▼これこそ日本で作って欲しかった。映画「47 RONIN」
最近「ズレた日本観」を味付けにしたハリウッド作品が増えている。
来年1月にBlu-rayが発売される「ウルヴァリン：SAMURAI」も
何とも言えない珍味だったが、今週末より公開の「47 RONIN」は
その中でも極めつけの1本だ。
赤穂浪士の討ち入りをモチーフに、四十七士の中でも謎の多い47番目の浪士を
天狗に育てられた外人にしようというわけである。
しかも、「DOA デッド・オア・アライブ」クラスのB級映画ではなく
主演は「マトリックス」シリーズのキアヌ・リーブスときた。
共演は真田広之、浅野忠信、柴咲コウ、菊池凛子、赤西仁、田中泯。
監督は、本作がデビュー作となるカール・リンシュ。
キアヌ・リーブスを除いて、日本語吹き替え音声を
日本人キャストがそのまま担当している点でも話題。
開始からいきなり「モンハン」かと思う戦闘シーンが展開し
このトンデモオープニングの洗礼を受けたことで私の腹は決まった。
本作は角川映画全盛期を体験している私には懐かしい
『歴史改変し過ぎアクション大作』の血を受け継いだ作品であり
史実からの改変ぶりを真正面から突っ込むのは無粋というものだ。
『歴史改変し過ぎアクション大作』の花形スターであった
真田広之が大石内蔵助を演じているのは、オマージュと取れなくもない。
一応キャストと大まかな設定をまとめておく。
・魁（カイ）：キアヌ・リーヴス
（天狗に育てられ、浅野に忠誠を誓う浪人）
・大石内蔵助：真田広之
（浅野の仇討ちを果たさんと四十七士を束ねる）
・大石主税：赤西仁
（大石の息子、弓の名手）
・浅野内匠頭：田中泯
（妖しの術にかかり吉良に斬り付け、綱吉より切腹を命じられる）
ミカ：柴咲コウ
（浅野の娘。魁とは幼馴染みで互いに恋心を抱いている）
徳川綱吉：ケイリー＝ヒロユキ・タガワ
（江戸幕府の第五代将軍、浅野に即日切腹を命じる）
吉良上野介：浅野忠信
（妖しのミヅキと手を組み天下を手中に収めんと画策する）
ミヅキ：菊地凛子
（蜘蛛から竜まで自在に姿を変えられる妖しの牝狐）
赤穂浪士の多くが赤毛の魁（カイ）を
獣以下の存在と見下しているにも関わらず、カイは懸命に尽くし続ける。
モンハンバトルで敵を討ち取った手柄など自分のものでなくても良い。
主君のためなら命すら厭わず、名誉も欲しがらず
世間には決して知られてはならない浅野の娘ミカとの禁断の恋に身を焦がす。
魁（カイ）のキャラクター像は、まるで名作童話のヒロインそのものである。
物語は武器の調達、数々の試練、仲間との和解、そしてボス戦へと
王道ファンタジーRPGや「ロード・オブ・ザ・リング」の如き展開で進んでいく。
なるほど、赤西演じる大石主税が弓の名手なのは
レゴラス的（オーランド・ブルーム）な役回りというわけか。
・・・その割に出番は少ないが。
ここ日本でも、今や忠臣蔵は様々なアレンジが施されて
ドラマ化や映画化がされているので本作だけが特別なわけではないが
四十七士が決起する理由が、菊池凛子の化けた蜘蛛の毒に操られた浅野が
吉良の寝込みを襲い、切腹させられたというのは何とも言えない脱力感がある。
なら吉良邸に討ち入るのではなく菊池凛子を討てば良いだけでは、
などと突っ込むのは御法度か。
討ち入りのシーンすら存在しない本作は吉良邸への侵入方法として
雑技団に扮装して屋敷内に潜り込む手段をとっている。
このシーンは「里見八犬伝」での犬坂毛野（志穂美悦子）を彷彿させて
なかなか愉快だった。
「里見八犬伝」に照らし合わせるなら、ミヅキは玉梓（夏木マリ）だろうか。
いや、そこまでの大悪党には見えないので
中ボスの船虫（ヨネヤマママコ）あたりか。
菊池凛子演じるミヅキがいつ吉良と出会い、屋敷内に住み着いて
天下を穫らせようとしているのか。
怨みが根底にあることは分かるのだが、いずれにせよ動機付けが弱い。
ミヅキのキャラ設定をもう少し作り込んでいれば玉梓クラスのボスにもなり得たろうし
対立の構図もはっきりして、より単純明快なアクション大作になったように思う。
吉良もミヅキもただの小悪党にしか見えないことが、本作の最大の欠点だろう。
3Dもそれほど大した効果は生んでいない（2Dで充分）し
特撮技術もハリウッドならではと言えるほどでもない。
予算がいくらだったのかは知らないが、このぐらいなら日本でも充分作れたはず。
三池崇史あたりを監督に引っ張ってきて、日本のスタッフで作って欲しかった。
映画「47 RONIN」は12月6日より公開。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル：47 RONIN
配給：東宝東和
公開日：2013年12月6日
監督：カール・リンシュ
出演者：キアヌ・リーブス、真田広之、浅野忠信、菊池凛子、他
公式サイト：http://47ronin.jp
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
発売中■DVD：「里見八犬伝 デジタル・リマスター版」
日本を代表するファンタジー活劇と言えばやはりこちら。
発売中■DVD：「魔界転生」
発売中■DVD：「戦国自衛隊 デジタル・リマスター版」
発売中■DVD：「竹取物語」
この辺りも懐かしい。
「魔界転生」も「戦国自衛隊」もリメイク版ではなく旧バージョンがお薦め。
01月08日発売■Blu-ray+DVD：「ウルヴァリン：SAMURAI」
01月08日発売■Blu-ray：「ウルヴァリン：SAMURAI 4枚組コレクターズ・エディション」
ここにも真田広之が。
渡辺謙のようにハリウッドスターと肩を並べるのではなく
サニー千葉のような「外人から観た日本人」の受け皿になっている気がするのは
やはりジャックの系譜だからなのか。
▼今週発売の新作ダイジェスト
12月03日発売■Blu-ray：「きっと、うまくいく」
12月04日発売■Blu-ray：「クロニクル」
12月04日発売■Blu-ray：「箱入り息子の恋 ファーストラブ・エディション」
12月04日発売■Blu-ray：「もののけ姫」
12月05日発売■Blu-ray：「グランド・マスター」
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