インランド・エンパイア
INLAND EMPIRE
監督:デヴィッド・リンチ
音楽:デヴィッド・リンチ
主演:ローラ・ダーン、ジェレミー・アイアンズ、ハリー・ディーン・スタントン、ジャスティン・セロー、カロリーナ・グルシュ
カ、スコット・コフィ、グレイス・ザプリスキー、ジュリア・オーモンド、メアリー・スティーン・バーゲン、裕木奈江
2006年アメリカ/ポーランド/フランス映画


奇才デヴィッド・リンチ監督がハリウッド資本を離れヨーロッパ資本で好き放題撮った3時間にも及ぶ不条理ドラマ。
観る前はこの人独特のサッパリ訳の分からない世界観に、果たして3時間もつきあえるのかと心配しましたが、
取り越し苦労だったようで、訳が分からないなりに観やすい映画だったなあという印象。
というか僕も既にリンチ・ワールドに免疫が出来'てしまったのか‥‥(^^;)
3時間、意外に退屈することなく引き込まれました。
とはいえ、訳が分からないことには変わりなく、ストーリーをまともに追っていたらこっちがおかしくなります。
大まかにいうと、顔にポカシが入ったカップルがホテルに入ってきて、すぐ場面が替わって女性が1人で涙を流しながらTVを観ていて、
TVにはウサギのぬいぐるみの頭を被った3人が映ってて、またまた場面が替わって、
お金持ちの女優さんの家にかなりヤバイ感じのおぱさんが挨拶に来て話をしていたら、また場面が換わって、
その女優さんが不倫をテーマにした映画の主演に決まって、その映画は呪われたポーランド映画のリメイクだと分かって、
女優さんは映画とリンクするように共演者の男優と不倫に溺れて、
劇中劇と女優さんの実生活とがゴチャゴチャになっていって、さらにはいろんなとこにトリップして‥‥
という感じでパラレルに話があちこちに飛んでいきます。
場当たり的に作られたイメージ映像をツギハギしてつなげたような作品で、
これだけでもかなりメチャクチャな話なのですが、
さながら「悪い夢」でも観ているんだと思えば案外納得できる映画かなあと思います。
僕は年のせいか、最近毎晩必ず夢を見るようになったのですが、
だいたいが脈絡のないメチャクチャな話で、目が覚めるとドッと疲れるので、
毎晩リンチ・ムービーを見せられているようなものです(^^;)
なお、本作は2007年全米映画批評家協会で実験的作品賞を受賞しています。


音楽は、デヴィッド・リンチ自らが担当しています。
残念ながら今回は盟友アンジェロ・バダラメンティは不参加のようです。
サントラは公開から1年近く経ってからやっとこさリリースされたように記憶しています。
リンチのペンによるサウンド・コラージュというかミュージック・コンクレート風のスコアと既成曲のコンピレーション盤になっています。
リンチのスコアの中に、ポーランドの作曲家でしょうか、Marek Zebrowski という人が共作したナンバーがあります。
全体的に映像とリンクするような、つかみどころのないモワ~っとしたスコアで、従来のリンチ作品でも聞かれたシンセの重低音を多用した常にどんよりとしたモヤがかかったような重圧を覚える感じのサウンドが特徴です。
このスコアがあってこそ、リンチワールドがさらに一層不条理で幻想的なものとなります。
決して楽しいスコアではありませんが、リンチワールドを音で追体験するには絶好のサントラだと思います。
雰囲気で聴かせるアンダースコアなので、メロは大してあってないようなものだし、自己主張も希薄ですが、
本編を気に入った人なら、是非耳にしたい1枚だと思います。
スコアの中に中性的な女性ボーカルっぽい歌が入っていますが、誰が歌ってるんだろ?
「ツイン・ピークス」ではジュリー・クルーズが透明感のある歌を聴かせていましたが、
Christa Bellって女性の名前があるけど、これかなあ。
既成曲は、リトル・エヴァの「ロコモーション」、ラストで絶大な効果を発揮するニナ・シーモンの「シナーマン」、ベックの躍動感溢れるナンバー、
さらにはデイヴ・ブルーベック・カルテットまで・・・ある意味すごいラインナップです。

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