バレンタインデーサプライズに失敗したフレッドだったが
その後、今回は私の企画で“やり直し旅行”に臨んだ
しかし私はこの旅の途中でフレッドに伝えるべきことがある
あと2週間で語学学校を卒業する
その後は日本へ帰る
ということ
実はその時帰りの飛行機のチケットはすでに買っていた
そして時を見計らいそれを伝えた
フレッドは気が狂ったようになった
狂った彼は見慣れていたが今までにない狂いようだった
完全危険人物と呼べるほど狂気し
その時ばかりは本当に私を殺し自分も死のう・・・
つまり
無理心中をしようとした
結局はフレッドにはそんな勇気はなかったのだが
・・・中途半端だ
学校を卒業して30日間はアメリカに滞在することができる
しかし私には日本へ早めに戻らなければならない理由があった
最もお世話になったバンドが
デビュー25周年のコンサートを開催
するためその招待状が来ていた
私にとっては地球の果てからでも駆け付けるべきイベントだった
とんでもない状況の旅行
から戻り帰国の日が近づくにつれ
フレッドはその事実を受け入れざるを得なかった
しかし彼は半日ほど私と連絡が取れないと
“
もしかしてホントはもう帰国しちゃったのかも・・・”
と不安になり狂気化する始末
ＮＹ発成田行の便がある全ての航空会社に電話をして
搭乗名簿に私の名前が無いかを確認していた
―
どこまで気の毒な性格なんだ―
ある日フレッドは意を決したように言った
「
きみが日本へ帰って一ヶ月以内に僕も行くよ
だからインヴィテーションカードを書いてよ」
―はぁ？？？？？？？？―
彼はアメリカのパスポートを持っていない
某アフリカ国の移住者だ
日本とは国交がないためVISAの取得が必要になる
インヴィテーションカードとはVISA取得の際
滞在期間、理由、場所などを日本国籍の者が
身元保証人として提出しなければならない
そんなものを私が彼に出すわけがない
日本へ招く理由がないのだから
だいいち私は帰国後日本に長く滞在するつもりはない
連日、友人が私のためにパティをしてくれて
ニューヨークを離れることは少々名残り惜しい気持ちになっていた
山のような荷物は少しずつ日本へ送り
帰国一週間前にはほとんど片付いていた
フレッドは帰国までの一週間だけはずっと一緒にいて欲しいと懇願した
仕方なく私はその願いを受け入れた
その週は“将来のことは考えられない
”と言い続けながら
それでもできるだけ喧嘩をしないよう努めた
心の中ではやっとこの単純野郎から逃げられるとほっとしていた
そしていよいよ帰国の日
号泣するフレッドに見送られながら
私はニューヨークを去った
学校を卒業したときは名残り惜しかったが
この日はほとんどそんな気持ちはなかった
飛行機にさえ乗ればまたいつでも来られる・・・
それよりも
フレッドとの間に現実的な距離を持てたことが
心からうれしかったのだ
常識知らずの単細胞貧乏野郎・・・私のスタイルには合わない
帰国してから1ヶ月は身の回りのことや仕事のことで
慌ただしくあっという間に過ぎた
フレッドは“早くインヴィテーションを送れ
”と
毎日何度も電話をしてくるしメールも何通も送ってくる
距離ができても彼のやっていることは大して変わらない
部屋の窓を叩かないだけ随分マシだ
しかしそれに匹敵する行動を始めた
私は東京で暮らしていたため実家にはいない
もちろん両親とも一緒に住んでいない
それなのに私が電話に出ないと
実家や両親の携帯電話に掛けるのだ
それも時差というものに全く配慮なく早朝4時5時、深夜1時2時
その回数も一日50回を超えるのだ
両親は日本の警察にもストーカー被害届けを出すため
その通話記録やメールでの脅迫まがいの内容も全て残していた
それを見るといかにすさまじい攻撃だったか想像できる
もちろん電話番号やアドレスは教えたことはない
勝手に私の携帯からデータを盗んだのだった(Eps020参照 )
その後
怒った両親は
知り合いの弁護士を通じて被害届を出した
アメリカの警察にも以前私の提出した被害届が残っている
その時も警告を無視して結局は警察へ連行されたのだ(Eps030参照
)
日本もアメリカも警察は優秀だ
対象者のデータはオンラインで全ての機関に繋がっている
これ以上何か問題を起こせば
日本入国のVISAは取得できない
もちろんフレッドにその旨警告はしたが
彼の異常行動は収まらなかった
結局単純バカは
自分で自分の首を絞めていることに気が付いていない
どこの世の中に
そんなヤツの身元保証人になり日本へ招く
おめでた人間
がいるものか
しかし・・・そんなおめでた人間が
後に現れるのであった・・・
ある意味巧み・・・
ある意味単純なテクニックで
一人の女性を騙しそして利用したのだ