▼第84回 アカデミー賞が発表、作品賞は「アーティスト」
年々権威が落ちていると言われながらも、やはり映画好きとしては
毎年この時期になるとオスカー像の行方を気にしてしまう。
本日、第84回アカデミー賞の結果が発表された。
ノミネート作品が発表された時から
スコセッシ、スピルバーグも善戦するだろうが
作品賞と監督賞は「アーティスト」で決まりだろうという声が
圧倒多数を占めていたので、下馬評通りの結果に落ち着いたという印象。
私的に「ベンジャミン・バトン」の再来になるのではと思っていた
「ヒューゴの不思議な発明」は、最多ノミネートながら
主要6部門全てで受賞を逃してしまった。
ただ、部門賞では合計5部門を制覇し、一応今年の最多受賞作品ではある。
日本公開日を発表直後の3月1日に設定していたので、
関係者の期待も相当大きかったはずだが、こればかりは仕方ない。
受賞結果は以下の通り。
作品賞
(c) La Petite Reine Studio 37 La Classe Americaine JD Prod France 3 Cinema Jouror Productions uFilm
「戦火の馬」
★「アーティスト」
「マネーボール」
「ファミリー・ツリー」
「ツリー・オブ・ライフ」
「ミッドナイト・イン・パリ」
「ヘルプ 心がつなぐストーリー」
「ヒューゴの不思議な発明」
「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
監督賞
★ミシェル・アザナヴィシウス 「アーティスト」
アレクサンダー・ペイン 「ファミリー・ツリー」
マーティン・スコセッシ 「ヒューゴの不思議な発明」
ウディ・アレン 「ミッドナイト・イン・パリ」
テレンス・マリック 「ツリー・オブ・ライフ」
主演男優賞
デミアン・ビチル 「明日を継ぐために」
ジョージ・クルーニー 「ファミリー・ツリー」
★ジャン・デュジャルダン「アーティスト」
ゲイリー・オールドマン「裏切りのサーカス」
ブラッド・ピット 「マネーボール」
作品賞・監督賞・主演男優賞という、賞レースの花形3部門を制覇し
事実上は今年の顔となったのが「アーティスト」。
1920年代後半、サイレント映画全盛のハリウッドを再現したフランス映画。
サイレント映画のフォーマットを現代に蘇らせ
懐古派だけでなく若い映画ファンからも高い支持を受けている。
日本公開は4月7日。
昨年の「英国王のスピーチ」同様、受賞効果で10億円突破なるか。
主演女優賞
(c) 2011 Pathe Productions Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute
グレン・クローズ 「アルバート・ノッブス」
ヴィオラ・デイヴィス 「ヘルプ 心がつなぐストーリー」
ルーニー・マーラ 「ドラゴン・タトゥーの女」
★メリル・ストリープ 「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」
ミシェル・ウィリアムズ「マリリン 7日間の恋」
主演女優賞は、オスカー史上最多のノミネート回数記録（17回）を持つ
メリル・ストリープが「クレイマー・クレイマー」（1979年）
「ソフィーの選択」（1982年）に続き、3度目の栄冠を手に入れた。
「プラダを着た悪魔」（2006年）「ダウト」（2008年）
「ジュリー＆ジュリア」（2009年）と、ここ数年は怒濤の勢いで名演を連発し、
その都度主演女優賞候補にノミネートされてきたので
脂の乗り切った今、本作での受賞は当然と言えば当然か。
2009年の「ジュリー＆ジュリア」でも、まるで本人かと見紛うほどの
憑依芝居を見せてくれたメリル・ストリープが本作で挑んだのは
「鉄の女」の異名を持つマーガレット・サッチャー。
日本公開は3月16日と「アーティスト」よりも早く受賞効果は高そうだ。
助演男優賞
（C）2010 Beginners Movie, LLC. All Rights Reserved.
ケネス・ブラナー 「マリリン 7日間の恋」
ジョナ・ヒル 「マネーボール」
ニック・ノルティ 「Warrior」
★クリストファー・プラマー 「人生はビギナーズ」
マックス・フォン・シドー 「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
助演男優賞は、実力派で知られながら
「終着駅 トルストイ最後の旅」（2009）でオスカー初ノミネートとなった
クリストファー・プラマーがついに受賞。
82歳での受賞はオスカー史上最高齢とか。
現在公開中の「ドラゴン・タトゥーの女」でもヘンリック役で出演中。
受賞作品となった「人生はビギナーズ」は、紹介しようと思ったまま
タイミングを逃していたので後ほど別項にて。
助演女優賞
（ｃ）2011 DreamWorks II Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
ベレニス・ベジョ 「アーティスト」
ジェシカ・チャステイン 「ヘルプ 心がつなぐストーリー」
メリッサ・マッカーシー 「ブライズメイズ（原題）」
ジャネット・マクティア 「アルバート・ノッブス」
★オクタヴィア・スペンサー「ヘルプ 心がつなぐストーリー」
助演女優賞は、「ヘルプ」からオクタヴィア・スペンサーが獲得。
出演者のアンサンブルで高い評価を受けた作品だが
主演候補のヴィオラ・デイヴィスが逃した雪辱をオクタヴィアが晴らした形だ。
1960年代、黒人差別が色濃いアメリカ南部を舞台ににしたヒューマンドラマ。
その他の賞
オリジナル脚本賞：「ミッドナイト・イン・パリ」
脚色賞：「ファミリー・ツリー」
撮影賞：「ヒューゴの不思議な発明」
作曲賞：「アーティスト」
美術賞：「ヒューゴの不思議な発明」
衣装デザイン賞：「アーティスト」
メイクアップ賞：「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」
視覚効果賞：「ヒューゴの不思議な発明」
音響編集賞：「ヒューゴの不思議な発明」
音響調整賞：「ヒューゴの不思議な発明」
歌曲賞：「Man or Muppet（ザ・マペッツ）」
外国映画賞：「別離」（イラン）
長編ドキュメンタリー賞：「Undefeated」
短編ドキュメンタリー賞：「Saving Face」
長編アニメーション賞：「ランゴ」
短編アニメーション賞：「The Fantastic Flying Books of Mr. Morris Lessmore」
短編実写賞：「The Shore」
▼オスカーノミネート作品の日本公開情報まとめ
ノミネート作品、受賞作品がいつ公開されるのか
気になっている方も多いと思うので以下に整理してみた。
公開中「ドラゴン・タトゥーの女」
公開中「人生はビギナーズ」
公開中「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
3月01日公開「ヒューゴの不思議な発明」
3月02日公開「戦火の馬」
3月16日公開「マーガレット・サッチャー」
3月24日公開「マリリン 7日間の恋」
3月31日公開「ヘルプ 心がつなぐストーリー」
4月07日公開「アーティスト」
4月21日公開「裏切りのサーカス」
5月18日公開「ファミリー・ツリー」
5月26日公開「ミッドナイト・イン・パリ」
公開終了「マネーボール」
割り切れない想い。映画「人生はビギナーズ」
（C）2010 Beginners Movie, LLC. All Rights Reserved.
クリストファー・プラマーが助演男優賞を獲得した「人生はビギナーズ」は
「ゴーストライター」のユアン・マクレガー主演のヒューマン・ドラマ。
アートディレクターとして働くオリヴァーの父ハルが
44年間連れ添った妻を亡くし、自身の末期癌が発覚したのをきっかけに
ゲイをカミングアウトする。若々しいファッションに身を包み、
若い彼氏を作って第二の人生を謳歌し始めるハルだが
母との夫婦生活が全て偽りだったのかと思えてしまうオリヴァーの心境は複雑だった。
唯一の理解者であるハルがこの世を去り、心を閉ざしかけたオリヴァーの前に
ひとりの女性が現れる。
定年をとうに過ぎ、母親を見送った75歳の父親から
ある日突然ゲイをカミングアウトされたら。
何とも映画らしいストーリーではあるが、
実はマイク・ミルズ監督の実体験がベースになっている。
両親の愛情を疑えば、二人の愛の結晶としてこの世に生を受けたはずの
自分の存在意義も疑わしく思えてくる。
父を失った今、話相手は犬のアーサーだけ。
うるんだ瞳でオリヴァーを見つめるアーサーはあれこれと語りかけるが、
あくまでも気休めに過ぎず、最後の最後は自分で気持ちを切り替えるしかない。
オリヴァーは「不器用な人」だ。
助けの手を差し伸べられても、その手を掴んで引き寄せることを躊躇してしまうタイプ。
溺愛してくれた母の死と、それに続く父親のカムアウトと死によって
否応無しに変化の必要を突きつけられたオリヴァーだが
長年培われた内向的でネガティブな性格はそう簡単に変わらない。
ユアン・マクレガーは、周囲の協力や愛情に軽い拒絶反応を示しながら
少しずつ変わろうとするオリヴァーのナイーブさを上手く表現している。
秘密を抱えたまま44年間の夫婦生活を守り通したハルが
妻の亡き後に若い恋人を作ったからと言って誰も責められまい。
夫として父としての責任を果たした後に待ってたであろう
短くもささやかな老後を、癌によって奪われようとしているのだから。
しかし、劇中で描かれるハルと、ハルを慕って集まる人々を
見つめるオリヴァーの視線や、彼等との距離の取り方を見ていると
監督は未だに父親のことを割り切れていないのではないかと思った。
自分のことはある程度ケリをつけた（つもり）。
父のことはまだ少し引っ掛かりがある（ような気がする）。
けれど、時計の針は止まってはくれない。
悩んだり迷ったりしているうちにも人生の砂時計は落ちてゆくのだから
不器用なりに前を向いて生きていこう。
原題は「BEGINNERS」。
人生は、仕切り直したところがスタート地点になる。
▼新作Blu-ray／DVD情報
04月25日発売■Blu-ray：「永遠の僕たち 初回限定版」
【紹介記事】前を向いて今を生きる。映画「永遠の僕たち」
2011年の大晦日に紹介した「永遠の僕たち」がBlu-ray化。
監督は「エレファント」「パラノイドパーク」「ミルク」のガス・ヴァン・サント。
製作は名匠ロン・ハワードと、愛娘のブライス・ダラス・ハワード。
音楽はダニー・エルフマン。
主人公の少年イーノックを演じるのは、
名優デニス・ホッパーの息子であるヘンリー・ホッパー
共演は「アリス・イン・ワンダーランド」のミア・ワシコウスカ、
日本からは「SPEC・天」の公開も控えている加瀬亮。
05月02日発売■DVD：「灼熱の魂」
2010年度のオスカー外国映画賞にノミネートされた「灼熱の魂」がDVD化。
同年の外国映画賞候補にはスザンネ・ビア監督の「未来を生きる君たちへ」 、
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の「ビューティフル BIUTIFUL」と
稀に見る力作揃いで、本作も上記2作に負けずとも劣らない作品。
亡くなる前に、息子と娘にあてて遺書を残した母親。
遺書の内容は、死んだと説明していた父が実は生きており
さらに二人には兄もいる。その二人に会ってきて欲しいというものだった。
唐突な内容に戸惑いつつ消息を追ううちに
母親の辿った人生が想像を絶するほど過酷だったことを知ってゆく。
完成度は五分だが、本作がオスカーを逃した理由があるとすれば
「未来を生きる君たちへ」や「ビューティフル」に比べ、
こちらは本当に救いのない内容だからではないかと思う。
面白いよとお墨付きをつけることすら躊躇してしまう。
現在ロングラン公開中の「サラの鍵」とも通じる痛々しい話なので
軽い映画がお好きな方には勧めない。
映画を通して人生を考えさせられることに喜びを感じる方なら絶対にお勧め。
05月16日発売■DVD：「ハーブ＆ドロシー」
30年間に渡って現代アートを収集しまくった老夫婦の姿を追ったドキュメンタリー。
大金持ちでもなければ、優れた目利きでもない二人だが
集めに集めた美術品によってマンションは今や足の踏み場もないほどになっている。
二人が集めているものはたまたま現代アートだが
この映画はオタクカップルにとって正に理想の夫婦像である。
生活をある程度犠牲にしながら、生涯をかけて好きなモノを集めまくる。
どちらかが好きなだけでは、これほど幸福な人生は送れない。
新進気鋭のアーティスト達からコレクターとして愛され
ガラクタの山と思われたマンションは今や宝の山となったが
それでも、二人の足並みは乱れない。
投機目的で美術品を収集する成金連中には生涯到達出来ないであろう
幸福な老後がここにある。
▼今週発売の新作ダイジェスト
02月29日発売■DVD：「ap bank fes ’11 Fund for Japan」
02月29日発売■CD：「NEWTRAL 初回限定盤 / いきものがかり」
02月29日発売■CD：「Be... / Ms.OOJA」
02月29日発売■CD：「FEBRUARY & HEAVENLY 初回盤限定盤 / Tommy february6/Tommy heavenly6 」
03月01日発売■PS3：「ワンピース 海賊無双」
03月01日発売■PSP：「グレイトバトル フルブラスト」
03月01日発売■PSP：「グレイトバトル フルブラスト ツインバトルBOX」
03月01日発売■3DS：「マリオ&ソニック AT ロンドンオリンピック」
03月01日発売■HOBBY：「LEGO はやぶさ」
03月02日発売■Blu-ray：「未来を生きる君たちへ」
03月02日発売■Blu-ray：「ラブ＆ドラッグ」
03月02日発売■Blu-ray：「スクリーム4：ネクスト・ジェネレーション」
▼最近予約が開始された新商品
04月19日発売■3DS：「ファイアーエムブレム 覚醒」
05月24日発売■3DS：「MARIO TENNIS OPEN / マリオテニスオープン」
06月28日発売■3DS：「カルドセプト」
06月28日発売■Wii：「零 眞紅の蝶」
07月05日発売■3DS：「世界樹の迷宮 IV 伝承の巨神」
07月05日発売■3DS：「世界樹の迷宮 IV 伝承の巨神 ファミ通DXパック」
年明け以降の憂さを晴らすように、期待の新作が続々と発表された先週。
任天堂系では「ファイアーエムブレム 覚醒」「世界樹の迷宮 IV」がツートップで、
「マリオテニスオープン」「カルドセプト」「零 眞紅の蝶」が僅差で第2グループを形成。
配信コンテンツの無料期間が決まっている「FE覚醒」と、予約特典にサントラCDが
用意されている「世界樹IV」（今はまだ記載がないが近日追記されるはず）は
早期の確保をお勧め。
05月25日発売■Blu-ray：「機動戦士Zガンダム 劇場版 Blu-ray BOX」
06月08日発売■Blu-ray：「機動戦士ガンダムUC 5」
06月14日発売■PSV：「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」（Amazon）
06月14日発売■PSV：「ペルソナ4 ザゴールデン ファミ通DXパック」
06月28日発売■PS3：「ROBOTICS;NOTES / ロボティクスノーツ 数量限定版」
06月28日発売■360：「ROBOTICS;NOTES / ロボティクスノーツ 数量限定版」
08月23日発売■PSP：「化物語 ポータブル 初回限定生産版」
08月23日発売■PSP：「化物語 ポータブル 通常版」
SCE系ではPSV「ペルソナ ザ・ゴールデン」が3DS新作群を押し退けてトップスタート。
マルチ「ROBOTICS;NOTES」も依然好調だが、ゲーム内容すら判明していない
PSP「化物語 限定版」が初日から爆発していることも驚きだ。
