★◇マンガ『ファンキー社長』~ジェームス・ブラウンを描く~作者インタヴュー(パート2)
【Cartoon “Funky President” About The Author】
ファンキー社長。
『ファンキー社長』の生みの親、アベさんに話を聞いた。(インタヴューはメールでのやりとり)
~~~
きっかけ。
---まずはどういうきっかけでジェームス・ブラウンを主人公にした漫画を書き始めたのか教えてください。
アベ 6年ほど前(2009年、25歳)に、初めてジェームス・ブラウン氏を題材にした3ページマンガを描きました。
「男がソウル・フード(ラーメン)を食べるとソウルがみなぎってセックス・マシーンになって夜を愉しむ」というあまりに低俗なネタを寝る前にふと思いつき、その夜のうちに勢いで描き上げて印刷まで進めたものです。
あまりに酷い内容なので今はなかなか人に見せられませんが、その頃はジェームス・ブラウン氏の知識もほとんどなく、「ヴィジュアルのインパクトが強烈だったから」とか「なんとなくファンクに魅力を感じていた」とか、そんな感覚でブラウン氏を題材にしました。
その後6年間で、同じようなマンガを計7種ほど印刷しました。当時は身内に配ったりという程度で、ウェッブは全く使っていませんでした。内容も私の嗜好100%で、読んだ方には散々な評判だったのですが、それで満足していました。
27歳(2011年)頃からどんどんブラウン氏の音楽に惹かれていきました。自伝や雑誌の特集記事なども読み、音楽だけでなくその人間性に惹きこまれました。
このブラウン氏のカッコよさをもっと読みやすいマンガにして、もっと多くの人に知ってもらえるように描いてみようかなと思うようになりました。
アイデアを練っている時に出てきた「ジェームス・ブラウン氏の一座もまさにブラック企業だな~」という少し不謹慎な思いつきを膨らませて、今のファンキー社長の設定に至りました。
~~~
好きな曲。
---ミスター・ブラウンのレコード、作品で個人的に好きな曲はなんですか。 2-3曲あげてください
アベ いざ振り返ると、2~3曲に絞るのはとても大変でしたが、一番好きなのは「パパズ・ガッタ・ア・ブランニュー・バッグ」(1965年)です。1970年以降のファンクよりもこの時期の曲のほうがファンクを感じることができて、好きですね。1960年代の曲の中でもこの曲は特にホーンとギターが最高にカッコイイです。タイトルが『新しいやり方を持ってきた』と意訳されるというのを聞き、そこでもシビれました。
数年前に渋谷で開催された「トーク・イナフ」というジェームス・ブラウン勉強会のイヴェントに行き、そこでオーサカ=モノレールの中田さんがこの曲を用いてブラウンの音楽を解説していたのが印象深かったというのもあります。
https://www.youtube.com/watch?v=SV95pdw3pDw
次にアルバムとしての『セイ・イット・ラウド、アイム・ブラック・アンド・アイム・プラウド』(1969年)です。当時、アメリカ黒人史をサラッとかじっていたのでこのアルバムとしても、楽曲としては強烈にインパクトがありました。その後、サビの子どもの声の中には白人もいると聞いて笑ってしまいましたが。他の曲と比べて音数が少ないのでしょうか、独特のシンプルさのようなものがあって癖になる曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=Knw_rUP64wM
最後に「ゲタップ・ゲット・イントゥ・イット・アンド・ゲット・インヴォールヴド」(1971年)です。オリジナル盤ではありませんが、確か初めて買ったブラウン氏のレコードです。この曲をサンプリングしたビッグ・ダディ・ケインの「セット・イット・オフ」(1988年)が好きだったのが、買ったキッカケだったと思います。
この曲はすごく尺が長く、ずっと1ループと思いきや中盤でギターやホーンのリフ(?)が入りまた元のループに戻るという極端な展開が天才的で最高にカッコイイです。たぶんクラブなどで酔って聴いたら多幸感で悶絶するだろうなと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=SYrXdkKQTeE
~~~
キングギドラ。
---ジェームス・ブラウンのライヴは見たことがありますか? あれば、いつ?
アベ 残念ながらありません。ジェームス・ブラウン氏をちゃんとマジメに聴いたのは、お亡くなりになったずいぶん後です。私はこんなマンガ描いている割に音楽に疎く、本当に悔やまれました。
余談ですが、『ライヴ・アルバム』は1971年オリンピアのものが一番好きです(ベタですが)。迫力がケタ違いに感じられます。
https://www.youtube.com/watch?v=aeUyELIHa2o
---初めて聴いた「セックス・マシーン」「ファンキー・ドラマー」は、いつ、どこで、どのような状況で聴いたか覚えていますか?
アベ 確か18歳くらいのとき(2002年頃)、大好きだったキングギドラの曲でKダブシャイン氏が「もう一度ジェームス・ブラウンから聴け」とラップしておりそのとき私がKダブ氏に傾倒していたので素直に聴いた、というのが初でした。私が中学・高校の頃は日本語ラップ全盛で、私も18歳になる頃にようやく日本語ラップを聴き、当時はジェームス・ブラウン=ファンクの生みの親というようなことすら知りませんでした。
ツタヤでジェームス・ブラウン氏のベスト盤(何だったかは忘れました)のCDを借りて「セックス・マシーン」を聴きましたが、正直当時はまるで理解できませんでした。「盛り上がってきたな、もうすぐサビだな」と思って聴いていたら、同じループに戻ったのでけっこう衝撃を受けたような記憶があります。
「ファンキー・ドラマー」も同じようにツタヤで借りて聴いたと思います。こちらは「セックス・マシーン」よりも好んで聴けましたが、ハマるほどではありませんでした。「ああ、確かにここのブレイクがよくサンプリングされてるんだな。でも何でそんなたくさんのラッパーに使われたのかな」くらいの印象でした。
そこからディスコ、ダンス・クラシック、Pファンクなどを経てジェームス・ブラウン氏を再び聴き、あまりのカッコよさに衝撃を受け、いわば再発見し、過去の自分を恨みました。(笑) そこから積極的に聴くようになって現在に至ります。
~~~
魅力。
--- アベさんにとって、ミスター・ブラウンの最大の魅力、「俺はブラウンのここに魅かれる」というポイントはどこでしょうか。
アベ 楽曲面では、他のバンドには無い緊張感、タイトさ。ブラウン氏の絶対的な統制力がそうさせているのか、あの独特の息が詰まるようなリズムが最高です。
ただ、私が最も魅力を感じているのは音楽性よりもその生き様や考え方、実行力などです。壮絶な貧困に生まれた南部の黒人という境遇でも決して屈しない。自分の判断に100%頼り切る、それでいて油断しない、前例に従わない、果敢に挑戦する、成功の何倍も失敗や挫折を繰り返している、それでも諦めない。アポロで従業員にタキシードを着せた話とか、前例のなかったライヴ盤を定番化させた話とか。私は会社員なのですが、こうしたビジネスに対するブラウン氏のスタンスは今の自分にとって尊敬すべき鑑ですし、多くのビジネスマンにとってもそうだと考えています。
「ビル・ゲイツやスティーヴ・ジョブズよりジェームス・ブラウンだろ!」とか「ドラッカー読むヒマあったらジェームス・ブラウンの自伝読め!」みたいな感じです。
チャドウィック・ボーズマンを見習い、2017年までにスプリットができる体を目指し、半年前からストレッチを継続しています。
---ありがとうございました。
というわけで、『ファンキー社長』作者のインタヴューでした。ジェームス・ブラウンによって、ちょっと人生を変えられた一人の人物をご紹介しました。
ENT>CARTOON>Funky President
ENT>CARTOON> Fuckin’ Jay