ザ・ロード

THE ROAD
監督：ジョン・ヒルコート
音楽：ニック・ケイヴ、ウォーレン・エリス
出演：ヴィゴ・モーテンセン、コディ・スミット＝マクフィー、ロバート・デュヴァル、ガイ・ピアース、シャーリーズ・セロン、モリー・パーカー
２００９年　アメリカ映画

コーマック・マッカーシーの同名ベストセラーを映画化した終末世界ロードムービー。
とにかく映像が、お話が、すべてが暗い。
こんな廃墟と化した灰色の世界を延々と映し出す作品も珍しい。
なんの説明も無いので原因がさっぱり分かりませんが、
核戦争、災害、なんらかの理由で文明社会が滅んでしまった荒廃した世界で
父と息子が希望を求めて南に向かってひたすら旅を続ける・・・・というお話です。
僅かな食料を奪い合い、中には人を殺して人肉を口にする集団まで出てくる狂気の世界の中で
父子が人間らしさを失わず旅を続けようとする、なんだか宗教がかったところもありますが、
過酷な旅を続ける２人の姿に、ラストまでの約２時間すっかり釘付けになります。
観ていて引き込まれるのですが、エンターテイメント色は皆無といってよく、
恐ろしく地味で息苦しい作品です。
ちょうど「ザ・ウォーカー」の対極にあるような作品だと思います。
ヴィゴ・モーテンセンとコディ・スミット＝マクフィーが過酷な運命に立ち向かう父子を見事に演じています。
この監督、かなり佳作な人らしく、監督デビューして２０年になるのに長編映画は「亡霊の檻」と「プロポジション　-血の誓約-」と本作のみ。
他の２本は未見ですが、きっと同じように地味なんだろうなあ。
でも、地味だけど力強い作品です。

音楽は、ニック・ケイヴと、ポストロック・バンド「Dirty Three」のバイオリン奏者、ウォーレン・エリス。
ニック・ケイヴといえば、ちょっと音程がハズレたような
イギー・ポップやルー・リードみたいな歌が特徴のガレージロック系のシンガーですが、
本作のサントラでは彼の歌を聴くことはできません。
さらに、本来のニック・ケイヴとは全く方法論の異なる音なので、
彼の最近の作品が好きな人は聴いてて苦痛かも知れません。
特に、彼のプロジェクト「Ｇｒｉｎｄｅｒｍａｎ」のアルバムが好きな人は
「カス」に聴こえるかも(^^;)
ちょうどニック・ケイヴ＆バッド・シーズ名義の「The Boatman's Call」の頃の音からボーカル抜いて、
代わりにどんよりしたバイオリンの音を入れたような感じのスコアです。
全体の音としては、灰色の世界を助長する「モア～ン」とした陰鬱な棒弾きのバイオリンをバックにした
静寂の音が延々と続きます。
ウォーレン・エリスのいや～な感じのバイオリンが「ベルリン天使の詩」のスコアになんとなく似てる。
そこへたまに美メロのピアノが絡んできて、
何となく救われるみたいな音です。
同じコンビで音楽を担当した「ジェシー・ジェイムスの暗殺」とよく似たスコアで、
あれをもっとダークにした感じのスコアです。
暗いスコアですが、アンビエントだと思えば悪くないし、映像を観た後なら聴ける人も結構多いのでは？
好き嫌いは分かれますが、ウォーレン・エリスのインスト・ポストロック・バンド「Dirty Three」に免疫のある人は楽しめるかも知れません。

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