撃つほどに心も死ぬ。映画「アメリカン・スナイパー」 | 忍之閻魔帳

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映画 アメリカン・スナイパー ブラッドリークーパー


▼撃つほどに心も死ぬ。映画「アメリカン・スナイパー」

84歳となった現在もハイペースで新作を撮り続け
しかもそのほとんどが向こう数十年は愛されようという名作揃い。
とくにここ10年間のクオリティの高さは異常と言っていいだろう。

2004年「ミリオンダラー・ベイビー」
2006年「父親たちの星条旗」
2006年「硫黄島からの手紙」
2008年「チェンジリング」
2008年「グラン・トリノ」
2009年「インビクタス/負けざる者たち」
2010年「ヒア アフター」
2011年「J・エドガー」
2014年「ジャージー・ボーイズ」
2015年「アメリカン・スナイパー」

そんなハリウッドが世界に誇る至宝クリント・イーストウッド監督の最新作は、
米海軍のエリート部隊ネイビー・シールズの一員としてイラク戦線で活躍し
実に160人以上を射殺した伝説の狙撃手クリス・カイルの伝記ドラマ。
クリス・カイル自身が書いた回顧録「ネイビー・シールズ 最強の狙撃手」に
感銘を受けたブラッドリー・クーパーが映画化を思い立ち権利を獲得。
主演だけでなく製作にも名を連ねるほどの熱の入れようで
体重が100kgを超えていたクリスになりきるべく18kgも増量し
一瞬誰か分からないほどの変貌を遂げて本作に臨んでいる。
共演は現在公開中の「フォックスキャッチャー」にも出演しているシエナ・ミラー。



気が早いのを承知で書くと、本作は当BLOGが毎年やっている
「これだけは観ておきたい、20●●年度公開映画総まとめ」の
2015年版で間違いなく上位に入ってくるだろう。
いや、もしかすると超える作品は出て来ないかも知れない。
これを劇場で観ずにどうするのだと声を大にして言いたい。

2001年のアメリカ同時多発テロをテレビで見ていた
ひとりの青年クリス・カイルが、脅威に晒されたアメリカを守るために
ネイビー・シールズの一員となり、一流の狙撃手として活躍する様子を描いた本作は
クリスの功績を誉め称える、単なるアメリカ万歳映画ではない。
合計で4度もイラクに渡り、狙撃によるイラク人の死者総数255人のうちの
6割にもおよぶ160人を手にかけたクリスは
仲間内から”レジェンド”と賞賛され、国内で英雄視される一方で、
愛する妻や子供と暮らす平凡な毎日を完全に失ってしまう。
銃弾が標的を撃ち抜くごとに、その反動としてクリス自身の心が少しずつ蝕まれてゆく。
「殺せば殺すほど名声を得る」ことへの違和感が
やがて巨大な火柱となってクリスを丸ごと包み込んでしまうのだ。
911以降、アメリカ全土で大変な患者数になっていると聞くPTSD問題は
英雄と呼ばれる男でさえも例外ではなかったのである。


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イーストウッドの描く戦争映画には、常に『やるせなさ』が漂っている。
アメリカ側に立ってイラク戦争を正当化しているわけでもなければ
声高に戦争反対を訴えかけているわけでもない。
こちらに正義があるのなら、向こうには向こうの正義もあるのだろう。
力を力で押し返したところで、相手に遺恨を残すだけで何も解決しない。
テレビでニュースを見るだけの私達は刻々と変化する戦況に一喜一憂するが、
最前線では若い命が次々に失われている。
そのことがたまらなく辛いと、そう呟いているように見える。
「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」の2作も
ひとつの出来事をアメリカ側、日本側から描くことで
どちらの言い分にも耳を傾け、結論はやはり『やるせない』だった。
「父親たちの星条旗」でも、戦争の資金集めのため広告塔に祭り上げられた兵士達が、
豪華なケーキのイチゴソースに血を想起するシーンがあった。
イーストウッドの戦争観は、あの頃から(良い意味で)変わっていない。


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妻に先立たれた孤独な老人と、隣家に越してきた少年が心を通い合わせる
傑作「グラン・トリノ」でも、イーストウッド本人が演じるウォルトは
かつて戦地で13人のアジア人を殺した過去を悔いていた。
少年に勲章を見せながら、今も癒えることのない傷を抱えて余生を送るウォルトは
贖罪としてあのエンディングを選択するわけだが
もし「アメリカン・スナイパー」のクリスがあと数十年生きていたなら
PTSDを克服したとしてもウォルトのような年寄りになってたかも知れない。
狙ってやったかどうかはさておき、「父親たちの星条旗」「グラン・トリノ」
そしてこの「アメリカン・スナイパー」はイーストウッドの戦争三部作と言える。

「生きていたなら」と書いたことからお察しの通り、
クリス・カイルは2013年2月2日、38歳の若さでこの世を去った。
退役して間もなく、PTSDに悩む帰還兵のためのNPO団体を設立したが
その活動の最中にPTSDを患った元海兵隊員に射殺されたのだ。
映画化が決定した当初、まだクリスは存命中でブラットリー・クーパーも会っていたが
このあまりにも皮肉な出来事によって映画も結末を変更せざるを得なくなった。

狂信的な愛国主義者でも殺戮マシーンでもない、
愛する者を守りたかった若者を蝕む戦争という劇薬。
安全圏に身を置きながら、支持率を横目で気にしつつ
勇ましいことを言うだけの政治家は全員観る義務があるし、
そう遠くない将来、無関係ではいられなくなりそうな私達日本人も
『戦争とは、人が人を殺すことなのだ』と今一度心に刻むためにも
是非この作品を観て、様々なことを感じ取って欲しい。
音楽の流れない沈黙のエンドロールに、貴方は何を感じるだろうか。

映画「アメリカン・スナイパー」は本日2月21日より公開。




02月20日配信■Kindle:「アメリカン・スナイパー」
発売中■BOOK:「アメリカン・スナイパー」

映画公開に合わせて20日よりKindle版も配信開始。



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