◎ラルフ・ロールのドラム・クリニック~ドラムスの秘密を伝授 | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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◎ラルフ・ロールのドラム・クリニック~ドラムスの秘密を伝授

【Ralph Rolle’s Drum Clinics】

伝授。

2015年6月16日(火)、下北沢のスタジオ・ベイドで久保田利伸、ナイル・ロジャーズなどのドラムスを担当するラルフ・ロールのドラム・クリニックが行われた。ほぼ満員となり、若干の補助席まで追加。

ドラムスのラルフのほか、キーボードにケイリブ・ジェームス、ベースにクリフ・アーチャー、ギターに三浦俊介の4人がステージに上り、ラルフがドラムについてのレクチャーをしながら、彼らの実演も聴けるという楽しい音楽イヴェントだった。

これが行われたのは5月についで2度目。僕は前回行かれなかったので、今回初参加。
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1曲レイ・バレットの「ルクリシェ・ザ・キャット(Lecretia The Cat)」(ドラムスはビリー・コブハム)を4人で演奏して盛り上げてから会はスタート。

Ray Barretto Lucretia The Cat
https://www.youtube.com/watch?v=NXH7PLb06BY



これの後半でラルフが長尺のドラム・ソロを聴かせる。

一曲熱演が終わったところで、「まず、紙とペンを用意してな」といって、多くの話をし始めた。

「僕がドラムスを始めたのは、兄がドラム・セットを持っていたから。それを見様見真似で触り始め、すぐに気にいった。ところがあるとき、兄が家を出ていき、ドラム・セットもなくなった。後からわかったんだが、兄に彼女ができて妊娠させてしまい、金がなくなってしまったので、ドラムスを売り払ってしまったんだ」

「自分が影響を受けたドラマーはたくさんいるが、一番最初に影響を受けたのは、ここにいる誰もが知らないリッキー・ウィリアムスというドラマー。僕の近所に住んでいた年上の人物だ。彼のドラムスを真後ろに立って、ずっと見ていて、その叩き方をすべて盗もうとした」

「ソウル・ミュージックの元にはゴスペルがあり、ブルーズがある。メロディーはアフリカから来ている。みんなにはそうしたルーツを知ってほしい。ここで典型的なブルーズの形をやってみよう。いわゆる12バー・ブルーズ(12小節のブルーズ)だ」

ここでその12バー・ブルーズを試しに叩き、4人で演奏。そして、同じものを「シャッフル」のリズムで叩き、一緒にバンドで演奏。

「これはビートルズやビーチボーイズでさえも、やって、それを自分たちの曲にしていた」

「僕が影響を受けたドラマーは、ほかに、(ジェームス・ブラウン・バンドの)クライド・スタブルフィールド、ビリー・コブハム、スティーヴ・ガッド、ハーヴィー・メイソン、そのほかたくさんいる」

「僕が生徒にドラムスや音楽を教えるとき、一番最初に教えることは「キャントCan’t=できない」という言葉は決して言ってはいけないということ。なんでも練習すれば、必ずできるようになる。言葉で「キャント」といったら、そこでおしまいで、進歩しない。かつてジェフとマイケルという二人の教え子がいたが、ジェフはいつも「キャント」(できない)と弱音を吐いていた。もうひとりのマイケルは課題を積極的にこなし、できないと思っても、やってきた。2年後にマイケルは、僕が太刀打ちできないほど上達していた。ジェフはその後、ドラムを辞めてしまった(笑)。これはドラムスだけでなく、音楽全般、なんにでも言えると思う」

「音楽をプレイするとき、しばしば目を閉じてプレイしてみろ、という。目を閉じてグルーヴの中に入ってきなさい。そうすれば、いろいろと(目を開けていて聴こえない音が)聞こえてきます」

「バンドメンバーとやるとき、ドラムスはいわば近所の警官(Cop on the block)、このあたりを見回るポリスマンなんだ。つまり、あらゆるミュージシャンをコントロールする立場にある。誰かが何かを間違えたら、「ノー、ノー」と言って止められる。それはドラマーが「コップ・オン・ザ・ブロック」だから」

「音楽を志すときには、5つのPを教えている。パッション(情熱)、パワー、プレイスメント、パフォーマンス、ピュリティー(純粋さ)だ」

「自分は今まで多くのアーティストのドラムスを担当してきたが、一番大変で難しかったのが、ロバータ・フラックだった。たとえば、『キリング・ミー・ソフトリー』、あれなんか、本当に難しい。そして、2番目がディアンジェロだった。僕はディアンジェロのファースト・アルバムで叩いていて、最初のツアーに出た。あのグルーヴは本当に難しかった」

ディアンジェロの話は、このクリニックが終わった後に、ラルフからじっくり聞いたので、その話はまた後日。なぜファースト・ツアーだけで彼が辞めたのかなどおもしろい話がある。

「ポケットの話をしよう。ポケットの中に入ることが必要だ。ポケットの外だとダメだ」

といって、ポケットについての説明をドラムスとバンドで実演。これがポケットで、これがポケットからはずれているもの、と音で教えて見せてくれた。これはさすがに文字にできないので、興味ある方はぜひ次回のクリニックにおいでください。

このあと、ドラマーはいるかと観客に尋ねて、モミー・ファンクのドラマー、ルイさんと女性ドラマー、ミカさんが横のドラムスを実際に叩き、バンドとセッション。それについて、ラルフが講評をした。

ほかに、ラルフが歌う「レッツ・ダンス」、アル・グリーンの「レッツ・ステイ・トゥゲザー」などをパフォーマンス。

ルイさんとミカさんがチャレンジした曲。

James Brown – Give It Up Or Turn It Loose
https://www.youtube.com/watch?v=dTJEu7Tngaw



James Brown – Sex Machine
https://www.youtube.com/watch?v=Ajzpd-ONOdo





そして、ポケットをミュージシャン同士で共有できるかどうかということで、ダメな例と良い例をやってみせ、そのときのケイリブとラルフのやりとりもおもしろかった。

もちろん、この場で演奏される曲は、一部を除いてはその場のトークで出てきた曲をアドリブでプレイしている。さすがに、ケイリブやクリフ、三浦俊介だ。

ラルフのハイハットの音が、「シャフト」に似ていたので、最後に「シャフト」をリクエストしたらその場でやってくれた。

最後の質疑応答などを含めて、約2時間半、予定をオーヴァーしての盛り上がりっぷりだった。

全編同時通訳(メイフェンさん)がついて、英語ができなくても、楽しめるイヴェントだ。初回には僕は参加していないが、初回とはまた違った内容になっていた、という。きっと、3回目も話題がいろいろと飛んでおもしろいことになるのだろう。

次回は、2015年7月17日(金)、同じくスタジオ・ベイド(下北沢)で。

概要、予約の仕方などは次の通り。

ラルフ・ロール・プレミアム・ドラム・クリニックス
日時: 2015年7月17日(金)19時30分~21時30分
場所: 下北沢スタジオ・ベイド
東京都世田谷区代沢5-8-14-B1F
電話:03-5432-0040
http://www.studio-bayd.com/simokitazawa/ 地図あります。下北沢駅から徒歩8分
料金:5000円 (前売り4700円)
席数:約40、これに立見席が増えます

予約の仕方: 

1) 予約専用サイトから

http://www.ralphrolle.com/Ralph_Rolle/Drum_Clinic.html
ここにアクセスし、Buy Nowをクリックしてチケットを購入。ペイパルかクレジットカードで決済します。

2) メールで予約 日本語で対応します。

ralphdrumlesson2015@gmail.com (コピー&ペーストしてください)へ希望者の名前(フルネーム)、人数、連絡先をお送りください。折り返し、確認メールを送ります。なお、携帯からのメールで受信制限をしている場合、gmail からの返信メールが受信できるように設定してください。

またお問い合わせは、直接、スタジオ・ベイド宛に電話03-5432-0040していただいてもかまいません。

ドラム・クリニック・専用サイト
http://www.ralphrolle.com/Ralph_Rolle/Drum_Clinic.html

セットリスト (いくつかの曲は、曲の一部だけの演奏です)

01. Lucretia The Cat {Ray Barretto}
02. 12 Bar Blues
03. Shuffle
04. 12 Bar Blues, Inspired Beatles song
05. Killing Me Softly With His Song [Roberta Flack]
06. Thank You [Sly & The Family Stone]
07. Give It Up Or Turn It Loose [James Brown]
08. Sex Machine [James Brown]
09. Let’s Stay Together [Al Green]
10. Eric B Rakim Song
11. Busta Rhymes Song
12. Way Out – [Slave]
13. Good Times [Chic]
14. Another One Bites The Dust [Queen]
15. Rapper’s Delight [Sugarhill Gang]
16. Let’s Dance [David Bowie]
17. La La La Love Song [Kubota Toshinobu]
18. I Like It [Debarge]
19. Theme From Shaft [Isaac Hayes]

メンバー

Ralph Rolle (Drums, Vocal, Talk)
Kaleb James (Keyboards)
Cliff Archer (Bass)
Miura Shunsuke (Guitar)

通訳:メイフェン

(2015年6月16日火曜、下北沢ベイド・スタジオ、ラルフ・ロールのドラム・クリニック)
ENT>MUSIC>DRUM CLINIC>Ralph Rolle