トリック:(「美少女というのは尋常な存在ではない」という文化)
昨夜のテレビ朝日系列で放映された「トリック」。(「K」の鏡文字は表示できませんので、悪しからず。)
このドラマの面白さは、徹底した「ギャグ」と「言葉遊び」の速射砲にあるのだが、
横溝正史流の、おどろおどろしい、民俗的伝承の世界を描いているように見えながら、
実は、それを笑い飛ばしているようなものだから、
山上たつひこさんの「こまわりくん」なんかのギャグ・マンガと通底しているわけで、
私らから見れば、70年代文化状況を忠実に再現しているようなものなのだ。
陰陽師が掲げる「杓」に、「因奇智」と目立つように筆書きしてあったのだが、
「因奇智」→奇妙な(超常的な)知恵に因る→インキチ→インチキ
というような具合で、
脚本に拠るのか、演出のわざか、小道具の遊び心か。
こういうのは、暴走族の「千社札(せんじゃふだ)なんかに、
「夜露死苦」→よろしく→死の苦しみは夜に露われる、
みたいな読み方になるみたいだが、
こういう言語感覚が、かつて、一つの文化集団化していたというところに、
このドラマでは依拠しているわけだ。
さて、主役の仲間由紀恵さん。
若手の奇術師で、しかしながら、腕の方はさっぱりで、
家賃も払えないほどの貧乏暮らしで、
にもかかわらず、変な突っ張りだけはしてみせるのだが。
アイドル的なキャラクタ設定とは対極的なものなのだが、
それが実に「生きている」んだね。
それは、一にも二にも、美少女であるから、超現実的な説話世界とマッチして、
キャラクタ設定が生きて来るわけで、
どんなにドラマ設定がどろどろしたものであったにしても、すっかり浄化されてしまう。
しっかり2時間余を見てしまいました。
追記すると、野際陽子さん。
この人が演じると、「こんな人はおらんだろう」という違和感もなしに、
ストーリィの中に融和してしまうわけで、
「八百比丘尼」じゃぁないのか?と、何を見ても思えてしまう。