初太宰。
ブロガーさんが挙げてくれた中から、特に自分好みそうなのがこれだったので、選びました。
女生徒
太宰治 著
角川文庫
- 女生徒 (角川文庫)/太宰 治
- ¥473
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短編集。
全部女性の一人称で描かれています。
男の人なのに、よく書けるなと、まず驚き。
そして、ああ女性って(少女って)こうだよなぁ(こうだったよなぁ)なんて、ときどきは共感したりもしてしまって、なんで心情がわかるのだろうとまた驚きです。
印象が強いのは、やはり表題作の「女生徒」
子どもでもない、大人でもない、微妙な年頃。
感受性と自意識と美意識が強すぎて、自分との折り合いも、親を始めとする大人たちとも、世間との折り合いも、うまくつけられない頃。
「私」の他の女性に対する目線がいやに厳しいのも、面白かったり。
お母さんとのやり取りも、リアルで。
好きなものと嫌なものが、残酷にはっきりしていて。
感情の浮き沈みが激しく、いつも混沌としていたり。
(前略)これは、この空の色は、なんという色なのかしら。薔薇。火事。虹。天使の翼。大伽藍。いいえ、そんなんじゃない。もっと、もっと神々しい。
「みんなを愛したい。」と涙が出そうなくらい思いました。じっと空を見ていると、だんだん空が変わってゆくのです。だんだん青味がかかってゆくのです。ただ、溜息ばかりで、裸になってしまいたくなりました。それから、いまほど木の葉や草が透明に、美しく見えたこともありません。そっと草に、さわってみました。
美しく生きたいと思います。
(43ページ、「女生徒」)
これからはもっとお母さんをいたわろう、と思う「私」が、「お母さんだって、私だって、やっぱり同じ弱い女なのだ。」と思うのが、新鮮で興味深かったです。
今の日本では性差って昔より薄くなっているようだし、普段はそんなには性別を意識せずに生きているから、こうして、男性の作家が、女性の目線に立って、女性を描いて、その描かれた女性が彼女の視点で女性を見て、それを女性である私が読んで、とやかく思っている状況も、なんだかおもしろいものです。
明日もまた、同じ日が来るのだろう。幸福は一生、来ないのだ。それは、わかっている。けれども、きっと来る、あすは来る、と信じて寝るのがいいのでしょう。
(68ページ、「女生徒」)
あと特に好きなのは、「葉桜と魔笛」です。
結核にかかり、余命わずかなきれいな妹。
彼女が恋人と交わした幾通もの手紙を、姉は箪笥の奥から発見し、こっそり盗み読んでしまいます。
音楽のような、完璧な美しい一編です。
他の話も、どれも鮮やかで、痛々しいほど純粋で、やり切れなくて、苦しくて。
読み耽ってしまいました。
☆
内容紹介を読んでいたら、『ろまん燈籠』も気になるので、次はそれを読もうかなと思っています。
『斜陽』も、『人間失格』も、やっぱり一通り読んでおこうかな