先日、撮影で実家に帰った時に、久々にドラゴンボールを読み返しました。強すぎるナッパに立ち向かう戦士たちに勇気をもらい、助けに来たカカロットの登場シーンに目がウルウル。31歳になった今でもあの頃と同じ興奮がありました。鳥山明さんはすごい。


さて今回は珍しく書道について語ろうと思います(笑)


お習字と言えば、お手本を写すというイメージがあると思います。そしてお手本と違う部分を赤で修正される。それが嫌でお習字が嫌になった人もいるでしょう。


どの世界も、真似というものはとても大切。野村萬斎さんと共演した時におっしゃっていたのが、学ぶの語源は「まねぶ」。つまり模倣こそが学びの基本とのこと。


書の世界も臨書といって、何千年前のお手本を模倣することによって、歴史を学び、自分の礎としていきます。ただ目でお手本を見るだけでなく、心で盗むというか、感じる。形だけでなく、風合いや書き手の心情まで汲み取る。お手本を模倣するということは、思った以上に奥が深いものです。見ているようで見れていないものです。


しかし、「守離破」という言葉にあるように、お手本を学ぶことは手段であり目的ではない。破って離れてようやく自分と少しずつ向き合うことができます。


離れるとはどういうことでしょうか。いわゆる自立です。自分の力だけで書の美を創り上げていきます。書の世界でいう自立についてもう少し詳しく話します。


一画目を書き終えると、次の2画目をどうするか悩みます。


どこから書き始めるのか。

どういう角度で筆を入れようか。

どのような線質にしようか。

どのようなベクトルにしようか。

どのような長さにしようか。

どのようなスピードで運筆するか。などなど


そして2画目を終えると3画目を同じように悩みます。

1画目と2画目の合計を鑑みて、3画目を決定していきます。

これを繰り返して一字が完成したと安心する暇もなく二字目に突入します。


こういう大量の悩みを瞬時に選択しながら、次々に筆を進めていかなければなりません。お手本がない状態で、持ちうる技術が多ければ多いほど選択の幅が広がる分、悩みも増えます。


選択するということは、他の大量の何かを切り捨てているということ。


優柔不断な人はもうそれは大変です(笑)


また、最後の方で苦しまないように事前の計画性も大切です。しかし計画通りにことは進みません。


以下は、書を書いている時の心の声の例です


「あっ、かすれた。じゃースピードを緩めよう。おっ、思った以上にバランスが上に偏っているから、今から書く線を太めにしないとバランスとれないな。おっと最後だ、どこまで線を伸ばそうか、やりすぎるといやらしいな、ここらへんんで止めておこう。」


まるで人生と一緒。

計画性も大事だけど、その通りにはいかない。困難にぶつかる度に創意工夫をしていく。ちょっとかすれたから、思った線が書けなかったからってすぐに紙を破り捨てて次の紙を用意する方が多いですが、失敗や困難を活かすようなアイデアと行動があれば必ず素晴らしい字になっていきます。


また、人生においても、家の中でずっと悩んでいても解決することは少ないですよね。行動してみて失敗を繰り返すうちに答えが見つかることが多いはず。書においても、紙を目の前にして何もせず考えていても何も生まれない。まずは書いてみて、ぶつかってみて、悩む。そして次へ。


人間の知恵はおそらく僕らが思っている以上に力を持っているはずです。


書も人生も目の前の課題に対して、創意工夫をしながら進んでいくことに喜びがあるのではないでしょうか。



創意工夫