小説『 人形と悪魔 <約束の章> 第三節 』 | SKILLARTGALLERY

小説『 人形と悪魔 <約束の章> 第三節 』


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■作品タイトル
『 人形と悪魔 <約束の章> 第三節 』

■作者
AZL

■スキルアート
小説

■作品
おじいさんは孫が愛しくなって優しく頭を撫でます。
生前と変わらないその顔を眺めていると
死んでいる事が嘘の様に思えてきます。
けれども幾ら呼びかけようとも孫は返事をしません。

落胆するおじいさんに悪魔は声をかけます。
「まだだよ、まだ会えない。条件はあと2つ。」

指示に従い女の子を部屋の隅に座らせると、悪魔は何か呪文の様なものを唱えながら
床になにやら魔法陣の様なものを悪魔は描いていきます。

人間を生き返らせる為の2つめの条件、
死者のさまよう魂を呼び寄せる儀式なのだそうです。

魔法円の周りに蝋燭を置き、火をつける様におじいさんに指示すると悪魔は再び、
何かしらの言葉にならない呪文を唱えながら自らの魔力を孫の遺体に注ぎ込みます。

しばらくして悪魔の儀式が終わると
粗末な人形はおじいさんの方を振り返ります。
どうやら2つめの条件は達成出来たようでした。

にわかに信じられないおじいさんは悪魔をあまり信じていません。

ところが、しばらくすると魔法円の中に座っていた孫の
瞼が微かに開いていたのです。

おじいさんは驚くと共に喜びで一杯になりました。

すぐに孫を抱きしめようとするおじいさんを人形は引き留めます。
最初は半信半疑だったおじいさんも、
孫の微かに動いた瞼を目の辺りにすると居ても立ってもいられませんでした。

「マダ早いよ。次は3つめの条件、記憶が必要なんだ」

しかし、そういう粗末な人形の顔は優れないように見えました。
その理由をおじいさんは訪ねます。

3つめの記憶を集める作業に対して悪魔が乗り気では無いのは
彼女自身の記憶自体が遙か遠い場所、天使達が記憶を管理しているからです。
当然悪魔であるその人形では手が出せないのです。

そこで悪魔は、本人の記憶の代わりに孫の事を知っている人達から
記憶を譲り受ける事をおじいさんに提案します。

その提案を迷い無く受け入れたおじいさんは
街中の孫を知る人達から記憶を集めようとします。

記憶の集め方はこうです。
おじいさんが孫の写真一枚を頼りに
町の人1人1人に孫のことを尋ねていきます。

そしてもし、知っている人を見つけたら
粗末な人形にとり憑いている悪魔が姿を現して
その人の記憶から孫娘に関する情報だけを
取り出してしまうというものです。

上手く行くかどうか心配しているおじいさんを余所に
悪魔は強引に街に連れ出すと早速聞き込みを開始する様に指示します。

聞き込みの目標はおじいさんが住むこの街の住人全員です。

1ヶ月が経ちました。
なんとかおじいさんは街の人全員に孫娘の事を聞いて回る事が出来ました。

しかし、悪魔が言うには記憶の量はまだ足りないそうなのです。
おじいさんは疲れていましたが、記憶の量が足りないのでは仕方無いと
家族が住む隣街まで出掛ける事を決めます。

数日かけて辿りついた隣街は
おじいさんが居た街とは比べ物にならない広さを誇っていました。
他国との貿易が盛んな都会である為、そこを行き来する人間も膨大な数を誇ります。
おじいさんはなかなか思う様に進まない聞き込みに何度も途中で投げ出そうとしますが、
悪魔に元気づけられて何とか聞き込みを続ける事が出来ました。


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