2009年1月21日


札幌丘珠高校(北海道札幌市東区、佐々木茂文校長)の理科部員が、淡水巻き貝「モノアラガイ」の水面での背泳ぎに似た動きを研究した成果が海外の専門誌2誌に掲載された。共同で研究に取り組んだ伊藤悦朗・徳島文理大教授(生物神経学)が英語で論文を執筆し、理科部員15人も名を連ねた。部員らは「私たちの研究が外国で紹介されるなんて、すごい」と驚いている。(三木一哉)

 理科部は、同校の文化系クラブの一つ。高校・大学の連携の一環として、北大創成科学共同研究機構と協力し、ミツバチの8の字ダンスの研究などをしてきた。モノアラガイの研究は同機構の助教授だった伊藤教授の指導で、水面を逆さにぶら下がるような格好で「背泳ぎ」する独特の動きを06年度から調べた。

 モノアラガイが水面に「ぶら下がれる」のは、表面張力のおかげとみられているが、泳ぎ出すと水面が乱れて表面張力を維持できず、落下してしまうはず。それなのに、そうはならない。

 観察と研究で、水面のモノアラガイは足から脂分の多い粘液を分泌、浮いた粘液に繊毛を絡めて動くため、水面から落ちずに動けることが分かってきた。この研究は07、08年度に道内の高校の理科研究発表大会でも報告され、奨励賞を受賞した。

 伊藤教授は、欧州のモノアラガイ研究者に問い合わせ、類似の研究がないことを確認。高校生の実験データを生かして英語論文を仕上げた。投稿した米国の「Biological Bullettin」とハンガリーの「Acta Biologica Hungarica」に掲載された。

 両誌には、部長の宮前ゆりえさん(18)ら3年生4人と1年生1人、卒業生10人の計15人の名が並ぶ。北大との連携研究を始めた前札幌丘珠高教諭で現道立理科教育センターの金澤昭良・指導主事は「理科離れと言われるが、ごく普通の高校生にも能力がある。他の学校の理科クラブが世界に挑戦しようとするきっかけになってほしい」と喜ぶ。

 意外にも、この研究にかかわった現在の3年生4人は短大や製菓の専門学校などに進み、科学者、研究者を目指す人はいない。宮前さんは「思うように泳いでくれず、長い時間じっと見守ることもあった」と振り返り、「モノアラガイも、最初はさわりたくもなかったが、今は平気、かわいい」と笑った。

 伊藤教授は「今、生物学の先端の研究は遺伝子レベルの話ばかりだが、『どうしてこんなことが?』という素朴な疑問から、高校生も世界に通じる研究成果を出せることを示してくれた」とたたえた。


情報ソース asahi.com

http://cdn.asahi.com/edu/news/chiiki/TKY200901210227.html