もない。だんだん彼を疑い出してきて、みんなが怒ってくるがお腹がすきすぎて怒ることもできない。


夜中に彼が戻ってきました。


3人は食べ物のことしか頭にないので、彼がどんな食べ物を買ってきてくれたのか期待します。しかし彼の手には一冊の本しかありませんでした。


3人は呆れました。

彼は頭がおかしくなったのでしょうか。




なんと、その本の題名は「食べれる野草」でした。



それからというもの、このAさんを含む4人は餓死せずに済んだのです。もしB君が1,200円で買えるありったけの食べ物を買ってきたとしても食べ終わったらどうなるのでしょう。


まさに「智恵」の素晴らしさをわかりやすく理解できるリアルなエピソードに感動した僕はAさんが帰った後にすぐにこの書を書きました。



智恵


もう一つ、とても不思議なことがありました。


Aさんは今、世界中に多くのファンを持つブランドを作り出している会社の代表です。話せば話すほどピュアで魅力的な方で、彼が創りだす物はとても人の心をひきつけます。


両親の愛を生まれながらに受けることができなかった人間がなぜ、ここまでの人間に成れるのでしょう。


もしかしたら、人間はどんな環境で生まれようと、どんな環境で育とうと、自分の意思しだいでどんな人生をも創りだす事ができるのではないか。


つまり、「智恵」さえ出し合うことができれば、どんな人間でも素晴らしい可能性が開けるということ。


という希望を持たざるをえない出会いでした。

素晴らしい出会いに感謝。