11月28日、京都山科クリストファー・ロビンにて、絵本セラピー(R)の余韻も残るなか、絵本セラピスト(R)鳥山由紀さんのインタビューをさせていただきました。初めてお会いする鳥山さんは小柄で華奢な落ち着いた印象の女性でした。絵本セラピー(R)のお話を中心に、インタビューを通じて鳥山さんの魅力に迫っていきたいと思います。

  

◆絵本セラピー(R)をはじめて体験し、鳥山さんの優しい声に大変癒されました。子どもの頃には「耳で聞くと意味が分かるのに、文字はまだ読めない」という時期がありますが、私はそんな頃に戻ったような不思議な感覚になりました。

 

鳥山さんのおっしゃる「文字を追わずに、絵と耳から入ることばで絵本を楽しむ」ということには、どのような意味があるのでしょうか。

 

 

はじめて出会う絵本は、読み聞かせで出会ってほしい。

 

 

 

文字を読むことと、絵をじっくり見ることは、同時には出来ないんですね。もちろん、チラッと絵を見ながら文字を読むことはできるのですが。それでは、絵はちゃんと目に入ってこないんです。読み聞かせをしたときに、それこそ、まだ文字が読めない子どもたちは、耳でお話を聞きながら、驚くほどしっかり絵を見ているんです。

 

例えば、絵本のページの真ん中に主人公がいて、ページの端の方で、主人公と全然関係のない虫とか、そういうキャラクターがショートコントのようなものをしていたり、ページの角がパラパラ漫画のようになっていたり、絵本の中には作者がひっそりと遊んでいるような部分があったりするんですね。そういう絵を子どもたちは実によく見ているんです。

 

子どもに読んでいてお話を分かったつもりでも、「ここにこんな絵がある!」とか子どもに言われて、「え!?そうなの!?」「知らなかった!ちょっと待って待って!」とかいうことってよくあるじゃないですか。子どもは文字という情報が入ってこないことによって、絵を見る余裕があるんですね。文字を追うとどうしても絵はかすんでしまうから、それで分かった気になっているのなら、それはもったいないかなと思います。だから大人も読み聞かせという形をとると良いんです。

 

自分で読んでももちろん感動したりもするのですが、私は読み聞かせ(読んでもらって、絵を見て)ではじめて絵本は完成すると思っているんです。皆さんも今までで知っている絵本は沢山あると思うのですが、初めて出会う絵本は是非、読み聞かせで出会ってほしいと思うのです。その方が、絵本本来の良さが分かるのではないでしょうか。

 

 

絵本セラピーで読んでいただいている途中、私は思わず感涙してしまうことがあり、癒されている自分を感じたのですが、

大人が絵本によって癒されるのはなぜなのでしょうか。

 

自分の人生の経験と重ね合わせると、たった32ページの絵本の中に壮大なドラマがあることに気づくのです。

例えば小説なんかは登場人物の関係が複雑だったりして、ちょっと考えないといけないときがありますよね。絵本は子どもでも分かる簡単な文章で書かれているし、絵で表現もされています。だからこそ心にスッと入りやすいというのはあるかと思います。脳の力をあまり使わないで楽しめるんですね。

 

でも、絵本の中には二時間ドラマを観たくらいの内容がギュっとつまっている作品もあったりします。その「ギュッ」の部分は、たぶん子どもには理解できないけれども、大人だからこそ、その部分に共感が持てたりするんです。

 

自分の人生の経験と重ね合わせると、たった32ページの絵本の中に壮大なドラマがあるじゃないかということに気づくのはきっと大人なんですね。

 

経験を積んだものだからこそ受け取れる何かがあるのかな。子どもにとっては楽しい絵本でも大人だとそういう深い部分を感じとったりできるのです。

 

そこに深みを与えるのは、大人の経験値があるからかなと思います。

 

◆では、今度は子どもに読み聞かせをするときのアドバイスがあれば教えてください。読み聞かせをするときは抑揚をつけすぎたり、声色を変えてはいけないと聞いたことがありますが、、。

 

基本的には、大げさに演じるのではなく淡々と読みましょうというのがスタンダードとしてあるのですが、親子で読むときはいくらでも演じて、これが私のお父さん、お母さんの読み方なんだというので良いのではないでしょうか。

 

私も「ねないこだれだ」とか読むときに「と~け~い~がぁ」ってわざと怖がらせるような読み方をしますよ。子どもたちは「怖いしやめてー!普通に読んでー!!」とか言って楽しんでいます。(笑)

 

親子の読み聞かせでは、読んでいる側も楽しくなければ続かないし、大げさに読んで子どもが喜んでくれるならそれで良いんじゃないって思います。

お偉い先生方は「いやいや、、、。」っておっしゃるかもしれないですけどね。(笑)

 

 

◆絵本セラピスト(R)として活動される鳥山さんの「目指すところ」は何ですか?

 

私が目指しているところはNHKのミュージックポートレートの音楽みたいに、誰もが自分の人生を絵本で振り返ることができるくらい、絵本が普通に浸透していくということなんです。

 

いま、働いている「つどいの広場」では赤ちゃん、親子向けに絵本を読んでいますし、図書館では幼児さんに向けて読んでいます。小学校でも読み聞かせのボランティアをしたり、今日みたいに大人向けに絵本を読んだりもしています。

 

でも、中学校、高校って読み聞かせの時間なんてないじゃないですか。ここが空白なんです。

中学高校時代にも、例えば「失恋したとき、こんな絵本を読んでた。」とかそんな絵本もあって欲しいんですよね。

 

読み聞かせボランティアに行って、小学校6年生の3月に読むときには「もう、この子たちの人生最後の絵本になるかもしれない。」という想いで読むんですよ。そうなるのは、ものすごく残念なんです。中学になってもう絵本に出会わない、、、。そう思うと、もう私の責任は重大です。

 

私の中で、中高生のその隙間を埋める術はないかなと思っていて、先日の小中学生が対象のイベント「やましろ未来っ子読書大好き!フェスタ」では、色んなお話をさせてもらったんです。

 

中高生が絵本を読んでいたら、先生や親御さんによっては「そんなもの読んでないで、もっと勉強しなさい!」という対象になるかもしれません。そこを、「中高生が絵本を読んでもいいんだよ」というように伝えていきたいと思っています。そういうところにもっと関わっていくことも今後の課題です。

 

小さい頃から絵本に親しんで、小学校でこんな絵本を読んでいたとか、中学高校の思い出の絵本とか、子育てで再び出会う絵本、子育てを卒業してリタイアした後にも「私の好きな絵本」がある。

 

節目節目で出会った絵本で人生を振り返ることができるくらい、みんな生涯絵本と付き合っていってほしいなという想いがあるのです。

 

 

◆鳥山 由紀(とりやま ゆき)

1972年生まれ 京都在住。2012年より「絵本セラピスト(R)」として活動。絵本セラピー(R)講座の開催、大人・子どもを問わず絵本の読み語り。絵本についてのコラム、エッセイの執筆、講演等、多岐にわたり活躍中。

 

 

<<インタビュー前編まとめ>>

鳥山さんの活動の対象は、「子どもと大人」だけではなく、「全てのライフステージに立つ人々」だということが分かりました。

 

インタビューをしてみて感じたのは、鳥山さんの紡ぐ言葉の語感の良さ。私、こういうところにも魅力を感じてしまいます。

 

「なぜ読み聞かせ?」「なぜ絵本で大人が癒される?」といった素朴な疑問も気持ち良く解決してくださるのでした。インタビュー自体が、もはやセラピーのようでした。(笑)

 

最近は執筆や、講演などでご活躍中の鳥山さんですので、セラピーというとお説教臭さがあるのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

でも、実際に体験してみて、びっくりするくらいありませんでした。(笑)

 

上から目線ゼロ!知識自慢ゼロ!隣で同じ目線で居てくださる安心感は、だんろの前みたいにあたたかかったのです。

実際にだんろの前であたたまったこと、一度も無いですけど。 うふ。

(でも絵本セラピー(R)5冊目の「だんろのまえで」という絵本で、だんろを疑似体験できましたから。)

 

こちらの鳥山由紀さんのインタビュー記事から、絵本や絵本セラピー(R)に興味の無かった方が、少しでも「良さそう!」と感じていただけると幸いです。

 

次回はインタビュー後編です。絵本セラピスト(R)とは、ちょっと関係ないところでの鳥山由紀さんの魅力がいっぱいです!乞うご期待!

 

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http://ameblo.jp/ehonrahen/

 

※絵本セラピー(R)、絵本セラピスト(R)は絵本セラピスト協会の登録商標です。