◎ケム初来日~親密空間でのケム宇宙 | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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◎ ケム初来日~親密空間でのケム宇宙

【KEM First Ever Japan Concert : The KEM Universe In Intimate Space】

初。

アメリカでは収容人数1万人以上のアリーナ・クラスの会場でやるというデトロイトのR&Bシンガー、ケム(KEM)が初来日。毎年ニューオーリンズで行なわれる「エッセンス・ミュージック・フェスティヴァル」でも人気アーティストのひとり。それがブルーノートいう親密空間で見られるということもあり、日本のファンは大ラッキー。

これまでに出した3枚のオリジナル・スタジオ・アルバム(プラス・クリスマス・アルバムもある)がいずれもゴールド・ディスク(50万枚以上のセールス)ながら日本盤は一切でておらず、ファンは輸入盤のみで知っているというソウル界のエアポケットにいるR&Bシンガーだ。だからアメリカと日本での人気の格差が最大級のアーティストでもある。日本の選挙で問題にされる一票の格差どころではない、日米人気格差は完全違憲状態だ。

音楽的にはいわゆるネオ・ソウルというかレトロ・ソウルというかいかにもここ10年の王道を来たという感じのライヴで心地よいひと時となった。「『ポスト・ディアンジェロ』をしばらく預かりました」という立ち位置のように思えた。自分で曲も書くので、ソウル版シンガー・ソングライターという香りが存分にする。その意味で、21世紀のビル・ウィザーズあたりなのかなあとも思った。

声が独特でとても印象に残る。顔が誰かに似てるなあと思うのだが、どこにでもいそうで逆に思い出せない。(笑) ちょっとした雰囲気がシール似かなあ、などとも思ってみたが、ちょっと違う。顔とか雰囲気とか、声などがカール・アンダーソンあたりのイメージに近いとも感じたが、そうか、井出らっきょ説も出てたか。(押野説)(笑)

ネオ・ソウル独特の軽さが、今の時代にちょうどよく、クールに熱くという空気感だ。メンバー全員、黒系のスーツにきちっとネクタイというおしゃれ系。

たとえば1曲目はアル・ジャロウ風、2曲目はジョージ・ベンソン風などちょっとジャズ風な雰囲気から徐々にR&Bテイストへ移行。5曲目「ホワイ・・・」はピアノをケム自ら弾いて歌う。7曲目「ファインド・ユア・ウェイ」では観客に「バック・イン・マイ・ライフ」の部分を歌わせるコール&レスポンスをけっこう長くやった。ちょうどこの日はデトロイト出身のブラザーが観客にいたようで、それとのかけあいもおもしろかった。ケムはかなり観客とやりとりをする。

そして自分の出自を語る場面もあった。僕のメモが汚くて読めないところもあったが、大意はこんな感じだった。8曲目「キャント・ストップ・ラヴィング・ユー」のところだ。

「僕は22年前デトロイトでホームレスだった。アル中になりドラッグ中毒になり病院に入りリハビリをした。刑務所にも入った。だがそんなことを今は恥じていない。その頃学んだ人生における最高の教訓は、人間みな試行錯誤をしたり、迷ったり、遠回りしたり、挫折したり、苦悩したりする。そうしたものが人間を作る、ということだ。そうした苦労や苦難を乗り越えられれば、なんとかなる。希望を持って先に進もう。そんなことを僕は今人々に伝道している。信じれば、きっと成し遂げられる。(if you believe, you can make it)」(「Can’t Stop Loving You」のところで彼がしゃべったことの大意)

まさに本人自身が「ソウル・サーチン」をしているということがよくわかった。同じくソウル・サーチンしているRケリー的なところも感じられた。

バンドもしっかりしている。ちなみにベースのアル・ターナーはデトロイトでケムとは10年近く一緒にやっているという。たまたま彼は翌週のアール・クルーでもベースをプレイするので、日本にそのまま居残り。

親密な小さな空間でのケム宇宙が生み出された夜だった。

ケム・オーエンズ、1969年7月23日テネシー州ナッシュヴィル生まれデトロイト育ち。現在43歳の苦労人だ。

ライヴ後はサイン会。最初写真はNGだったが、最後結局OKになって多くのファンと本人は写真撮影。残った人が少なかったからかもしれない。そういえば、さすがに大物だけあって、アーティストの取り巻きも多かった。

「アメリカでは大きな会場でしかやらないが、日本だけは特別に小さなブルーノートでやる」とケムが思ってくれればいいのだが。ちょうどナイル・ロジャーズがそう思うように。

ツイッターでは、KEMのライヴを思い出して余韻をつぶやくハッシュタグまで登場しました。4公演コンプリートの日本一のケムファン、アキコさんの作品。→ #KEMJapantour2013 

■ メンバー

KEM(vo)ケム(ヴォーカル)
Brian O' neal(key)ブライアン・オニール(キーボード)
Randy Bowland(g)ランディ・ボウランド(ギター)
Al Turner(b)アル・ターナー(ベース)
Ron Otis(ds)ロン・オーティス(ドラムス)

■ケム・セットリスト
KEM Setlist:
@KEM_Intimacy 
January 18, 2013 @ Bluenote Tokyo

show started 21:39
01. Golden Days
02. Brother Man
03. True Love
04. I’m Missing Your Love
05. Why Should You Stay
06. Share My Life
07. Find Your Way (Back In My Life)
08. Can’t Stop Loving You
09. Inside
10. Love Calls
Enc. Matter Of Time
Enc. Merry Christmas Baby
Show ended 23:00

(2013年1月18日金曜、ブルーノート東京、ケム・ライヴ)
ENT>LIVE>KEM

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