過去2回に渡って、「外側の要因」に意識を向けるだけではなく、「内側の要因」にも目を向けて行くことの大切さについて書きました。健康を維持して行く上でどちらの要因も大切です。どちらか一方だけで完璧ということはないのだと思います。重要なのはそのバランスをどうしてとっていくかだと思います。
しかし、言葉では簡単に言っても、現代は情報社会でどうしても外からの情報があふれている時代です。その情報が正しいのか判断する事に迷うことも多いのではないかと思います。

当院では「抗がん剤を用いないがん治療」を柱の一つとして提案させていただいていますが、こちらから特定の治療法を押し付ける事はありません。「どのような治療法を受けたら自分の病気が治るような気がするのか」を大切にします。そして、最後には必ず次のようにお話をするのです。
「どのような治療法にを選択するかも大切ですが、それよりももっと大切なことがあります。それは、病気を治すことが出来るのは最終的には患者さん自身の持つ自己治癒力なのです。主人公は患者さん自身であって、決して医者ではないです。私たちは、患者さんの自己治癒力のスイッチがオンになるお手伝いをさせていただくだけなのです。自分自身の力をもっと信頼する事が大切です」
私たちが、病気を治す力は患者さん自身にある、とお話をするとき戸惑われた顔をされる患者さんがおられます。中には「医者から突き放された」ように感じる患者さんもおられるのです。
そういった考え方に慣れていないのも頷けます。通常の医療では、医療者側が治療方針を提案してそれをそのまま受け入れることが当然になっているからです。しかし、それでは医療や医療者側に依存することになってしまい、下手をすると患者さん自身の持っている自己治癒力を閉じ込めてしまうことにもなり得るのです。患者さん自身の持っている自己治癒力に対しての信頼をかえって奪っているという言い方も出来るかもしれません。

どのような治療を選択するかは「外側の要因」に関しての問題です。こちらにばかり関心が傾くと、あの治療が良いと聞いたらそちらに行き、あの先生が良いと聞けばそちらの先生のところに行きドクター・ショッピングが始まります。
それに対して自分自身の自己治癒力をどのようにして高めて行くかは、「内側の要因」についての問題であるということができます。
本当に、自分自身の中には自分の病気を治すことの出来る力があるのだと分かれば、あれこれと治療法をさすらうこともなくなります。
「そんなことを言ってもやはり、医者からこれは効くという治療法を提案してもらわないと不安だ」という気持ちが当然だと思います。
自分の中にある力を信頼することは言葉にするほど簡単ではないかもしれません。しかし、実際に「不治の病」であると言われたけれど、そこから生還してこられた患者さん(癌サバイバー)が口を揃えて話される事は、この自己治癒力に対しての信頼感なのです。それはまさに、自分自身に対しての「自己信頼」でもあるのです。

どのような治療法を選択するかが重要ではないというのではありません。あくまで治療法を選択する主体は自分自身であるという事を見失わない事が大切です。それが「外側の要因」と「内側の要因」とのバランスをとるということでもあります。

当院で提案している「抗がん剤を用いないがん治療」は病気の方が「病気になるプロセス」の中で喪失していった、「自己信頼を取り戻す道」であると言う事が出来るかもしれません。