<バオバブの記憶(日・2008)>   ★★★★


こんな映画見ました-バオバブの記憶


フジフィルム本社ホール(南青山)で本橋成一監督のドキュメンタr-映画<バオバブの記憶(102分)>を見ました。バオバブというのは赤道直下の国々に見られる奇妙な形をした巨木ですが、サンテクジュベリの「星の王子さま」に描かれているので名前は広く知られています。舞台はアフリカ・セネガルのトゥーバ・トゥールという農村です。セネガルについては、先年、フランスとの合作でしたが<母たちの村>という非常に優れた作品を見ています。先週、北アフリカのチュニジアから戻ったばかりですが、人種的にはチュニジアは主にアラブ人、セネガルは黒人と違いますが、共にイスラム教が中心で、かつてフランス領だったのでフランス語が第2公用語になっている点では共通しているので興味を持って見ました。


> 首都ダカールから車で2時間のトゥーバ・トゥール村に住む人々は大家族。

> そこには未だ多くのバオバブが、そして昔ながらの素朴な日常があった。

> 村に住む12歳の少年 モードゥ.は30人を越える大家族の一員。

> 農作業や牛追いの手伝いをしながらコーラン学校に通っているが、

> 本当は公立のフランス語学校に行きたいし、大きくなったら村を出たいと

> 思っている。弟や妹たちの面倒を見たり、友達と相撲やサッカーをしたり、

> 時にはバオバブの樹も遊び場になっている。

> バオバブには精霊が宿ると信じている村人たちは、決して切るこごなく、

> ご神木には祈りを捧げる。

> しかし、急速な近代化の波はこの村にも迫ってきていた。

> 100年、500年、1000年と、この大地で沢山の生き物たちと生きてきた

> バオバブが消えて行く。

> この映画は、一人の少年に焦点をあて、その少年と家族の日々の営みを

> 一年を通して撮影し、バオバブと共に生きる人々の暮らしを丁寧に描いた

> ものである。                      (宣伝ちらしより)


 上映前に人間の幸福とは何かというデーマで本橋成一監督、女流作家田口ランディ、ピーター・バラカンによるトーク・ショーがありましたが、幸せは貧富とは関係ないという平凡な内容でしたが、監督の現地でのエピソードは面白い内容でした。


 冒頭にすぐそばを自動車が仕切り無しに走り、バオバブの根っこが放置され、電気・水道の元栓が並ぶ「バオバブが丘」という宅地造成地域が映され、環境破壊の現状が紹介されます。舞台となる村はまだまだ昔ながらののどけさや長老による呪術が残っていますが、いずれ”近代化”されてしまうのは目に見えているようです。映画自体は、橋爪功の静かなナレイションで殊更に環境保護とかエコロジーを訴えていませんが、文明が如何に地球を汚して行くかを感じさせられずにはいませんでした。村の子供たちがボロッ切れを丸めてサッカー遊びをしたり、木登りをして遊ぶ姿は、似たような光景が戦前の日本にも見られたものでした。それを考えると、この村が文明に”汚染”されるのは100年も先のことではないような気がします。特にドラマティックなエピソードがあるわけではなく、平板と言えば平板ですが、村の生活そのものがそういう静かな日々を少なくとも現在は送っているのだと思います。