▼「笑顔70/不安30」のリアル。映画「50/50 フィフティ・フィフティ」
(c)IWC Productions, LLC.
喫煙者が煙草を止めるきっかけで最も多いのは
金銭面の問題でも、家族や友人の勧めでもなく、自身の体調不良らしい。
かく言う私の知人も、運転中に心筋梗塞を起こしてあわや大事故という状態になり、
ヘビースモーカーであることを医者から咎められて止めた。
死への恐怖と生への感謝は、身を以て経験しなければなかなか自覚し辛いものだ。
今回紹介する「50/50 フィフティ・フィフティ」は、実際にガン宣告を受け、
大手術によって見事克服したウィル・ライザーの実体験が元になっている。
闘病中に経験した死への恐怖や家族・友人の支えを思い返しながら
2年の歳月をかけて脚本を執筆し、親友であるセス・ローゲンが
製作と助演でサポートし、完成に漕ぎ着けた。
主演は「（500）日のサマー」で一躍人気者になり
来年公開の「ダークナイト ライジング」への出演も決まっている
ジョセフ・ゴードン＝レヴィット。
競演は「マイレージ・マイライフ」「スコット・ピルグリム」のアナ・ケンドリック、
「ヒア・アフター」のブライス・ダラス・ハワード、アンジェリカ・ヒューストンなど。
今日と同じ明日がやってくることに何の疑いも持たないまま日々を暮らす。
それがどれほど幸せなことなのかを知る機会は、実は少ない。
昨年、2年半に及ぶ闘病生活の末に愛する家族を癌で亡くし
その数ヶ月後に、今度は自分が癌検診に引っ掛かった私が
もっとも求めていたものは「ごく普通の生活」だった。
幸いなことに、私の結果はシロと出たが、癌化する可能性も高いとのことで
定期検診を義務づけられて現在に至る。
この3年間で、色々なことが見えた。
ずっと側に居てくれた最愛の伴侶
最後まで笑顔を絶やさなかった医師や看護婦
崩れたまま動けない私の代わりにテキパキと行動してくれた家族
訃報を聞きつけてすぐさま駆けつけてくれた友人
私の検査結果がシロであるように祈ってくれた知人
意気消沈の中で迎えた誕生日を明るく祝ってくれた甥っ子達
楽しくもないツイートに対し、励ましの言葉をかけて下さったネット上の方々
敢えて嫌な書き方をするなら、病気をきっかけにして
私を取り巻く人間関係の「仕分け」がはっきりと出来た気がする。
(c)IWC Productions, LLC.
映画「50/50」の主人公は、まだ27歳。
酒も呑まず、煙草も吸わない真面目な青年が癌を告知され
5年後の生存確率が50%ですよと言われたときのショックはさぞ大きかったろう。
しかし、悪友やカウンセラーの助けもあり、事態はなかなか深刻になっていかない。
手術前になってようやく不安や恐怖心を露にするが
それまでは病気を逆手にとってナンパするような、コミカルな描写が多い。
痴呆症の父を看護しつつ、今度は息子が癌という母親でさえ
過度に心配する様が滑稽に見えるように描かれていて
患者および周囲の人間が四六時中悲壮感を漂わせていない。
不謹慎？いやいや、だからこそ本作は非常にリアルなのだ。
「癌治療における最良の状態とは、
癌であることを本人も家族も忘れるぐらい呑気な生活を送れていることですよ」
そう言って笑った医師の顔を、私は今でもはっきりと覚えているし
実際に闘病していた2年半の間にも、楽しいことは山ほどあった。
家族が難病だからと言って、皆が皆、年中暗い顔をしているはずがない。
そこに着目し、洒落た音楽までつけて爽やかな青春映画に仕立て上げることが出来たのは
脚本家の実体験である、ということと、親友カイル役を、実生活でも励まし続けた
セス・ローゲンが演じていること。この2点が大きい。
天晴なまでに下世話なカイルのスケベ心の奥底には、
「変わらず接する」ことが何よりの気晴らしであることを熟知した優しさが溢れている。
難病モノでも重くない。
むしろたくさん笑えて、元気までもらえる。
去年なら観ていられなかったかも知れないので、今年出会えて良かった。
私的には、今年の10本に入るほどのフェイバリット作品。
映画「50/50 フィフティ・フィフティ」は12月1日公開。
■Blu-ray：「最高の人生の見つけ方」
■Blu-ray：「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」
■Blu-ray：「潜水服は蝶の夢を見る」
■Blu-ray：「死ぬまでにしたい10のこと」
■DVD：「海を飛ぶ夢」
■DVD：「アフター・ウェディング」
「どう死ぬか」を考えさせられる作品を思いつくままに挙げてみた。
「エンディングノート」「BIUTIFUL ビューティフル」「海洋天堂」と
今年は「どう死ぬか」を考えさせられる良作が多数公開されたな。
「エンディング・ノート」は思うことが多過ぎて何も書けなかった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル：50/50 フィフティ・フィフティ
配給：アスミック・エース
公開日：2011年12月1日
監督：ジョナサン・レヴィン
出演者：ジョセフ・ゴードン＝レヴィット、セス・ローゲン、他
公式サイト：http://5050.asmik-ace.co.jp/
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