「銭の戦争」:1/20
韓流ドラマを下敷きにしたものらしいのだが、
零細企業のボンボンが東大を出て超一流企業に就職し、大活躍していたところ、
親父さんが莫大な借金を抱えて倒産・自殺し、
本人は借金を引き継いだままホームレスにまで身を持ち崩し、
街金の片割れとして再起を図る、という、
まぁ、よくありそうなパターンである。
よくありそうなだけに、分かりやすい。
今回のあるシーンで、
自分がさんざん世話になった高校の国語の教師の借金の取り立てで、
金利だけでも支払えと要求しているのだが、もちろん、そんな現金など用意されていない。
そこで、主人公は、古書屋を呼んで、
この先生の蔵書の内、ある程度値が付きそうなものを売り払って、
支払いをさせようとする。
蔵書の「価値」が分かるという主人公は、
東大在学中は苦学生で、
古本屋とはなじみの読書生活を過ごしてきたであろうことが分かる。
「蔵書」というのは、まさかの時の「保険」になる。
こういったドラマは、今まで寡聞にして知らなかった。
スカスカになった本棚を、いかにも情けなく寂寥感を漂わせる高校教師(大杉漣さん)の表情に、
それだけで感情移入してしまったのだった。
古書の「価値」というのは、
その時代の流行や需給関係や、いろいろな要因で決まるのだが、
昨今の出版事情では、古書の価値も大きく損なわれる。
古書店の価格カタログ等で、
「この全集なり著作集が、こんな値段で売られて良いのか?」と、
ぞっとしてしまうことが多い。
そこで、昨今の出版事情である。
出版不況の原因や理由については既に語り尽くされていて、
何をどうすべきかが鮮明にされてきている。
しかしながら、利害得失が複雑に入り込んでしまっているから、
誰が、どのように、旗を振って実行していくか、全く身動きができないままのようである。
「本好き」な「読書人」は、
つまり、スーツ一着を買う金があったら、その金で本を買う、
飲みに行く金があったら、その金で本を買う、
人付き合いをする時間があったら、その時間で本を読む、
本に埋もれて死ねるなら・・・と、秘やかな願望を抱く・・・、
そういうスタイルで生きている者が「変人・奇人」扱いされる時代である。
こんな生き辛い時代に、本が売れるわけがないと、私なんかは思ってしまうのだが。