佐々木閑著『集中講義 大乗仏教』別冊NHK 100分de名著 NHK出版刊
放送テキストの独立刊行本ではあるのだが、
一般視聴者向けの、簡単なさわりを集めただけの入門書かと思うととんでもない、
大乗仏教というものを、
ブッダの創唱した仏説から始まった仏教思想を、
大乗仏教というものが生じてきた「必然性」というものを考えながら、
大乗仏教に含まれるさまざまな思想を「経説」に従って説明していくという、
なかなかに内容豊かで、仏教全体を見渡すには至って至便な小著になっている。
一挙に読了してしまったわけだが、
昨今では、「ブッダに還れ!」とばかりに、日本の大乗仏教を否定する動きがあるのだが、
2000年以上にも及ぶ仏教の歴史を観念的に忌避してみても何も生み出さないから、
「今、目の前にあるものとして、その全体像を認容する」姿勢が大切だと思うから、
現代仏教の有り様を改めて理解する必要があるだろう。
改めて言うならば、
「大乗非仏説」は、この日本の江戸時代において、富永仲基が主張した「卓見」なのだったが、
では、何故に大乗仏教が創説され、広く受容されたのか、
まさか、詐話師がでっち上げた妄論が継承されてきたというわけではないだろう。
日本の現代仏教というものが、
ある意味、歴史的な転換点に直面せざるを得ない情況を考える時、
改めて「歴史を振り返る」ことが求められているということなのである。
(もっとも、「誰が求めているんだろう」)