●訃報の扱いについて | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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● 訃報の扱いについて

【About Obituary】

慎重。

一昨日(6月3日深夜から6月4日未明)、一時、ティナ・ターナーの訃報(実際は誤報)が一部のツイッターなどに流れた。僕も最初にみたときは、驚嘆したが、確認を続けるうちに、どうやら誤報というか、単純なガセネタということがわかり、僕自身はツイートすることはしなかった。その顛末を少しメモ代わりに書いておきたい。

その情報は、最初、僕はTさんのツイートで見た。当該アーティストの生年月日と6月3日の日付(死亡した日にちと思われるもの)が書かれ、RIPとあった。(現在は削除され、後に訂正ツイートがだされた)

ところが、そこには情報源が何も書いてなかったので、彼のフェースブックに行った。そうしたら、情報源らしきものがあった。それはConny Röhrigという人のタイムラインだ。そこに、ティナの大きな写真と誕生日と2012年6月3日と書いてあった。コニーさんはヨーロッパ人と思われた。しかし、それも、情報源がなかった。何を根拠にこんなことを書いたのか不明だった。

訃報記事の基本は、いつ・どこで・だれが・死んだか・なぜ(死因)・何歳か、といった要素だ。きちんとした記事だと大体これらの情報が短い中にも書かれている。しかし、一般の人が書く場合、まずこれらは網羅されない。今回もきちんとした訃報記事の体裁はなしていなかった。ただし速報性のある第一報の場合は、ここまできっちりしていない場合もある。

ただし、ティナ・ターナーは今、ヨーロッパのどこかに住んでるのかもしれない。スイスかドイツか。情報源の第一報がヨーロッパというのは、ありえる話ではある。

信頼性。

訃報の場合、ものすごく早い時期のものは、ネットなど見てもまだどこにも情報がでていないことは多々ある。そして、その最初の情報を流した人が、どういう素性の人かによって、情報の信頼性が違ってくる。もし、最初に情報を流した人が、例えばティナ・ターナーのマネージャーや親族だったら、それはかなり情報確度は高い。しかし、どこの馬の骨ともわからない場合は、危ない。

今回は、そのConny Rohrigという人がどういう人か調べようと思ったが、情報が公開されておらず、まったくどのような筋の人かわからなかった。ただ書き込みから普通のブラック・ミュージック、ソウル・ミュージック・ファンのように思えた。で、これはどうも怪しい、と考えた。ダブルチェックしなければ、と思い、その時点でのツイートなどは控えた。

それからあちこち、ネットのニュースを探してみても、ティナのニュースはでてこない。アメリカのツイッターでも何もでてこない。唯一最新のものででてきたのが、6月3日付けのニュースでティナが北京でジョルジオ・アルマーニのファッション・ショーに登場したニュースくらいだった。となると、2日か3日までは、元気に北京にいたことになる。

そうして小一時間くらいすると、このConnyという人がこれが情報源だといって次のサイトを、自身のタイムラインにアップした。(現在は削除されている)

ティナの予定稿。死去をアナウンスするものではありません。
http://en.necropedia.org/obituary/Tina_Turner

そこにはTina Turner Is Deadと書かれているのだが、なんとそこには、一番下に An anticipated obituary is, by definition, an obituary written BEFORE the death of a person. It is common for news agencies to keep pre-written obituary for public figures, famous and high-profile people who are still alive. It is by no means a death announcement. と書いてあった。つまり、このサイトは有名人などが死ぬ前の予想訃報記事であり、死去のアナウンスではない、とはっきり書いてあるのだ。

なんだ、これがガセネタの元か。あまりの程度の低さに脱力したほどだ。その後コニーという人は、訂正を出すでもなく、ただ当該のサイト、TLを削除しただけ。

いわゆるこのサイトは、訃報の予定稿のサイトだ。有名人などの訃報を事前に想定して、新聞社や通信社などがある程度評伝などを書いておくことは多々あるが、それをウェッブに出しているサイトだ。こんなサイトを出しておくこともひじょうに不謹慎だが、ここにはほかにもティナのほかにジャスティン・ビーヴァーやらアリシア・キーズらもその日付で亡くなったように書いてある。これは、本当に紛らわしくひどい。なんでこんなものをネット上に出しているのか、その真意がまったくわからない。

ジャスティンの予定稿。死去をアナウンスするものではありません。
http://en.necropedia.org/obituary/Justin_Bieber

これで、このティナ・ターナーの訃報は誤報というか、ネットに出す意味もない情報ということが確定したわけだ。

しかし、これが元ネタとなると、本当に困ったサイトだ。こういうものはネットにアップすべきでない。

精査。

その訃報が誤報だったとツイートするというのは、もちろん、噂を鎮めるために必要だ。しかし、それとて、訃報として誤認・誤読する人もいるかもしれないので、さらに扱いは慎重にならなければならない。

ツイート、リツイートは本当にお手軽なスイッチである。誰でも、何も考えずにできる。そして、その結果噂は瞬時に世界中に広まる。今回この誤報が確定した段階でも、リツイートなどでまだどんどん誤った情報は広まっている。

何度も書いているが、僕は訃報は原則必ずふたつ以上の情報源から確認する。ただ情報源が確実な場合は、その限りではないが、そのあたりの見極めは、たくさんの訃報を見てきた経験から判断するとしかいいようがない。僕も今後、どれだけ注意を払っても、ひょっとするとだまされて誤報を出すかもしれない。幸い、いままで一度もそうはなっていない。危ないなと勘が働いて、踏みとどまっているものもあった。

もちろん正しい情報であれば、誰でも早く出したい。しかし、僕は早く出すことよりも、正確であることが何よりも優先する。それは以前にもブログで書いた。これからも、ツイッターの世界ではこうした誤報は頻発するだろう。それは訃報の扱いに慣れていない人が情報を安易に発信できるからだ。しかも、その拡散ぶりは短時間で世界規模になる。それだけに、情報の精査がますます必要になってくる。

一般の人も、訃報に接した場合安易にリツイートせずに、元の情報源を確認するようなクセをつけることが求められると思う。そして、万一誤報を出してしまったら、それがわかった時点でできるだけすばやく訂正をだすことが大事だ。

そして、訃報を自身が発表する際には、いつ・どこで・だれが・なぜ(死因)・何歳か、そして、情報ソースもふくめてきちんとした情報を揃えて発信して欲しい。

インターネットやツイッターの世界は、誤報もゲームのひとつだという人もいるかもしれない。しかし、僕はそれにはまったく同意できない。

特に訃報に関しては、誰よりも慎重に扱いたいと思う。

しかし、昨日は夜中2-3時間振り回されたなあ・・・。(苦笑)

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