スーパーゼネコン | 下請け魂!!

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一生懸命働くお話です

「お世話になります。私、㈱江藤と申しまして、松江市内でサッシとガラス業をやらせて頂いている者ですが、所長さんいらっしゃいますか?」


 

営業にやって来た。

相手は“読留建設・スーパーエッグ新築工事”現場事務所だ。


 

スーパーエッグは、山口県を拠点に中国地方に事業展開するスーパーマーケットだ。

松江市内の幹線道路沿いだが、中心地から少し外れたところにある、東京ドーム二つ分、いや、出雲ドーム二つ半分ほどの広さの建設予定地にプレハブの現場事務所が居座っている。


 

地場ゼネコンだと現場事務所は、大抵1階建てだが、読留建設は、日本人なら誰もが知っている大手ゼネコンの知名度からか、この現場事務所はプレハブの2階建てだ。1階は現場で働く職人の休憩所となっており、2階は2部屋あって設計事務所と読留建設事務所となっている。だから自然と、ゼネコンスタッフの足下で、現場の職人さんが休憩することになる。


 

まだ工事が造成工事の段階なので、職員の数が少ないのだろう、現場事務所の駐車スペースに車が3台ほど駐車していた。古いセダンと新しいコンパクトカーの間に、最新の日産スカイライン250GT Type Pが鎮座していた。


 

恐らくこの現場のボス=所長の車だろう。


 


 

読留建設はスーパーゼネコンなので当然、支店・営業所を全国に展開している。㈱江藤とも取引は多少があるが、ごく僅かだ。

というのも、松江市内に読留建設の営業所はあるが、職員は4~5人。土木系の営業、監督、そして、事務員が在籍しているだけだ。建築系の職員はいない。だから、会社自体は、大手だが、ここ、松江市内では建築の仕事が殆どない。


 

おのずと、㈱江藤との取引も僅かになる。だから、今回のような現場となると、読留建設の広島支店から職員がやって来る。帳簿上は初めての取引ではないが、実際は新規のお客同然となる。


 

「ああ、あなた、㈱江藤さん?サッシとガラスの営業に来られたの?」

所長が応対してくれた。


 

所長は髪型をきっちり7:3に分けていて、四角い銀縁のメガネをかけ、まじめで温和な紳士に見えた。