<チェ 39歳別れの手紙(Che Part 2・西/米/仏・2008)> ★★★☆


こんな映画見ました-Che Part 2


 1928アルゼンチンで生まれ、キューバに渡って現カストロ評議長と共に革命を成功させますが、1866年にボリビアに移り、革命を試みますが翌年、国軍に逮捕、処刑されましたが、今もって”革命の英雄”として伝説的人気を保持しているチェ・ゲバラの生涯がスティーブン・ソダーバーグ監督によって2部作として製作されました。昨年11月に試写会でその第1部<<チェ 28歳の革命>を見ましたが、31日から第2部<チェ 39歳別れの手紙>が公開され、その第1回の上映を早速見て来ました。チェは前作同様、プエルトリコ出身のベニチオ・デル・トロが演じています.


> 1959年にキューバ革命に成功して同国の大臣にも就任すると同時に、革命の英雄として国際的な名声を得ていたチェ・ゲバラ(ベニチオ・デル・トロ)ですが、日ごろ疎遠だった家族と久し振りに会って最後の食事を済ませると、極秘にボリビアへ向います。当時、ボリビアは独裁軍事政権の下で中南米でも極貧国の一つで、主に原住民から成る農民たちは搾取にあえいでいました。

> キューバ革命では僅かな手勢ながら農民の広い協力を得て革命を成功させたゲバラでしたが、ボリビアでは軍の弾圧と”外国人”であるチェへの不信感から彼らの協力が得られず、次第に山中に追い込まれて行きます。そして、1967年11月8日、遂にチェ等は激しい戦闘の後に捕らえられ、その翌日、処刑されてしまいます。享年39歳でした。


 と映画はほぼ史実通りに進んで悲劇的な終幕を迎えます。

 第1部の印象としてこう書きました:


> 作品としては、期待が大き過ぎたせいかちょっとがっかりしました。チェがカストロと知り合い、キューバ革命を成功させるまでをドキュメンタリー・タッチで描いており、ゲリラ戦や市街戦もVFXを多用せず、リアルに迫力をもって描かれていました。しかし、チェが中心とは言え、それがあくまでも群像劇として描かれていて(カストロすら登場人物の1人となっています)、彼自身の悩みや決意、惑い等の心情が余り描かれていなかったからです。演じるベニチオ・デル・トロは今年度のカンヌ映画が最優秀男優賞を獲得していますが、第1部だけを見る限りではちょっと疑問を感じました。多分、2部作と合わせて見ればそれなりの演技をしているのだろうと思いますが、少なくともこの第1部だけでは、キューバ革命の推移を描いただけのように思いました。


残念ながら、第2部でもボリビア革命の失敗の経過を描いただけで、チェの焦燥感や挫折感は描き切られていませんでした。随所に理想主義者としてのチェの思考がセリフや行動で描かれていて、彼の人間性は良く表現されています。しかし、国に圧迫されて苦しむ農民を救い出して協力を求めますが背を向けられてから、チェはこれと言った思い切った作戦を指示することなく、同志達と山中を移動するだけのように見えました。着のみ着のままで山中をさまよっているので当然ですが、全員が髭ぼうぼうで同じような服装をしているので識別も困難で、その中にチェも埋没してしまったように見えました。その上、本作ではチェが持病である喘息に苛まれるシーンが何度か出て来て、コマンダンテ(司令官)としてのチェが余計心細く見えました。キューバ革命が成功したのは、やはりカストロという偉大な現実主義者がいて、その足りないところをチェがうまく補完しからであって、その直後ん、カストロと離れてからのコンゴやボリビアでの彼の挫折は、やはり、彼がドン・キホーテ的に余りに理想を追い過ぎて現実を見据える視力に欠けていたのかなと思いました。


 彼の語録に ”In a revolution, one wins or dies, if it is a real one." というのがありますが、現代は”勝つか負けるか、どっちかだ”と割り切るには余りに複雑化してしまったっようです。それにも関わらず、チェが今もって世界的人気を保っているのは、単なる判官贔屓ではなく、やはり”理想”の余りにも欠如した現代に、人々は”理想を持つこと”に憧れを抱いているからでしょう。


 チェを演じるベニチオの演技は決して悪くはありません。完全に当人になりきっていたと思います。それにも関わらず、作品としていま一感動を得られなかったのは、史実を忠実に再現することに心を奪われて、チェの心情を吐露するシーンやセリフの乏しかった脚本や演出によるのではないかと思いました。