「コンビニ寄って帰るけど、何か要る?」
「いらない」
……なんか機嫌悪い?家から出てないのに、なんかあったかな。

この店だよな、確か、食べたいと言ってたの。
高っけぇな!ホールは無理だ、ショートでいいか。
「なんでこんな給料日前に、断りもなしにケーキ買ってくんの!?」

妻は1ヶ月前に長男を産んだ。
実家のお母さんが来てくれているから身の回りの心配はないが、何でも自分でやろうとして怒鳴られている5歳の長女が心配で急いで帰る。

退院して激変した家の中。
妻の希望どおりの男の子、よく飲み、よく寝る大きな赤ん坊だ。
出産こそ大変だったのは目の前で見たが、二人目だし、妻の喜びようもあって育児は安心して任せていた。
なのに、何が気にくわないのか、妻の悪態は日に日にひどくなった。

「産後ブルーって言うんだって」
そんな言葉を、8年ぶりに三人目の子を身ごもった妻が大きなお腹で初めて言った。
なんでも、産後の体内では、死ぬ直前と同じくらいの劇的なホルモン変化が起きるんだと。どんな人も太刀打ちできないそうだ。意味もなく気分が落ち込んだり、イライラしてわめいたり、鬱々となるのだ、という。
どうりで……8年前のあのアパートで、赤ん坊の息子を抱いている妻の形相と泣いている小さな長女を思い出す。

「俺はどうしたらいい?」
「育児はあたしできるから、お願い、あたしのケアをして」
ずいぶんと都合がいい話だな、とちょっと可笑しかったが、三人目の貫禄だ、よく自分のことをわかっているな。年の功か、上の子に、姉、兄の心得を笑って言い聞かせている。
最後の赤ん坊だしできることは何でもしてやろう。

次女がやってきた。
断言していた通り、手慣れた育児と覚悟の産後ブルー。
攻撃は最大の防御だと、バランスボールが我が家に届いたり、オイルで赤ん坊を撫でまわす先生がやってきたり、2色のガラスボトルを選んで赤い服着たり、オレンジのタオルで赤ん坊をなだめたり。
事細かなアイスクリームの指定のメールや、フラメンコの本の発売日だ、買ってきてくれと。安い女だなぁ。

ブルーで泣いても自分をしっかり分析して、こうして欲しい、ああして欲しいと明確に助けを請う。文字通りお安い御用だ。

今回のブルーは妻が自分で受け止めて、宝物をさずかった副作用だからと上手に付き合いつつ、藍色に濃くなったり、ターコイズになったり、彩り良くやっている。

オーラソーマ イクイリブリアムボトルB96 大天使ラファエル

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◆ゲストライター:美月
美月
夢は、お嫁さん。
小さな頃からの夢を叶えるべく出逢って半年で電撃結婚。それから15年経つ現在、鎹(かすがい)をきっちり打つ、3人の子の母である。
笑顔で職場を渡り歩くハケンの品格オンナにヴァージョンアップもする。
趣味はいつまでもオンナで在り続けるためのいろんなこと。筋トレ、セラピー、お酒、こどもと笑うなど。
家庭内片思い継続中につき、フラメンコを踊り「Te quiero」と叫ぶ。