島薗進他・編『シリーズ日本人と宗教 近世から近代へ 1:将軍と天皇』春秋社刊
明治維新後の宗教関係は、「政教関係史」として、
例えば、國學院大學日本文化研究所の諸先生方が精力的に研究・公刊された分野なのだが、
そこでは、近代神道史の一環として、国家神道への展開史が解明されようとしていた。
それに対して、仏教の側での近代史といえば、
近代真宗史という意味での宗派史研究は熱心ではあるのだが、
言ってみれば、近代仏教史というのは、丸ごと「国家によっていいようにされた歴史」という、
「スネにキズを負っている」せいかどうなのか、
あまり熱心な研究がなされてきたとは言い難い。
私なんかは、
「宗教団体法の成立プロセス、及び、宗教団体法から宗教法人法への転換」という、
制度史的な視角からのまとめが不可欠だと思うのだが、
そんな態度では信心が足りないと難癖が付けられそうであるから、
普段は黙っている。
宗教というのは、
国家総体を構成する諸制度の一貫としての制度の一つなのであって、
従って、国家の中で特有な、独自な役割を果たすべき位置取りがされたものである。
政教分離といった憲法上の原理はそもそもが有り得ないことなのである。
信教の自由といったことは、宗教制度が国法の下に統制されるものであるから、
アジールをもたらすものでないことは自明なことである。
・・・といったことを決め込んでしまうと、
宗教というものが見えなくなってしまうから、
困難極まるテーマとなることは論を待たない。
とはいえ、このような叢書が成立するくらいに、
研究者の層が拡大し、その蓄積が豊富化されてきていることを、
素直に喜びたいと思うのである。