石原慎太郎はなぜカジノ構想を叫び、
そして口にしなくなったのか
[すこぶる怪しい五輪利権の全貌]

(日刊ゲンダイ2013/10/30)

「石原さんは、都知事に当選する前から
『カジノをやりたい』と言っていた。

政界とかではなく、
芸能関係者の入れ知恵だったようだ。


元来の新しもの好きに加え、税収増が期待でき、
塩漬けの臨海部の土地を有効活用できる。
一石三鳥で飛びついた」


当時の石原ブレーンの
ひとりはそう振り返る。

石原慎太郎が東京都知事に就任したのは99年4月。
この頃の東京都は財政難に陥っていた。

00年度予算で6200億円もの財源不足が分かっており、
都知事選では「どうやって財政再建団体転落を回避するのか」が
争点になったほどだ。

就任間もない石原にとって
喫緊の課題は財政再建。

そのため、すでに破綻が明らかな
臨海副都心開発の処理が、最大の懸案事項となった。

財政の足を引っ張る臨海開発の
“カンフル剤”にブチ上げたのが、

「お台場カジノ構想」で、石原は
機会あるたびに構想を熱心に口にした。

「金になるならなんでもやるよ。
カジノをお台場につくるのもいい。本気だよ」
(99年5月26日=毎日新聞の取材に)

「アメリカではカジノとは言わない。ゲーミングと言うんだ。
カジノだけだと問題があるけど、テーマパークと一緒にする」
(99年12月3日=定例会見)

「お台場にカジノをつくれば1万人の雇用を創出できる」
(01年5月7日=私的懇談会終了後)

石原は「都民の金でやるのはバカの骨頂。
ちゃんと案ができている」とも語ったが、

実際には側近の特別秘書やブレーンが
都職員と一緒に、ラスベガスやマカオ、
豪州のカジノの視察に繰り出し、
都民の税金を食い潰した。

石原が熱くなればなるほど、
便乗してひと儲けを考える企業が
さまざまな提案書を持ち込んだという。

ゼネコンや商社など100社以上が加盟する
「JAPIC」(社団法人日本プロジェクト産業協議会)が
都市型複合観光事業研究会を立ち上げ、
カジノ研究を始めたのもこの頃だ。

東京都はカジノの経済波及効果を、
最大2200億円と試算。

221億円の税収増が期待できるとハジいた。

ところが、02年に都庁展望室で
模擬カジノを開いたのをピークに、
構想は徐々にしぼんでいく。

03年6月に石原は
「現行法ではカジノは無理」と、
事実上の“構想断念”を宣言して以降、
周囲に一切、
カジノ構想を口にしなくなったという。

「公営ギャンブルの法改正を国に働きかけ、
国会に『カジノ議連』もできたが、
参加議員の多くがパチンコ業界のヒモ付きだった。

業界はカジノができると困るわけです。

パチンコ業界と癒着している警察は
抵抗勢力だったのです」
(元都庁幹部)

ところが、石原の構想断念後、
パチンコ業界は将来を見据え、
海外のカジノ運営企業に提携や出資を持ちかけていく。

一転、パチンコ業界がカジノ推進役になったのである。

さらに安倍が
旗振り役に回ったことで、
一気にアレルギーが消えていく。

五輪決定でゾンビのように
よみがえった「お台場カジノ」構想。

ただし、
利権の“バトン”は石原の手を離れ、
安倍政権や猪瀬都政、
そして推進役のフジテレビの手に移っている。