小沢元代表裁判「判決骨子」全文

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120426/t10014737421000.html
4月26日 14時54分 NHK

政治資金を巡って収支報告書にうその記載をしたとして強制的に起訴された、民主党の小沢元代表に、東京地方裁判所は無罪を言い渡しました。

「判決骨子」を掲載しました。


主文 被告人は無罪

公訴棄却の申立てに対する判断

〔公訴事実全部に係る公訴棄却の申立てについて〕

弁護人は、東京地検特捜部の検察官が、起訴相当議決を受けての再捜査において、石川を取り調べ、威迫と利益誘導によって、被告人の関与を認める旨の供述調書を作成した上、内容虚偽の捜査報告書を作成し、特捜部は、同供述調書と同捜査報告書を併せて検察審査会に送付し、このような偽計行為により、検察審査員をして、錯誤に陥らせ、本件起訴議決をさせたこと等を理由として、起訴議決が無効であり、公訴棄却事由がある旨主張している。

しかし、検察官が任意性に疑いのある供述調書や事実に反する内容の捜査報告書を作成し、送付したとしても、検察審査会における審査手続きに違法があるとはいえず、また、起訴議決が無効であるとする法的根拠にも欠ける。

また、検察審査員の錯誤等を審理、判断の対象とすることは、会議の秘密に照らして相当でなく、実行可能性にも疑問がある。

したがって、本件公訴提起の手続がその規定に違反して無効であると解することはできないから、検察官の意図等弁護人が主張している事実の存否について判断するまでもなく、公訴棄却の申立ては、理由がない。

〔公訴事実第1の1に係る公訴棄却の申立てについて〕

弁護人は、公訴事実第1の1の事実について、起訴相当議決がされておらず、検察官の不起訴処分もされていないのに、起訴議決の段階に至って、突然、起訴すべき事実として取り上げられていることを理由として、同事実に係る起訴議決には重大な瑕疵があり、公訴棄却事由がある旨主張している。

しかし、公訴事実第1の1の事実は、同第1の2及び3の事実と同一性を有するから、起訴相当議決や不起訴処分の対象にされていたと解することができる上、実質的にみても、捜査又は審査及び判断の対象にされていたと認められるから、起訴議決に瑕疵があるとはいえず、本件公訴提起がその規定に違反して無効であるということもできない。

公訴事実第1の1に係る公訴棄却の申立ては、理由がない。

争点に対する判断

〔収支報告書の記載内容〕

平成16年分の収支報告書には、本件4億円は記載されておらず、りそな4億円のみが記載されている。

本件土地の取得及び取得費の支出は、平成16年分の収支報告書には計上されず、平成17年分の収支報告書に計上されている。

〔本件預金担保貸付、りそな4億円の転貸の目的〕

石川が、本件4億円を本件売買の決済に充てず、本件預金担保貸付を受け、りそな4億円の転貸を受けた目的は、本件4億円が本件土地の取得原資として被告人の個人資産から陸山会に提供された事実が、収支報告書等の公表によって対外的に明らかとなることを避けるため、本件土地の取得原資は金融機関から調達したりそな4億円であるとの対外的な説明を可能とする外形作りをすることにあった(このような本件預金担保貸付の目的を「本件4億円の簿外処理」という)。

石川が、本件4億円の簿外処理を意図した主な動機は、本件土地の取得原資が被告人の個人資産から提供された事実が対外的に明らかになることで、マスメディア等から追求的な取材や批判的な報道を招く等して、被告人が政治的に不利益を被る可能性を避けるためであった。

〔本件合意書の目的〕

石川が、本件売買契約の内容を変更し、所有権移転登記について本登記を平成17年1月7日に遅らせる旨の本件合意書を作成した目的は、陸山会が本件土地を取得し、その購入代金等の取得費を支出したことを、平成16年分の収支報告書には計上せず、1年間遅らせた平成17年分の収支報告書に計上して公表するための口実を作ることにあった(このような本件合意書の目的を、「本件土地公表の先送り」という)。

石川が、本件土地公表の先送りを意図した主な動機は、本件土地の取得が収支報告書で公表され、マスメディア等から追求的な取材や批判的な報道を招く等して、被告人が政治的に不利益を被る可能性を避けるためであり、これに加え、本件4億円の簿外処理から生じる収支報告書上のつじつま合わせの時間を確保することも背景にあった。

〔本件土地の所有権移転時期及び収支報告書における計上時期〕

本件土地の所有権は、本件売買契約に従い、平成16年10月29日、陸山会に移転した。
石川は、本件土地公表の先送りを実現するために、本件土地の売主と交渉したが、不成功に終わり、本件土地の所有権の移転時期を遅らせるという石川らの意図は、実現しなかったというべきである。

本件合意書は、所有権移転登記について本登記の時期を平成17年1月7日に遅らせただけであり、本件売買契約を売買予約に変更するものとは認められない。

陸山会は、平成16年10月29日に本件土地を取得した旨を、平成16年分の収支報告書に計上すべきであり、この計上を欠く平成16年分の収支報告書の記載は、記載すべき事項の不記載に当たり、平成17年1月7日に取得した旨の平成17年分の収支報告書の記載は、虚偽の記入に当たる。

〔収支報告書における本件土地の取得費等の計上時期〕

平成16年10月5日および同月29日、本件土地の売買に関して陸山会から支出された合計3億5261万6788円は、本件土地の取得費として、平成16年分の収支報告書において、事務所費に区分される支出として、計上すべきである。

これを計上しない平成16年分の収支報告書の記載及びこれを平成17年の支出として計上した平成17年分の収支報告書の記載は、いずれも虚偽の記入に当たる。

〔本件4億円の収入計上の要否〕

被告人が、平成16年10月12日、本件4億円を石川に交付した際、被告人は、陸山会において、本件4億円を本件土地の購入資金等として、費消することを許容しており、石川も本件4億円を本件土地の購入資金等に充てるつもりであった。

本件4億円は、陸山会の一般財産に混入している上、資金の流れを実質的に評価しても、その相当部分は本件土地の取得費として費消されたと認められる。

また、本件定期預金は、被告人ではなく、陸山会に帰属するものと認められるから、本件4億円が、被告人に帰属する本件定期預金の原資とされたことを理由に、借入金にならない旨の弁護人の主張は、採用できない。

本件4億円は、本件土地の取得費等に費消されたものと認められ、りそな4億円は、陸山会の資金繰り等に費消されているから、このいずれも被告人からの借入金として計上する必要がある。

したがって、本件4億円は、陸山会の被告人からの借入金であり、収入として計上する必要があるから、本件4億円を収入として計上していない平成16年分の収支報告書の記載は、虚偽の記入に当たる。

〔被告人の故意・共謀〕

関係5団体における経理事務や日常的、定型的な取引の処理を含め、社会一般の組織関係や雇用関係であれば、部下や被用者が上司や雇用者に報告し、了承を受けて実行するはずの事柄であっても、石川ら秘書と被告人の間では、このような報告、了承がされないことがあり得る。

しかし、被告人の政治的立場や、金額の大きい経済的利害に関わるような事柄については、石川ら秘書は、自ら判断できるはずがなく、被告人に無断で決定し、実行することはできないはずであるから、このような事柄については、石川ら秘書は、被告人に報告し、了承の下で実行したのでなければ、不自然といえる。

本件土地公表の先送りや本件4億円の簿外処理について、石川ら秘書が、被告人に無断でこれを行うはずはなく、具体的な謀議を認定するに足りる直接証拠がなくても、被告人が、これらの方針について報告を受け、あるいは、詳細な説明を受けるまでもなく、当然のことと認識した上で、了承していたことは、状況証拠に照らして、認定することができる。

さらに、被告人は、平成16年分の収支報告書において、本件4億円が借入金として収入に計上されず、本件土地の取得及び取得費の支出が計上されないこと、平成17年分の収支報告書において、本件土地の取得及び取得費の支出が計上されることも、石川や池田から報告を受け、了承していたと認定することができる。

しかし、被告人は、本件合意書の内容や交渉経緯、本件売買契約の決済日を変更できず、そのまま決済されて、平成16年中に本件土地の所有権が陸山会に移転し、取得費の支出等もされたこと等を認識せず、本件土地の取得及び取得費の支出が平成17年に先送りされたと認識していた可能性があり、したがって、本件土地の取得及び取得費の支出を平成16年分の収支報告書に計上すべきであり、平成17年分の収支報告書には計上すべきでなかったことを認識していなかった可能性がある。

また、被告人は、本件4億円の代わりにりそな4億円が本件土地の購入資金に充てられて借入金になり、本件4億円を原資として設定された本件定期預金は、被告人のために費消されずに確保されると認識した可能性があり、かえって、本件4億円が、陸山会の一般財産に混入し、本件売買の決済等で費消されたことや、本件定期預金が実際には陸山会に帰属する資産であり、被告人のために確保されるとは限らず、いずれ解約されて陸山会の資金繰りに費消される可能性があること等の事情は認識せず、したがって、本件4億円を借入金として収支報告書に計上する必要性を認識しなかった可能性がある。

これらの認識は、被告人に対し、本件土地公表の先送りや本件4億円の簿外処理に関し、収支報告書における虚偽記入ないし記載すべき事項の不記載の共謀共同正犯として、故意責任を問うために必要な要件である。

このような被告人の故意について、十分な立証がされたと認められることはできず、合理的な疑いが残る。

本件控訴事実について被告人の故意及び石川ら実行行為者との共謀を認めることはできない。


    ◆     ◆


【小沢元代表無罪詳報(1)】
「被告人は無罪」 裁判長は主文を2度朗読 「よし」最強弁護団、拳握る
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120426/trl12042610520009-n1.htm
2012.4.26 10:48 産経新聞

 (10:00~10:15)

《資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載)罪で強制起訴された民主党元代表、小沢一郎被告(69)の判決公判が26日、東京地裁(大善文男裁判長)で開かれる》

《公判では、小沢被告の秘書だった石川知裕衆院議員(38)=1審有罪、控訴中=が任意聴取の様子をICレコーダーに「隠し録音」した内容が公開された》

《録音には、検事が調書の訂正を拒む様子が収められており、捜査報告書に虚偽の記載があることも判明した》

《このため、地裁は虚偽記載に関する小沢被告への「報告」と「了承」を認めた元秘書らの供述調書の大部分を却下した》

《最大の争点とされる元秘書ら3人と共謀の有無を裏付ける直接証拠が乏しい中、検察官役の指定弁護士は、小沢被告の説明の「不合理さ」を強調》

《さらに、小沢被告が署名した融資書類などの間接証拠などで、報告があったと認められると結論付けて「規範意識は著しく鈍磨しており、再犯の恐れは大きい」などとして禁錮3年を求刑した》

《これに対し、弁護側は元秘書らとの共謀の有無について、「間接証拠も、直接証拠もない」と主張。全面無罪を主張した》

《指定弁護士側と小沢被告の弁護側の意見が真っ向から対立する中、裁判所はどう判断するのか。有罪か、それとも無罪か。いよいよ判決公判が始まった》

《法廷は、この日も地裁最大規模の104号。裁判長を挟み、指定弁護士側と弁護士側は、左右に分かれて着席する》

《いつもは、指定弁護士側から入廷する小沢被告だが、この日は弁護士側の扉から姿を現した。小沢被告は入廷する際に一礼、さらに大善裁判長の前でも深々と頭を下げ、弁護側の席に着いた》

 裁判長「それでは開廷します」

 「ただいまから判決の宣告を行います」

《大善裁判長の表情もやや固いように見える》

 裁判長「被告人前へ」

《小沢被告は、法廷に響く声で「はい」と返事をして、ゆっくりと証言台に向かった》

 裁判長「それでは被告人に対する政治資金規正法の罪について、当裁判所の判断を示します」

 「主文、被告人は無罪」

《法廷がざわつく。小沢被告は軽く一礼した》

 裁判長「もう一度、いいます」

 「主文、被告人は無罪。分かりましたね」

 被告「はい」

《今度は、さらに大きな声で返事をし、深々と頭を下げた》

《一方、最強弁護団を率いる弘中惇一郎弁護士は思わず、「よし」と一声漏らした》

《指定弁護士の1人は、苦い表情を見せ、じっと目を閉じて天を仰いだ》

《ここで小沢被告は、弁護士側の席に戻り、いつものようにじっと目を閉じて大善裁判長の無罪の理由の朗読に聞き入る》

《裁判所は、まず小沢被告と元秘書の共謀を立証する最も重要な証拠となる石川被告の供述調書に虚偽があったことを挙げ、強制起訴に踏み切った検察審査会の判断材料に重大な瑕疵(かし)があったと指摘した》

裁判長「重要な人物に対し、任意性の疑いがある捜査があった。あってはならないことだ」

《大善裁判長は、次々と問題点を指摘する。ただ、検察審査会に付された判断材料に重大な瑕疵があったからとして、起訴相当とした議決自体が単純に問題となるのではないとする考えを具体的に示す》

《小沢被告は、表情を崩すことなく、じっと耳を傾けている》


       ◇

【小沢元代表無罪詳報(2)】
4億円担保に4億円融資「巨額の資金移動のうわさ恐れた」
2012.4.26 12:16

 (10:15~10:45)

《資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる虚偽記載事件で、無罪となった民主党元代表、小沢一郎被告(69)。東京地裁104号法廷では、大善文男裁判長が読み上げる判決理由を落ち着いた表情で聞き入っている》

《濃紺のスーツ、紫のネクタイ姿の小沢被告は目を閉じている。大善裁判長は争点の1つだった強制起訴の適法性に問題はないとの判断を示す》

裁判長「(弁護側の主張する)公訴棄却の申し立ては採用できない」

《続いて、大善裁判長は政治資金収支報告書の記載内容についての判断を読み上げる》

《小沢元代表が法廷で問われたのは、「平成16年に提供した4億円の収支報告書への不記載」「提供された4億円を原資として、16年に行った土地代支出を、17年分の収支報告書にずらした」の2点だ》

裁判長「16年分の収支報告書において、備考欄に10月29日と記載されており、りそな銀行から融資を受けた日付と一致している」

「16年分の4億円の借り入れは、17年分(の収支報告書)には2億円と記載され、18年分には記載がない。返済経過とも合致しており、りそな銀行の4億円が2億円ずつ返済されたことが記載されたと解するのが自然だ」

《石川議員は自らの裁判では「小沢元代表の4億円」としていたにもかかわらず、今回の公判では小沢元代表の4億円と、りそな銀行から借りた4億円は「ひとつ」であり、「どちらを記載したかというのは困難」と証言を変遷させている》

裁判長「石川議員の供述は信用性に乏しい」

「以上によれば、平成16年の収支報告書には(小沢被告が提供した)本件4億円は記載されておらず、りそな銀行の4億円のみが記載されていると認められる」

《さらに、大善裁判長は土地取得と取得費用の支出について、16年の収支報告書には計上せず、17年に計上したことを認めた。続いて、小沢元代表からの4億円やりそな銀行からの4億円など複雑な取引が行われた目的について、判断を説明した》

《石川議員は16年10月12日に小沢元代表から提供された4億円の大半を同28日までに陸山会の口座に分散して入金した理由について、公判で「多額の現金を銀行の窓口に持参して入金すると、銀行員やマスコミ関係者から見られ、関心を集めてしまう」と説明していた》

裁判長「4億円の巨額で物理的にかさばり、重量もある。持ち込めばかなり目立つことが想像できる」

「石川議員の供述は、巨額の資金を動かしているとうわさが流れ、マスコミに追及的な取材や批判的な報道の対象となる可能性を懸念したと理解できる」

《小沢元代表からの4億円を土地売買に充てず、りそな銀行から借り入れた理由について、大善裁判長は「一般論として、一定額の資産を確保しつつ、当面の資金繰りのために貸し付けを受ける手法には、一応の合理性がある」と理解を示した》

裁判長「りそな銀行からの借り入れについて、石川議員は『先輩秘書から示唆をうけて計画を変更した』理由を『迷惑をはばかって名前を出せなかった』と供述しており、一応納得できる」

《一方で、大善裁判長は「不動産取得に銀行からの借り入れを利用する慣行は大きな経済的負担を伴う」と指摘、「石川議員により強い目的や意図があったと考えなければならない」とした》

《小沢元代表は目を閉じたまま、背筋を伸ばして聞き入っている。弘中惇一郎弁護士は大善裁判長を向いて、時折うなずいている》


       ◇

【小沢元代表無罪詳報(3)】
「虚偽の記入に当たる」 裁判所の判断に首かしげる弁護側 小沢元代表は動じず
2012.4.26 13:24

 (10:45~11:15)

《資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載)罪で強制起訴された民主党元代表、小沢一郎被告(69)の判決公判は、無罪判決が言い渡された》

《政治資金規正法違反をめぐり、元秘書の石川知裕衆院議員(38)=1審有罪、控訴=が、陸山会が平成16年10月に取得したとされる土地の購入代金について、同年の収支報告書に計上せず、1年遅らせた17年分の収支報告書へ計上した件をめぐり、大善裁判長による説明が続く》

《公判では、出廷した石川議員が、民主党代表選を想定し、マスコミからの追及や批判をかわすために計上を先送りさせたとした》

裁判長「民主党代表選はともかく、土地公表の先送りは、石川(議員)が供述する通り、マスメディアの追及的な取材、批判的な報道の対象とされるなどして被告人が政治的に不利益をこうむる可能性を避けるためであったと認められる」

《判決理由を読み上げていく大善裁判長。小沢元代表はうっすらと目を開け正面を見据えている。その右側に座る弘中惇一郎弁護士は目を閉じ、テーブルに両肘をついて口元で手のひらを組んで聞き入る》

《一方、指定弁護士はぐっとまぶたを閉じたまま手を口元に当て耳を澄ましている》

《続いて、大善裁判長の説明は4億円をめぐる収支報告書への虚偽記載の問題に移る》

《平成16年分の政治資金収支報告には、小沢元代表が土地購入のため、手渡したとされる4億円が記載されなかった。指定弁護士は虚偽記載に当たると主張した》

《一方、弁護側は利息や返済時期の取り決めがなかったことを理由に「秘書に資金を預けたに過ぎず、陸山会との間の消費賃貸契約を成立させるものではない」とし、借入金に当たらないと訴えた》

《大善裁判長は、これまでの公判で明らかになった4億円の流れを振り返る》

《4億円の流れが陸山会の一般財産に混入しているとみられることや、資金としての使い方などからみると、相当な部分が陸山会における本件土地の購入代金や取得費用として使用されたと認めることができると指摘する》

裁判長「期限や利息の定め、契約書の作成がなくても、本件4億円を借入金として認定することに問題はない」

《小沢元代表は表情を動かさず、正面を見ている。弘中弁護士はメモを取りながら、しきりに首をかしげる》

《大善裁判長は説明し終えると、「陸山会の被告人からの借入金収入として認定すべきであったものと認められる」と指摘した上で、収支報告書の虚偽記載について次のように結論づけた》

裁判長「本件4億円が計上されず、りそな4億円のみが計上され記載されたことは、虚偽の記入に当たるといわなければならない」

《小沢元代表は表情を動かさず、正面を見つめる》


       ◇

【小沢元代表無罪詳報(4)】
無罪判断も「秘書の裁量超えている」「容易に認識」 裁判長、厳しい指摘
2012.4.26 14:00

 (11:15~11:45)

《資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載)罪で強制起訴された民主党元代表、小沢一郎被告(69)の判決公判は、無罪判決が言い渡された。検察審査会による強制起訴自体は無効ではないとしながらも、無罪の判断を示した大善文男裁判長。詳細な理由を述べていく》

《公判では政治資金規正法の虚偽記載について、元秘書と小沢元代表の間に報告や了承があったのかが争点となったが、大善裁判長は、秘書と小沢元代表の関係性から論じていく》

《公判で、小沢被告らは「秘書は書生として3、4年間、身の回りの世話をしてもらって、全面的に信頼できる人間関係を形成した上で秘書として採用している」と主張。さらに「私自身は天下国家にかかわる政治活動に専念しており、政治団体における経理処理や運営に関する事項は、すべて秘書に任せていた」と述べた》

裁判長「確かに、被告人は公職や政党の役職を歴任する国会議員として、多忙であったことは容易に想像できる」

「(政治)5団体における経理処理や日常的な取引について、報告を求め、把握していたとは考えにくいところがある」

「(政治資金)収支報告書の提出に先立ち、被告人自らが内容を詳細に点検するといったことも考えにくい」

《検察官役の指定弁護士は険しい表情をみせる。小沢被告は、無表情のままじっと目を閉じている》

《裁判長は、小沢被告の個人口座も秘書らが管理するなど、社会一般の組織関係や雇用関係とはかけ離れたある種、特殊な人間関係があったと指摘し、報告や了承が日常的にないことはあり得るとした》

《しかし、小沢元代表の政治的立場や金額の大きい経済利害にかかわる事項については、厳しい見方を示す》

裁判長「自ら判断できるはずがなく、無断で実行することはできないはず」

「被告人の政治的立場や金額の大きい経済的利害にかかわるような重要な事項については、(元秘書の)石川(知裕衆院議員(38)=1審有罪、控訴中=)や池田(光智元秘書=同=)ら秘書は、被告人に報告し、その了承の下で実行しなければ不自然といえる」

《こう指摘した後、問題の土地の購入に際し、秘書らは、小沢元代表から4億円を受け取りながら、それを担保にりそな銀行から4億円の融資を受けていた点についても触れる》

《融資に際し、申込書と約束手形には、小沢元代表自らが署名している。ただ公判で小沢元代表は石川議員から「サインをくれ」といわれ、署名しただけだと主張。意図などは知らなかったとした》

裁判長「4億円もの巨額の貸し付けを受けて債務者となる経済的負担を求めるのであるから、取引の概要程度は、被告人に理解してもらうことは当然」

「秘書の裁量であるとして何の説明もせず、署名をもらうことなどはあり得ないことだ」

《その上で、大善裁判長は、融資は、小沢元代表から得た4億円を隠すための簿外処理が目的だったと推察。この点の小沢被告の認識について言及する》

裁判長「簿外処理方針を認識していた直接証拠はない」

「しかし、りそな4億円を陸山会に転貸させるという巨額の経済的負担を求める取引である上、年に464万円もの金利負担も発生するのであるから、被告人が秘書に任せた裁量の範囲を超えているのは明らか」

《こう前置きした上で大善裁判長は続ける》

「(簿外処理は)被告人においても、時間をかけて詳細な説明をされるまでもなく、当然のこととして容易に認識し、了解したものと考えることができる」

《無罪を言い渡しながらも、簿外処理は容易に認識していたと推察された小沢元代表。弁護側は時折厳しい表情も浮かべるが、本人は顔色を変えない》


       ◇

【小沢元代表無罪詳報(5)】
石川議員報告せずの可能性「故意や共謀肯定できない」
2012.4.26 14:27

 (11:45~12:15)

《資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる虚偽記載事件で、無罪となった民主党元代表の小沢一郎被告(69)。東京地裁104号法廷では、大善文男裁判長が判決理由の読み上げを続けている》

《大善裁判長は小沢元代表の秘書だった石川知裕衆院議員(38)=1審有罪、控訴中=が小沢元代表から提供された4億円を平成16年の政治資金収支報告書に記載せず、簿外処理している。小沢元代表の認識についての判断に言及した》

裁判長「りそな銀行から借りた4億円は被告の借入金となること、石川(議員)に渡した4億円が銀行から受けた貸し付けの担保として、定期預金の原資にすることを認識し、了承した上で、融資書類に署名したと認められる」

「(銀行から受けた)貸し付けの目的が石川(議員)に渡した4億円を対外的に収支報告書で公表しない簿外処理にあることも承知していたと認められる」

《大善裁判長は石川議員が簿外処理することを、小沢元代表は4億円を渡した16年10月ごろに了承していたと指摘し、土地取得や取得費について17年の収支報告書で計上することを、18年3月ごろに報告を受けて認識、了承したとした》

裁判長「簿外処理や土地取得は小沢被告の政治活動上の影響をおもんぱかってなされた。秘書らは小沢元代表の意向に反する事務処理をすることはできない」

「小沢被告は秘書らの行為を止めることができる立場にあり、小沢被告の了承を受けた上で16年、17年の収支報告書の虚偽記入、不記載に及んでいると認められる」

《大善裁判長はこれらの事情から、指定弁護士側が共謀共同正犯が成立するとした主張にも、「相応の根拠があると考えられなくない」と一定の理解を示した》

裁判長「しかしながら、裁判所は被告に土地取得や費用支出時期の認識や(小沢元代表が渡した)4億円の(収支報告書への)収入計上の必要性の認識を認めることができない。故意や共謀を肯定することができない」

《大善裁判長は小沢元代表の認識を認定できない理由の読み上げを進めた。土地購入をめぐって不動産会社との交渉経緯などについて石川議員は「小沢元代表に報告していない」と公判で説明している》

裁判長「石川(議員)が被告に説明した直接証拠はない」

「自ら当初了承したとおり、秘書寮建設の方針が変更されない限り、契約の履行過程には関心がないということはあり得る」

「土地公表の先送り方針は認識、了承を経たと認められるが、17年の収支報告書への先送りが実現するのであれば、不動産会社との交渉などには関心がないこともある」

《ただ、石川議員の公表先送り交渉は不十分な結果に終わった。大善裁判長は「土地取得を16年の収支報告書に計上しないことが違法との評価を受け、捜査機関に摘発される危険にもつながるなど被告に取って深刻な政治的影響が生じる可能性がある」と指摘した》

裁判長「石川(議員)は被告の了解を得なければ進められないはずと疑うことも考えられなくない」

「しかし、交渉の失敗は石川(議員)にとっては失態で、不興を恐れ報告しなかったと考える余地もある」

「石川(議員)は、この程度では摘発されることはないだろうと甘く考えて深刻に受け止めなかった可能性がある。摘発の危険性を強く認識していれば、叱責を覚悟してでも、被告人に相談するなどしたと考える余地もある」

《以上の点から、大善裁判長は「所有権移転を17年に送らせられなかったことについては石川(議員)から報告を受けず、認識していなかった可能性がある」と指摘した》

《指定弁護士側は腕組みして、厳しい表情を崩さない。小沢元代表は口を真一文字にしたまま聞き入っている》


       ◇

【小沢元代表無罪詳報(6)完】
虚偽記載認めるも「故意や共謀の証明十分ではない」 元代表は深々と一礼
2012.4.26 15:06

 (12:15~12:25)

《資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる虚偽記載事件で、無罪となった民主党元代表、小沢一郎被告(69)。東京地裁104号法廷では、大善文男裁判長による判決文の読み上げも、いよいよ大詰めを迎える》

《収支報告書への虚偽記載をめぐる小沢元代表の認識について、裁判所の判断が示されていく。大善裁判長は、小沢元代表が陸山会の土地取得などについて、「報告を受けず、認識していなかった可能性がある」などの理由を挙げ、こう結論づけた》

裁判長「平成16年分の収支報告書に計上する必要があり、17年分の収支報告書には計上すべきでないことを、認識していなかった可能性がある」

《判決理由では、小沢元代表の法廷での供述についても触れられる。「収支報告書は一度も見ていない」。小沢元代表は一貫して主張し続けた》

裁判長「被告人が、秘書から収支報告書の作成提出に際して報告を受けたことは一切ない旨の供述については、一般的に信用性が乏しいといわなければならない」

《小沢元代表は正面を向き、じっと耳を傾けている。腕を組み目を閉じていた指定弁護士が目を開き、被告席に視線を向ける。大善裁判長は続けた》

裁判長「被告人が、収支報告書の作成や提出を担当の秘書に任せきりにし、全く把握していないことや、収支報告書の記載に責任を負うべき会計責任者の役割などについても理解を欠いていることをうかがわせる供述をしていることも、政治資金規正法の精神に照らして、芳しいことではない」

《裁判所からの苦言。しかし、小沢元代表はいささかも表情を変えず、正面を向いている》

裁判長「しかしながら、具体的な記憶が薄れ、実際に確かな記憶がないこともあり得るといえる」

《取得した土地の公表の先送り、4億円の簿外処理、政治資金収支報告書の虚偽記載…》

裁判長「指定弁護士が虚偽記入ないし、記載すべき事項の不記載について、共謀共同正犯が成立するとする主張には、相応の根拠がある」

《それでも、無罪を言い渡した》

裁判長「(4億円の簿外処理や取得した土地の公表の先送りなどについて)認識していなかった可能性がある」

「これらの認識は、共謀共同正犯としての故意責任を問う上で必要なものであるから、被告人に対し、法的に刑事責任を問うことはできないといわなければならない」

「本件公訴事実のうち、被告人の故意及び、実行犯(元秘書ら)との間に共謀については証明が十分ではなく、犯罪の証明がないことに帰着するから無罪の言い渡しをする」

《約2時間半に及んだ判決文の朗読が終わった》

裁判長「以上の理由から、当裁判所は無罪としました」

《被告席に座る小沢元代表に向かい、大善裁判長がゆっくりと語りかける》

裁判長「判決の内容は分かりましたか」

 被告「はい」

《大きくはっきりとした声が法廷に響く。しかし、壇上の大善裁判長を見上げる表情は、硬いままだ。無罪を勝ち取った晴れやかさは感じられない》

《大善裁判長が閉廷を促すと、小沢元代表はその場で立ち上がり、深く一礼した。その後、傍聴人らが法廷を出る様子を立ったままじっと眺め、傍聴人らの退廷後、自身も法廷を後にした》


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加筆4/30 陸山会事件 4.26 判決要旨
小沢裁判判決要旨(95ページ)

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