ついこの前、母が掃除をしていると、父と結婚する前に履いていたズボンが出てきて、それを懐かしいなぁーと僕達の前で話していたら「じゃあ、今履いてみ?」というノリになって、履いてみたらボタンが閉まらなくて、母は顔面蒼白で膝から崩れ落ちました。
その日から、食卓の野菜の量が増えていたり、鶏肉は基本ササミだったり、御菓子を一切買ってこなかったりと、僕達も被害を受けていたのですが、まだ我慢できない訳じゃないので母のダイエットに協力していました。
でも、こないだ母から「私、ケトン体質になるわ」という聞いた事もないフレーズが出て、嫌な予感がしました。
それで「ケトン体質って何?」って聞いてみると「なんか、ココナッツオイルを使うとなるらしいのよ、痩せるみたい。」と母は言いました。
本当にこの人はケトン体質が何か理解しているのか?
みたい、らしい、などという曖昧な情報で本当にケトン体質になれるのか?ケトン体なめてないか?てかケトン体ってなに?
しかし、母のどうしてもココナッツオイルに挑戦したい、そして、ケトン体質を手に入れるんだという熱い想いに心を動かされ、僕は協力しようと思いました。
「ミランダ・カーも愛用してるみたい」という母の言葉に、なんでミランダ・カーさんと同じ土俵で戦ってるんだとちょっとイラッとしましたが、僕は母に頼まれたココナッツオイルを買いに行きました。
お店には、ココナッツオイルを買う母と同じ様なお客さんが沢山いて、ビックリしました。
よく分からないけど…皆…頑張れ…。
翌日から母のココナッツオイルダイエットは始まりました。
僕も試しに、母がやってる様にココナッツオイルをコーヒーに入れてみたのですが…
これが、半端なくまずい!!
俺がココナッツじゃい!!というココナッツの主張が激しい。
思わずオエッてなります。
それから、色々な飲み物にココナッツを入れてはオエッてなる母を見て、なんだか複雑な気持ちになりました。
これまで、親のオエッがこれ程不快なモノだと気付きませんでした。
そして、やがてココナッツ達は勢力を増し、僕達の食卓まで侵略してきました。
サラダやスープ、あらゆる物に誤魔化されて入っていました。
でも、全然匂いも味も誤魔化せてませんでした。
父と弟と僕、僕らは声を大にして言いました。
「ちょいちょいココナッツを入れるのを止めてくれ…」と。
「全然誤魔化せてないぞ…」と。
しかし、母は「一日、50グラム摂らないと意味ないからっ!!」と理不尽な逆ギレをしました。
※50グラムのココナッツオイル、禍々しい迫力。
そして、母は「ココナッツが減らないと体重は減らない!!」という謎の名言を言いはなってスープを一気に飲み干しました。
オエッてなりました。
そんな姿を見た父が心を打たれたのか「母さんに続け!!」と言って勢いよくスープを飲みました。
僕と弟も後に続きました。
皆でオエッてなりました。
それから数日後、ココナッツオイルは半分以上減り、僕達はもうすぐであのココナッツの入っていない平和な食卓に戻れる…と信じていました。
しかし、そんな僕達の希望はあっけなく絶たれました。
昨日弟が「お兄ちゃんっ!!」という尋常じゃない声で僕を台所まで呼び、冷蔵庫を開けっ放しにしていたので、僕は「冷気が逃げるでしょ!」と叱りました。
すると、弟は震える手で冷蔵庫の中を指差しました。
そこには…
ココナッツオイルの瓶が…3つあった。
初めて「猿の惑星」を観たときのあのラストの…実は今いる猿の惑星が未来の地球だった…という衝撃。おそらくあの主人公と同じくらいの絶望が僕を襲いました。
ココナッツオイルの食卓。
僕達に平和な食卓はやってくるのだろうか…。
オエッ。
※僕はココナッツオイルが苦手でしたが、本当にココナッツオイルには美容の効果があるので是非興味のある方は試してみて下さい。流行ってるみたいですね♪