関満博著『日本の中小企業 少子高齢化時代の起業・経営・承継』中公新書
「これは問題だ!」と探し回れば山程も問題点が「発見」されるし、
「日々平安」と決め込めば、気楽に好き勝手に生きられるもので、
何を目指してどのような努力を傾注していくかは経営者の世界観による。
以前、倒産法の勉強に取り組んだことがあって、
倒産事例のケース・スタディを扱った書籍が多く刊行された時期があった。
何が原因でどのような経過を辿って倒産に至ったかを把握すれば、
予め倒産リスクを防止できる態勢を構えることができるから、
その方が実践的である。
もっとも、調査会社がまとめた倒産レポートがどこまで事の真相に肉薄できているかは別問題なのだが。
昔は、倒産のその日を迎えるまで、
ギリギリの努力をして駆けずり回ることが経営者としての務めとみなされた時代もあったのだが、
現在では、傷が余り深くならないうちに見切りを付けて業務を整理することが当然とされ、
従って、倒産とカウントされない廃業が増える。
倒産の淵に追い込まれながら、一発大逆転で業容を一挙に組み立て直せるという機会もほとんど無い時代だから、
見切り時を読み間違えることもほとんど無くなっている時代なのである。
「銀行取引が倒産の最大リスクである」と語られた時代すらあったわけだから、
世の中は教科書通りには動いてはいない。