<提督の戦艦(Aдмиральl・ロシア・2008)> ★★★


>CATVでわが国では劇場未公開という2008年度製作のロシア映画<提督の戦艦(原題:Aдмираль=Admiral>を見ました。ロシア革命に翻弄された男女を描いた大河ドラマということで、タイトルから主人公は医者ではなく軍人にしても<ドクトル・ジバゴ>を連想しました。20世紀初頭、ドイツとの戦争で功績を挙げ、後に帝政ロシア海軍の司令官になった実在の軍人が、妻子がある身で同僚の妻を愛してしまい不倫関係になりますが、ロシア革命が勃発、彼は旧勢力の指導者として逮捕・銃殺され、女性も“妻”として逮捕され35年も幽閉されていたという内容でした。

こんな映画見ました-Admiral

役柄、冒頭はドイツ海軍との海戦があり、後半では旧制ロシア軍と革命軍との戦闘もありますが、大半は2人の煮え切らない恋のメロドラマで期待外れでした。それと、原題は単に“提督(司令長官)”ですが、邦題は看板に偽りありで、提督の“戦艦”は赴任時に列車の窓からちらりと見えるだけでした。(冒頭に主人公が乗っているのは水雷を敷設するずっと小さな水雷艇です。)

>1916年、バルト海での戦闘でドイツ戦艦を撃破した帝政ロシア海軍少将コルチャークは、舞踏会でアンナと出逢い人目惚れしますが、彼女は同僚の妻でした。妻子のある身ながらアンナとの関係を深めてゆきますが、戦功により黒海艦隊の総督に任命され、アンナに別れを告げて赴任しますが、やがて、二月革命が始まり帝政は廃止されます。コルチャークは経歴を買われて新政府から国防大臣に使命されますが、革命思想に反発して拒否して、アメリカへ左遷されてしまいます。

>しかし、反革命軍が立ち上がり、コルチャークは密かに帰国してその司令官となります。噂を聞いたアンナは彼のそばにいられれば良いとして、密かに従軍看護婦となります。しかし、戦局は不利で敗北色が濃くなり、撤退の混乱の中で2人は再会しますが、当初は帝政軍側にいたチェコ軍が革命軍側に寝返って敗北は決定的になります。コルチャークは逮捕されますが、アンナは「妻も共に逮捕されるべきだ」と進んで獄中に入ります。コルチャークは銃殺され、アンナはその後も長らく獄中生活を続けます。

戦争シーンは見かけは派手ですが、特撮技術ではかなり日・米作品と比べるとかなり見劣りするだけでなく、全体像が描かれておらず、当時の歴史に精通していないと戦局が理解出来ませんでした。それとロマンス・シーンとの転換が繋がりがなく唐突で、2人の恋の深まりの過程が描かれず、いきなり愛し合ってしまったようで、唯の愛欲による不純愛にしか見えませんでした。しかも、コルチャークの妻は夫がアンナに夢中なのを知しながらさして嫉妬もせず、アンナの夫も妻の不倫を是認しているような妙な夫婦同士でした。

演出もさることながら、主演のコンスタンティン・ハベンスキーという俳優が大ロシアの海軍総督としての威厳やカリスマ性が感じられませんでした。もっとも、映画を見てからWIKIPEDIAで「コルチャーク」を調べたら実物の写真もイメージ的には似ており、現在のロシアのプーチン首相もそういう体型なので、人は見かけによらないのかも知れませんが、どうも貫禄という点で適役とは思えませんでした。

それと、戦局不利で退却するのに恋人にうつつを抜かして指揮をおろそかにしているように見えて、最後まで共感出来ませんでした。

かなりの大作ですが、日本で劇場公開されなかった理由は映画を見て理解出来ました。ただ、ボルシェビーキ(共産革命時の反レーニン派)相手とは言え、反革命勢力の主要人物を悪人としてではなく、一人の使命を全うした軍人として描いていて、一昔前のソ連時代だったら絶対に映画化されなかっただろうと思うと時代の変化を感じました。