【読書感想文】マンガで食えない人の壁-プロがプロたる所以編- テーマ置換可能な内容でした。 | 若者と社会をつなぐ支援NPO/ 育て上げネット理事長工藤啓のBlog

【読書感想文】マンガで食えない人の壁-プロがプロたる所以編- テーマ置換可能な内容でした。

マンガで食えない人の壁 -プロがプロたる所以編-/NPO法人NEWVERY

¥1,080
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NPO法人NEWVERYによるトキワ荘プロジェクトが発刊する書籍(4冊)は、すべて新人漫画家および漫画家志望者に向けて書いている、とあとがきにあります。

本書は”あの漫画”を仕掛けている編集者と、”あの漫画”を生み出したプロ中のプロが、プロ同士の対談を経て、プロ漫画家とは何か。どういうものかを語っています。

確かに、テーマは「漫画」ではありますが、対談で語られる経験に裏打ちされた言葉は、そのテーマを超え、仕事でも、スポーツでも、趣味であっても、プロフェッショナルを目指すひとにとっては、宝物になり得る言葉であり、奈落の底に叩き落される言葉でもあります。

樹崎聖さんと新條まゆさんの対談では「延びる人の共通点」が語られます。そこではひとの話を聞けることと取捨選択、バランス感覚が語られます。その上で、自分といかに向き合うのかが示唆されているわけですが、一方で、プロ同士が「天才」についても触れるわけですが、事例となる漫画(家)を聞けば、プロが天才と表現するのはソコなのかと思いました。

きづきあきら+サトウナンキさん夫婦と、うめさん夫婦の対談は、限られた時間や制約のなかでくみ上げる企画やプレゼンテーションの力を高めるために大変参考になる内容でした。課された(チャンスをいただいた)ページ数/尺によって変えてはいけない本質的な部分と、一方でページ数が多い場合の思考、少ない場合のアイディアの削除決断の部分は本当に参考になります。

栗原正尚さんと甲斐谷忍さんの対談では、不遇の時代の過ごし方。下積みの時代。仕事ができないということ。向き不向きについて赤裸々に語られています。そのなかでも、後になってその時間が無駄ではなかったと振り返れるために何を考え、何をしたのか。苦しいなかでも自分に負荷をかけること、乗り越えること、成長するための計画と投資。漫画(家)に関わらず、なんとなく/明確にうまくいっていないときに大切にしていることは、プロになったひとだからそうなのだというよりも、地味に、着実に考え、行動してきた結果としてのプロ、継続できるプロの在り方を知ることができました。

その他、さまざまなテーマがプロ同士の対談により構成されています。文字数がそれほど多くなく、意外とさらっと読めるのかなと思っていました(表紙が漫画だからかもしれません)。ただ、プロの言葉だからなのか、吟味したいと思うところが多く、少し進んでは読み直したりと、見た目以上に読み応えがある書籍というのが読み終わっての印象です。

プロの漫画家になるために。プロの漫画家としてあり続けるための話ではありますが、「漫画」を「自分の領域」に置換して読める、非常に学びの多い書籍だと思います。ただ、僕は漫画が大好きなだけに、登場された漫画家さんの作品を読み直してしまったり、このような思考を持つひとが書いたのかと感慨深く読みました。

漫画が好きなひとにとって、作家さんの素顔や思考に迫れるお得な作品でもあるのではないかと思います。