今のところドラマ版に軍配。映画「64(ロクヨン)前編」 | 忍之閻魔帳

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<横山秀夫の最高傑作が映画化>

「半落ち」「クライマーズ・ハイ」「臨場」など
数多くの傑作ミステリーを手掛ける作家・横山秀夫作品の中でも
最高傑作との呼び声が高い「64 ロクヨン」が
昨年4月放送のNHKドラマ版に続いて映画化。
時効成立まであと1年に迫った少女誘拐殺人事件、通称”ロクヨン”を巡り
様々な思惑が交錯する県警内部の駆け引きを描きつつ
担当刑事(現在は警務課所属)を始め
当時の捜査チームの面々の現在に迫るミステリー・サスペンス。
横山作品ならではの人間ドラマも従来の作品以上に濃く、前後編の二部作構成となった。
出演は佐藤浩市、綾野剛、榮倉奈々、夏川結衣、瑛太、坂口健太郎、
窪田正孝、永瀬正敏、緒形直人、仲村トオル、吉岡秀隆、滝藤賢一、三浦友和など。
監督は「感染列島」「ストレイヤーズ・クロニクル」の瀬々敬久。
今作はミステリーなので、ネタバレにならないようストーリーには極力触れず
ドラマ版との比較をメインに紹介してみたい。



<NHKドラマ版と映画版>

瀬々監督は非常に地雷率の高い監督として私の中では刻み込まれていたのだが
今作はドラマ版の出来の良さに救われてかなかなかの仕上がり。
なぜ原作だけでなくドラマ版なのかというと、
ピエール瀧が主人公を演じたNHKドラマ版は全5話、約5時間。
映画版は二部構成なので約4時間あり、ボリューム的にそれほど差がない。
原作の特徴である主人公の独白が削られていたり、
エピソードの取捨選択がドラマ版と良く似ていて
原作よりもドラマ版を参考にして作ったのでは?と思われる箇所が多い。
そのため、出来は悪くないにも関わらずどうも腑に落ちないのである。

【紹介記事】もうひとりの梅澤梨花は稀代の悪女だった。映画「紙の月」

NHKで放送されたドラマが別スタッフの手によって映画化された例で言えば
主人公のキャラクターやエンディングで大胆なアレンジがされた「紙の月」や
映画的なダイナミズムをより重視した「クライマーズ・ハイ」に比べ
本作は映画版ならではのオリジナリティが決定的に欠けている。
強いていえば『より集客力の強いキャストを揃えた』ぐらいだろうか。
(*あくまでも集客力の話であって、実力ではない)

以下は主要人物のキャスト比較である。



<主人公とその家族>
三上義信(ドラマ版)ピエール瀧/(映画版)佐藤浩市
三上美那子(ドラマ版)木村佳乃/(映画版)夏川結衣
三上あゆみ(ドラマ版)入山杏奈/(映画版)芳根京子

<広報室>
諏訪尚人(ドラマ版)新井浩文/(映画版)綾野剛
蔵前高彦(ドラマ版)永岡卓也/(映画版)金井勇太
美雲志織(ドラマ版)山本美月/(映画版)榮倉奈々

<記者クラブ>
秋川修次(ドラマ版)永山絢斗/(映画版)瑛太

<「64」自宅班>
漆原悟士(ドラマ版)きたろう/(映画版)菅田俊
柿沼丈治(ドラマ版)高橋和也/(映画版)筒井道隆
望月晴一(ドラマ版)村上淳/(映画版)赤井英和
幸田一樹(ドラマ版)萩原聖人/(映画版)吉岡秀隆
日吉浩一郎(ドラマ版)水澤紳吾/(映画版)窪田正孝
村串みずき(ドラマ版)中村優子/(映画版)鶴田真由

<刑事部>
荒木田利也(ドラマ版)中原丈雄/(映画版)奥田瑛二
松岡勝俊(ドラマ版)柴田恭兵/(映画版)三浦友和

<本部長>
辻内欣司(ドラマ版)古今亭菊之丞/(映画版)椎名桔平

<警務部>
赤間光良(ドラマ版)平岳大/(映画版)滝藤賢一
二渡真治(ドラマ版)吉田栄作/(映画版)仲村トオル

<「64」事件被害者>
雨宮芳男(ドラマ版)段田安則/(映画版)永瀬正敏

<「64」事件を模倣した誘拐事件の被害者>
目崎正人(ドラマ版)尾美としのり/(映画版)緒形直人



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<映画版を見ると際立つドラマ版の凄さ>

ドラマ版を見て、同系統でより知名度の高い俳優を
キャスティングしたように思えるのは私だけだろうか。
特に酷いのが、ドラマ版で永山絢斗が演じていた秋川役で、
映画版では実兄の瑛太が務めている。
役者としての知名度は確かに兄のほうが上だが、
それでもこのキャスティングはあんまりだと思う。
「失楽園」の映画版:役所広司、ドラマ版:古谷一行どころの騒ぎではない。

他にも諏訪役が新井浩文から綾野剛になり、寡黙な日吉役を窪田正孝が演じ、
記者クラブに坂口健太郎を追加投入と、イケメン俳優の大増員で
若い女性層も取り込もうとしたのだろうが
結果的にどこを向いても色の付き過ぎた俳優ばかりになり
ドラマ版が持っていた「もしかすると私達の住んでいる町の警察署内も
こんなものかも知れない」と思わせるリアリティが失われてしまった。
朴訥としたピエールの人情味、一見温厚なきたろうがふと見せる恐ろしさ、
男所帯で自らの責務を全うせんとする山本美月、
ドラマ版であちこちに起こっていた、イメージを裏切る配役の妙が
映画版では全く見られない。

署内の様子、各登場人物の家庭、風景、
そして何より物語の舞台となる昭和64年へのこだわりもNHK版が格段に上。
ドラマ版は全5話に3ヶ月もの撮影期間を費やしたそうで、
これだけ恵まれた環境での制作が許されたのは
「クライマーズ・ハイ」「ハゲタカ」「その街のこども」「あまちゃん」など
数々のヒットドラマを手掛けてきた井上剛が演出を務めているからだろう。
瀬々監督は「ストレイヤーズ・クロニクル」で
「X-MEN」をトレースした前科があるだけに、
本作でも「またやったのか」という疑いが捨て切れない。
冒頭で「出来は良いが腑に落ちない」と書いたのはそのためだ。



<映画版が犯した決定的なミス>

映画版では「64」という作品の肝になっている
『声』について、決定的なミスを犯している。
冒頭に誘拐犯から電話がかかってきた際、
あろうことか犯人の声を堂々とスクリーンで流してしまうのである。
ネタバレになってしまうので詳しくは書かないが
「64」の中で犯人の声を聞いたのは
誘拐された少女の父親・雨宮芳男ただ一人である。
捜査チームのあるミスのため警察関係者は犯人の肉声を聞くことが出来ず、
この決定的なミスによって事件は間もなく時効を迎えようとしている。
雨宮の耳にこびりつき今も離れないあの声。
忘れてなるものかとの想いが執念と化し、後半へと繋がってゆく。
声の主=犯人なのに、映画版はご丁寧にも主要登場人物全員が写ったポスターに
「犯人はまだ昭和にいる」とコピーをつけてしまった。
即座にピンと来なかったとしても、事件の発生した年代と声の性別だけで
ほとんどの人は「こいつか」と確定してしまうだろう。
制作陣は一体何を考えているのか。
ちなみにドラマ版は最後の最後まで声を聞かせない。
だからこそ、視聴者は初めて聞くその声に戦慄するのである。

もう一点。
主人公である三上の家で発生する娘の失踪について。
映画では反抗期の娘が父親憎しで出ていったかのように
誤解させる描き方をされているが
娘は醜形恐怖症(身体醜形障害)であり
そのことを理解してくれない父親に絶望して家を出ていくのである。
単なる家出とは次元の違う話なので、ここも補足しておきたい。
ここを理解しておかないと、父親が何故必要以上に自分を責めているのか、
母親が仕事を辞めてまで四六時中受話器を離さないのか
ピンと来ない方も多いことと思う。



<三上という男>

三上を演じる佐藤浩市はピエール瀧に比べてかなり攻撃的。
ピエール演じる三上は不器用な人情家で、
佐藤演じる三上は恫喝で相手をやり込める典型的な刑事になっている。
反抗していた記者クラブや頑だった雨宮が三上に心を開くのは
偏に三上の人柄の成せる業だったはずが
映画ではバリバリ行動する三上が周囲の反対を力で押し切り
土足で踏み込んでいって真相に迫るような展開になっている。
好みの問題ではあるが、私はやはりドラマ版の三上のほうが親しみを持てる。



<映画ならではのショーアップをどう受け取るか>

ドラマ版で大友良英が担当していた劇伴は地味ながら
常に薄気味悪さが漂う名曲揃いだったが、
映画版は感情増幅装置としては非常に優秀な曲になっている。
小田和正の主題歌も含め、映画版は隅から隅まで「THE・商業映画」であり
ミステリーとしての面白さ、物語の柱とも言える人間ドラマの部分は
残念ながら二の次になっている気がする。
物語よりも前に俳優が出過ぎていることをどう捉えるか。
ヒットの法則を守った予定調和の良作で充分ならばお薦め。
「64」という作品を深く理解したいならドラマ版がお薦め。

映画「64(ロクヨン)」は5月7日より公開。