11月9日に打ち上げられたロシアの火星探査機フォボス・グルントは、火星へ向かうためのエンジン点火に二度失敗し制御不能に陥っていたが、ロシア連邦宇宙庁はこの事態を受けて、間もなく正式に打ち上げ失敗を公表すると言う。

欧米の複数のメディアによると、フォボス・グルントには推進剤として有害な非対称ジメチルヒドラジンと四酸化二窒素、それに放射性コバルト57を、合わせて8.3トン搭載しており、これらは本来地球軌道を脱出する際に燃焼される予定だったが、フォボス・グルントはこれらを全て残したまま地球大気圏に突入する事になる。
$SatelliteEastAsiaのコラム-火星探査機失敗



ロシアは当初、フォボス・グルントのエンジン点火に失敗した後、その行方を捕捉出来なり、NASA(米航空宇宙局)とESA(欧州宇宙機関)に衛星の捕捉の協力を仰ぎ、モスクワの近くでバイコヌール地上局の上を通過する間にフォボス・グルントに指令を送ったが、失敗に終わった言う。



通信途絶の問題がソフトウェアの不具合であるなら、地上管制からコンピュータを再プログラムすることが出来て、再びエンジン点火の可能性が残っているものの、コンピュータ部品そのものの場合、修正は不可能だとしている。

また搭載されていた点火用バッテリーの寿命が尽きたものの、NASA(米航空宇宙局)とESA(欧州宇宙機関)の観測で太陽電池パネルの展開が確かめられたということで、エンジン再点火の可能性がゼロになった訳では無いとしているが、エンジン点火の為のコンピュータの故障の場合はそれも失われた事になる。



今回の火星探査機の打ち上げ失敗は、ロシア宇宙産業に関わる人材頭脳流出と、緊縮予算に問題があると指摘されている。
ISS宇宙船の打ち上げに失敗した際にロシア宇宙当局は慌て、プーチン首相はプライドを回復するための誓約をしたと言うが、多くのベテラン工業技術者はさほど驚かなかったと言う。

ロシアの宇宙産業に携わる人々の専門知識や基本的な器材は、時代遅れのソビエト時代のデザインが今も使われ、過去の遺物に近いと言われ、その停滞はロシアの産業全体に頻繁な災害(炭鉱事故、ダム爆発、飛行機墜落事故まで) を招いていると指摘されている。

そして度重なる惑星探査の失敗について、新顔のインドや中国、日本でさえ無人惑星探査機を送り込む事に成功しているとも指摘。



ロシアのロケットはソ連時代に造られたもので、しかも主役を成しているのは核弾頭を廃棄した大陸間弾頭ミサイルである。ソ連崩壊後、ロシアは新型のロケットを開発していない。
それは緊縮予算と長年低い労働賃金で働いて来たため、技術者(頭脳)が流出してしまった為だと言う。

ただ今回の火星探査機の打ち上げ失敗に関しては、探査機を格納しているペイロード部分にゼニット2F(Zenit-2FG)ロケットを使い、第1段と第2段にZenit-3Fロケットを使用した特別仕様である事から、ゼニットロケットの打ち上げ途中での不具合が、そのまま探査機本体へ影響したとも考えられ、何故探査機のエンジン点火に失敗したかは、このまま地球に落下すれば謎は解けないままとなる。



新しいものを取り入れるという姿勢が、今のロシア全体からも見えて来ない。
今回の失敗の原因が仮に、小さなCPU一つだったとしたら、その代償は計り知れない程大きい。
ロシア宇宙産業はこのまま沈没してしまうのか・・・。