劇場未公開<国家の密謀

 (Une Affaire d’Etat・仏・2009)> ★★★★

 

 

現在、シリアではアサド政権軍と反政府軍が際限なく戦闘を続けていますが、双方にそれほど武器製造能力はある筈がなく、陰ながら武器を売ったり供与している勢力があることは明らかです。それが、公然と国家であることもありますが、第三国を通したり、いわゆる“死の商人”を通じて売却されることもあります。アメリカやロシアは紛争を仲介すると同時に、武器を販売して巨利を得ているように思えます。この映画は、そうした表には出ることのない“国家の陰謀”を描いていて、期待以上に内容が濃く、劇場未公開作品としては掘り出し物でした。

 

>アフリカ・コンゴへ向かって武器を積んだ輸送機がミサイルで撃墜されます。コンゴではフラン軍兵7名が反政府組織に捕まり、フランスに身代金を要求して来ており、政府は表面上はこれを拒否しながら、大統領顧問ボルナンが取り仕切る秘密組織を通じてそれに見合って供与した武器を運んでいたものでした。フランスでは大統領選挙が近づいていて、現職大統領は人質解放を選挙に利用しようとしていました。一方、政府内ではマッカール官房長が飛行機撃墜をメディアにリークして、ボルナンの失脚を図ろうとしています。ボルナンは元情報局員フェルナンデスを使ってもみ消し工作を図ります。その頃、パリ市内の駐車場で若い女が殺害され、ボンヌフ警部と部下のアラブ系婦警のシャイードが調査を命じられます。女は高級コールガールで、関連をたぐってゆくとボルナンともマッカールとも深い繋がりのある女性企業家マドが浮かび上がります。捜索が進行するさ中、ボンヌフが殺害され、更にマドが射殺されます。相次ぐ殺人事件の犯人として、シャイードが遂にフェルナンデスを逮捕しますが、マッカールはフェルナンデスがボルナンの指示で奪取に成功した武器密輸関連の資料の引き渡しを条件に、彼の国外逃亡を黙認する司法取引を持ち出します。フェルナンデスが条件を飲んで、極秘資料を引き渡し、茫然とするシャイードを尻目にスイス行きの列車に乗り込もうとした時、マッカールの差し向けた殺し屋に殺されてしまいます。マッカールにすべてを知られたと知ったボルナンは拳銃自殺します。マッカールによって栄転を約束されたシャイードはこれを断り、元の部署に戻ります。

 

一人の婦人警官の活躍から、国家ぐるみの陰謀が明るみに出て、内閣を揺るがすことになるというのは少々出来過ぎたストーリーですが、政府だけの極秘の交渉や取引はわが国でもアラブ・ゲリラからの人質釈放のニュースが報じられると、政府は否定しますが、裏でかなりの取引があったことは十分に推察出来ますし、週刊誌が報じるスキャンダルが火元となって辞職に追い込まれる大臣や政治家が後を絶たないのでかなりリアリティはありました。ただ、この映画では、ボルナンの自殺で終わり、彼に指示した大統領はとかげの尻尾切りで切り抜けたのか、指示責任を取らされたのかははっきりしていないのが難点でした。

 

元情報局員というにしてはそれなりの知性が感じられませんでしたが、フェルナンデスを演じたティエリイ・フレモンという俳優の演技は何とも凄みがあって印象に残りましたが、アラブ系婦警を演じたラシダ・ブラクニって女優自身もアラブ系らしく、細身でエスニックな表情もなかなか魅力がありました。

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