ドラマ重視もスケールダウンは否めず。映画「クローズEXPLODE」 | 忍之閻魔帳

忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)



▼ドラマ重視もスケールダウンは否めず。映画「クローズEXPLODE」

その昔、セイントフォー(と書いて分かる人がいるのか)主演の
「ザ・オーディション」や、近藤真彦&中森明菜の「愛・旅立ち」などを
プロデュースした山本又一朗が三池崇史監督を指名し、
山本氏が代表を務めるトライストーン・エンタテイメントの
看板俳優・小栗旬を主演にして製作されたのが「クローズZERO」。
山田孝之、桐谷健太、高岡蒼甫ら人気の若手を大量に起用した
「クローズZERO」は累計興収25億円の大ヒットとなり、
2009年には綾野剛、三浦春馬、金子ノブユキらを加えた続編も公開された。
ちなみに今夏公開の実写版「ルパン三世」も山本氏のプロデュース作品である。

あれから5年。
鈴蘭高校のてっぺんを目指す若者達の物語がスクリーンに戻ってくる。
主演を務めるのは「桐島、部活やめるってよ」で華々しいデビューを飾り、
NHK朝ドラ「ごちそうさん」で大ブレイク中の東出昌大。
今年12月には「ソラニン」の三木孝浩監督の「アオハライド」も控えている。

共演は、柳楽優弥、永山絢斗、勝地涼、早乙女太一、高岡早紀、板尾創路。
三代目 J Soul Brothersから単独の写真集も出るほど人気の岩田剛典、ELLYも参戦。
前シリーズからの続投組は高橋努、やべきょうすけ、深水元基。
監督は「青い春」「ナインソウルズ」の豊田利晃。
2005年の「空中庭園」公開直前に覚せい剤取締法違反で逮捕され
ここ最近は停滞期が続いていたが、東宝配給作品で大舞台へ進出する。



鈴蘭のてっぺんを目指す若者達がひたすら殴り合う「クローズZERO」は
シンプルなストーリーが三池監督らしいサービス精神とマッチした快作だった。
「クローズZERO」2作が公開された2007年~2009年は「花より男子」
「花ざかりの君たちへ イケメン♂パラダイス」「メイちゃんの執事」など
イケメン俳優によるグラビアドラマ全盛の時代であり
ワルメンブームを巻き起こした主な要因が
ドラマ性よりもイケメン揃いのキャスティングであったことは間違いない。

5年間の空白を経て復活した「クローズ」は「EXPLODE」(爆発)と付けられている。
確かに、主人公の鏑木旋風雄が感情を爆発させるまでの物語ではあるのだが
そこに至る過程に力点を置いた群像劇になっていることが
青臭さ、カッコ良さ、痛快さを重視した三池テイストからの大きな変化。
登場人物ひとりひとりの背負うドラマへとスポットを当てた豊田テイストは
「青い春」を手掛けていた頃の勢いを思わせて懐かしくも嬉しい。
三池版が「戦国BASARA」なら、豊田版は「戦国無双」ぐらいのノリ・・・
うーむ、我ながら妥当かどうか悩む例えだったか。

やさぐれた理由の大半が家庭環境に起因しているのは
脚本的に安易過ぎるかとも思うが、柳楽優弥、永山絢斗、勝地涼ら
芝居の達者な若手俳優がドラマ部分を背負っているおかげで
「こいつらにはこいつらなりの言い分があるんだな」程度には理解ができる。
早乙女太一の場合は、DVだ何だとプライベートがダーティ過ぎて
素に見えてしまうのが困りモノだったが。

長身を活かしたダイナミックな動きの東出昌大、
一撃に重みのある柳楽優弥、猫のようにすばしっこい勝地涼、
カリミソリのように切れのある早乙女太一と
ファイトスタイルでもキャラクターを描き分けているのはお見事。

娯楽性で言えば、笑いも友情もてんこ盛りのサービス精神旺盛な三池版に軍配。
リアル・クローズな生活を現在進行形で送っている若者や
かつてそこを通り抜けてきた元ヤンなら豊田版に軍配か。

映画「クローズEXPLODE」は明日4月12日より公開。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:クローズEXPLODE
    配給:東宝
   公開日:2014年4月12日
    監督:豊田利晃
   出演者:東出昌大、柳楽優弥、勝地涼、他
 公式サイト:http://www.crows-movie.jp
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



発売中■Blu-ray:「クローズZERO スペシャル・プライス」
発売中■Blu-ray:「クローズZEROII スペシャル・プライス」

【紹介記事】最凶の続編。映画「クローズZERO II」

人気コミック「クローズ」をベースに
オリジナルストーリーで実写映画化した「クローズZERO」第2弾。
主人公の滝谷源治に小栗旬、宿命のライバル芹沢には山田孝之、
共演は、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの金子ノブアキ、綾野剛、三浦春馬や
やべきょうすけ、高橋努、深水元基、高岡蒼甫、桐谷健太、上地雄輔、黒木メイサなど。

難しいことを考えず、とにかく殴って殴って殴りまくれという
初代のシンプルさを残しつつ、鈴蘭のてっぺんに立った源治の
内面にもスポットを当てているのが見どころ。
宿敵の芹沢を打ち倒したにも関わらず、下級生達を束ねる統率力に欠け、
トップを失った芹沢グループもまた源治に従う気配はない。
勝ち上がればそれで良いと思っていた源治が直面するのは
「力だけで人の心までは掌握出来ない」という当たり前の現実。
力任せでは駄目だと悟った源治が、心を使って少しずつ仲間を増やしていき、
やがて大群を従えていく姿は、戦国武将の成長を見るかのよう。
後半に繰り広げられる「鈴蘭vs鳳仙」のシーンはまさに合戦そのもの。
前作で敵対していた山田孝之は本作では小栗旬を支えるNo.2へと格下げされているが
出番は減りつつも先代トップとしての存在感はむしろ前作以上で、
人間的に一回り成長した芹沢を見せてくれる。
とくに、後半のとあるシーンは鳥肌モノ。
敵対する鳳仙側がかなりぞんざいな扱いを受けていることや
どう見てもフィルムの無駄にしか思えない黒木メイサの
へなちょこダンス&歌唱シーンなど残念な点もあるにはあるが
原作未読の私からすれば、「クローズZERO」の続編としては充分良作。