Brush-UP[ブラッシュ-アップ]名詞
[1]磨き;身づくろい
[2](忘れかけた学問などの)磨き直し;再勉強

30を過ぎ、踊りに興じた妻を、はじめはあきれた眼差しで見ていた。
帰りは遅くなり、汗をかいて帰宅して有無も言わずに高いびきで寝てしまう姿。そんなに踊ることが好きか、と横目に見る。

日に日に贅肉が意思を持ち、姿勢正しく台所に立ち、鼻歌まじりで子供と手をつなぎ歩く、手を叩きながら幸せそうにあちこちを掃除する変貌振りに、もしかすると妻は恋でもしているのではないだろうか、と疑心暗鬼にもなるほど。

自分を磨くことを踊りを通して見つけたので、目標とする女性像、仕事、金銭感覚、美容法、全てがその踊りとやら中心に回り、髪は真っ黒に、化粧は素肌に近く、歩くのが早くなり、どこででも尻を引き上げる。よくわからないが安くはない値段の薔薇の絵柄や水玉の生地をうれしそうに選ぶ。

高い洋服やかかとの高い靴、たばこ3カートン買える値段のアイカラー、働く女のアイテムが目に見えてだんだん減っていくが、なんだか妻は以前より若くはつらつとしているような気がする。

着飾ることを止め、自身の血肉を、生き方を変えた妻は、グラスから水があふれんばかりにと笑い、泣き、歌い叫ぶ。

こともあろうか、子を授かって安静を言い渡されたことに、地団駄を踏みながらも「産んだらまた踊る」と、静かに子を育み、あっという間に体形、体力を戻し誇らしげに子を連れ踊りに戻った。

見つけたものは、習い事のひとつだったかもしれない。
けれど、その習い事、という踊りを認めざるを得ないほど、妻は美しく笑顔を家族に向けることができるようになった。

そう考えると、安上がりだが、すごいBrush-UPだと思う。


------------------------------------------------
◆ゲストライター:美月

美月

夢は、お嫁さん。
小さな頃からの夢を叶えるべく出逢って半年で電撃結婚。それから15年経つ現在、鎹(かすがい)をきっちり打つ、3人の子の母である。
笑顔で職場を渡り歩くハケンの品格オンナにヴァージョンアップもする。
趣味はいつまでもオンナで在り続けるためのいろんなこと。筋トレ、セラピー、お酒、こどもと笑うなど。
家庭内片思い継続中につき、フラメンコを踊り「Te quiero」と叫ぶ。