事件屋稼業
谷口ジロー・画/関川夏央・原作『事件屋稼業』 双葉社刊 全6巻。
1996年第一刷発行とあるが、
1979年12月から1980年4月まで、「漫画ギャング」誌に連載されたのが初出。
70年代の臭気を漂わせるハードボイルド作品。
現在では、こういったハードボイルド作品に出会うことはなくなったし、
そういう作家もいなくなったようで、
かろうじて、狩麻無礼氏が無頼者を描いた作品世界があるくらいではある。
ハードボイルドというのは、アメリカで市民権を得たキャラクタで、
文字通りの「固茹で卵」を意味するのだが、
それが日本の推理小説・サスペンス小説に移された時には、
ハードボイルド=痩せ我慢、という図柄になったりして、
生島治郎さんや笹沢佐保さんの作風にもなったりした。
御本家の、ミッキー・スピレーンを読まないことには何も始まらないのだが。
こういうキャラクタは、
今みたいに、「分かって欲しい」の、「癒されたいの」というぐだぐだしい時代にはそぐわないせいか、
一部の好事家を除いて、世評に上がることもなくなった。
そんなときに、30数年の時を経て、
フジテレビが2時間ドラマとして取り上げた(5/17)のだが、
一見ドジでだらしない男が、実は有能な私立探偵で、警視庁にも人脈を持ち・・・といった設定で、
道具立てはよく考えた風に見えながら、
「良いお父さん」「良きおじさん」にしてしまうと、
換骨奪胎もここに極まれりと、呆れ果ててしまったわけで、
ハードボイルドを表現できるプロデューサーもディレクタも、脚本家も、
人材が全く払底してしまっている局内事情がよく分かった。
大体が、
寺尾聡、佐藤江梨子とくれば、出色のハードボイルド作品が出来るだろうし、
ミッキー・カーチス、佐野史郎、竹中直人といった面々がそこに絡めば、
ドラマの奥行きというものが超常な意欲作が出来上がるだろう。
もったいないことをしてしまう。
タイトルに惹かれて期待した私がバカだった!