清貧と汚富の狭間。映画「ソーシャル・ネットワーク」 | 忍之閻魔帳

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Facebook THE SOCIAL NETWORK ソーシャル・ネットワーク 映画 ジェシー・アイゼンバーグ
(C)2009 Columbia TriStar Marketing Group, Inc. All rights reserved.

「アンストッパブル」で正月惚けを脱したら、頭をフル回転させる映画を。
今回は、15日より公開になる映画「ソーシャル・ネットワーク」を紹介。
開始から数年で世界最大のSNSにまで急成長した「Facebook」の誕生秘話と、
世界最年少の億万長者となった創設者マーク・ザッカーバーグの姿に迫ったドラマ。
ゴールデングローブを始め、海外の映画賞では絶賛の声が相次いでいる話題作である。



2003年秋、ハーバード大学で退屈な学生生活を送っていた天才プログラマー、
マーク・ザッカーバーグは恋人と口論中だった。彼女の大学を侮蔑したマークに対し
「あなたがモテないのはオタクだからじゃない、性格が最低だからよ」と言われたマークは、
彼女の悪口をブログでぶちまけるも腹の虫が治まらない。
学校のデータベースに侵入し、女子学生全員の顔写真を集め始めた。
その後数時間で、○×方式でランキング化する人気投票サイトをオープンし
男子学生に向けて案内メールを送信。サイト情報は瞬く間に広まり、
深夜にはハーバードのサーバーがダウンする事態になった。
翌朝、学校から呼び出されるも「セキュリティー会社の無能さを証明しただけだ」と
悪びれる様子もないマークを見て、エリート学生から声がかかる。
ハーバードの学生に限定したSNSを作りたいので、そのプログラムを任せたいのだと言う。
二つ返事で引き受けたマークだったが、エリートからはアイディアのみを拝借し、
唯一の友人であるエドゥアルドを相棒にして勝手にサイトを立ち上げる。
やがて、ハーバードに限定していたはずの「The Facebook」は周辺の大学にまで広がり、
遂には国境をも超えて爆発的に広がってゆく。

監督は「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」のデヴィット・フィンチャー。
主演は「ゾンビランド」で引きこもり青年を演じていたジェシー・アイゼンバーグ。
ファイルシェアリングサービス「ナップスター」の共同創設者であり、
マークをさらなる高みへと引き込む若手投資家ショーン・パーカーは
イン・シンク後のソロ活動でも大ヒットを連発し、グラミー賞も受賞している
ジャスティン・ティンバーレイク。製作総指揮はケヴィン・スペイシー。

Facebook THE SOCIAL NETWORK ソーシャル・ネットワーク 映画 ジェシー・アイゼンバーグ アンドリュー・ガーフィールド
(C)2009 Columbia TriStar Marketing Group, Inc. All rights reserved.

私達日本人には汚富(多分こんな言葉は無いと思う。清貧の逆、という意味で造った)を嫌い、
清貧を良しとする道徳観がある…ような気がする。(もちろん、日本人全員がそうだとは言わない)
しかし「人の道に外れてまでお金を手に入れたくない」という言葉の裏に
巨万の富を手にした者への羨望や嫉妬が混ざり込んでいるのも事実で、
時代の寵児ともてはやされた人物が失脚する様を見て
「やっぱりな」「そら見たことか」と言いながら、心の奥でこっそりと溜飲を下げたりする。

「Facebook」の創設者であるマーク・ザッカーバーグは
この映画を見る限りでは、正真正銘の最低な奴である。
別れた恋人をネットで誹謗中傷し、アイディアの盗用を屁とも思わない。
ただひたすら、感情の赴くままに行動する姿は幼児そのものだ。
いくら天才的なプログラム能力を持っていても、
コミュニケーション能力の乏しいマークには、才能を発揮する場が無い。
私財を投げ打って協力してくれる友人が居てこそ、マークの人生は開けたはずだが、
プロジェクトが起動に乗った途端に、その友人ですらあっさりと切り捨ててしまう。
鉈を振り上げたまま小首を傾げるジェイソンのように、
本作のマークは「純粋な怪物」として描かれている。
一方的に捲し立てる話し方や、集団行動を嫌い単独行動を好む姿を見ていると、
自閉症かアスペルガー症候群なのではと思ったりもしたのだが、
実際の彼も本当にこのような性格なのかは不明で、関連書籍を読んでみたくなった。

Facebook THE SOCIAL NETWORK ソーシャル・ネットワーク 映画 ジャスティン・ティンバーレイク ジェシー・アイゼンバーグ
(C)2009 Columbia TriStar Marketing Group, Inc. All rights reserved.

物語は、新しいビジネスが誕生する瞬間と、急成長を遂げる過程がじっくり描かれている。
単なる「高級食材」でしか無かったマークを三ツ星レストランのメインディッシュにまで
引き上げた名シェフはショーン・パーカーであり、彼のアドバイスによって
「Facebook」(「The Facebook」から「The」を取れと言ったのもショーンらしい)は
地域限定の人気サイトから世界有数のメガベンチャーへと変貌していく。
「100万ドルで満足するな、10億ドルを目指せ」とハッパをかけるショーンの言葉からは
「ナップスター」で社会の仕組みを変えた(CDからDLへの転換を促した)という強い自負と、
マークを動かしてもう一度大きなビジネスを仕掛けてやろうという野心が見て取れる。
酒と女に溺れ、お決まりのようにドラッグにまで手を出してしまう危うさも含めて
ショーンのような男に魅力を感じる若い方は多かろうし、
だからこそ、ショーン役にジャスティンを起用したのだろう。
マーク以上に大きな存在感を持ってしまったのが正しかったのかどうかはさておき、
この映画の功労者がジャスティンであることは間違いない。

時系列を分かり易い形で整理しながらテンポの良く見せていくストーリー展開や、
事実として提示しておきながら、まだ何か裏がありそうだと
想像や解釈の余地を観客に残しておくまとめ方は「ゾディアック」に近い。
技巧に走り過ぎない映像や、やたらと胸を騒がせるトレント・レズナーの音楽も効果的で、
私的にはデヴィット・フィンチャー監督作品の中ではNo.1。

主人公が早口な上に膨大な台詞(しかも専門用語が多い)を吐くので、
字幕に慣れていない方は画面の文字を追うだけで精一杯になってしまう可能性があるが
IT業界やインターネットに詳しくない方にも是非ご覧いただきたい。



▼デヴィット・フィンチャー作品


■Blu-ray:「セブン」
■Blu-ray:「ファイト・クラブ」
■Blu-ray:「ゾディアック ディレクターズカット」
■Blu-ray:「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」

デヴィット・フィンチャー作品。
「パニック・ルーム」(2002年)でもうフィンチャーは駄目だなと思ったら
「ゾディアック」(2007年)で不死鳥のように復活。
続く「ベンジャミン・バトン」で巨匠への道を駆け上がり始めた。
脂の乗り切った今手掛けた「ソーシャル・ネットワーク」が傑作足り得たのは当たり前か。




■CD:「ソーシャル・ネットワーク サウントドラック 輸入盤」
:「ソーシャル・ネットワーク サウントドラック」
■BOOK:「フェイスブック 若き天才の野望」

トレント・レズナーのサントラは、CDは国内未発売だが、輸入盤の取り扱いはあり。
iTMSではアルバム全曲でも1200円で販売中。
音楽だけで聴くと伝わりにくいかも知れないが、映画を観ると欲しくなること請け合い。
マーク・ザッカーバーグに迫った関連書籍「フェイスブック 若き天才の野望」は13日発売。



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  タイトル:ソーシャル・ネットワーク
    配給:ソニー・ピクチャーズ
   公開日:2011年1月15日
    監督:デヴィット・フィンチャー
   出演者:ジェシー・アイゼンバーグ、ジャスティン・ティンバーレイク、他
 公式サイト:http://www.socialnetwork-movie.jp/
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