▼咲き乱れる7色のフェロモン。映画「NINE / ナイン」
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ミュージカル好きなら見逃せない「NINE」を紹介。
フェデリコ・フェリーニ監督の名作「8 1/2」をベースにしたミュージカルを
「シカゴ」でオスカーを受賞したロブ・マーシャル監督が映画化。
かつては名作を連発していたひとりの映画監督がスランプに陥り、
産みの苦しみから解き放たれるまでを描いている。
主人公の映画監督グイドには
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 」のダニエル・デイ＝ルイス。
本作の肝である豪華女優陣には、
「エディット・ピアフ 愛の讃歌」のマリオン・コティヤール、
「抱擁のかけら」のペネロペ・クルス、「007 慰めの報酬」のジュディ・デンチ、
「10日間で男を上手にフル方法」のケイト・ハドソン、
「ムーラン・ルージュ」のニコール・キッドマン、
「プラネット・テラー in グラインドハウス」のファーギー、
そして、大女優ソフィア・ローレン。
結論から言うと、本作は「シカゴ」には遠く及んでいない。
映画化に際しての作法は「シカゴ」を踏襲しているものの、
パフォーマンス、ストーリー、華やかさ、観賞後の高揚感、
全てにおいて「シカゴ」の方が一枚も二枚も上手だ。
本作の主人公であるグイドは、妻がありながら愛人との関係も断ち切ることが出来ず、
作品を彩る看板女優もお気に入り、どんな状況に陥っても愚痴を聞いてくれる
女性デザイナーを側に置くという、充分に甘やかされた環境でありながら、
それでも四六時中、苦悩の表情を浮かべている。
自分勝手と言えば確かにそうなのだが、音楽家や画家など、
クリエイティビティを刺激するためのエネルギー源に異性を必要とする芸術家は多い。
グイドにとって、劇中に登場する女性全員が必要な存在なのだと思う。
咲き乱れる7色のフェロモンの、どれかひとつが欠けてもダメなのだ。
グイドに共感する男性諸氏も世の中にゴマンといるはずだが、
男の頭の中では筋が通っている理屈でも、女性にはまず通用しない。
しかし、正妻のマリオン・コティヤールから三行半を叩き付けられ、
長年相棒を務めてくれたデザイナーから愛想を尽かされながらも、
結局は皆、女性ならではの大らかさと母性でグイドの弱さを許し、再び受け入れてしまう。
本作は「男」という生き物に対しての視線が「シカゴ」よりずっと温かく、
女性が冷徹になり切れない男性像を、ダニエル・デイ・ルイスが実に上手く演じている。
「シカゴ」と同じく、強い女性像を前面に押し出しているようで、
実は全く違う作品になっているところが面白い。
パフォーマンスについては、キャスティングが豪華過ぎる弊害か、
作品を代表するような1曲は存在せず、インパクトの均等割りといった印象。
強いて言えばケイト・ハドソンの「Cinema Italiano」になるのだろうが
名曲揃いの「シカゴ」に比べるとどうしても見劣りする。
「エディット・ピアフ」では鬼気迫るほどのパフォーマンスを披露していた
マリオン・コティヤールも、今回はえらくおとなしめで残念。
豪華過ぎるのも考えものということなのか。
とはいえ、これだけ華やかなミュージカル映画は年に何本もは観られないので
大人のデートムービーとしてお勧め。
▼関連作品
■CD ：「NINE」
サントラCD。当然買った。
■BD：「シカゴ」
■BD：「ドリームガールズ スペシャル・コレクターズ・エディション」
■BD：「オペラ座の怪人」
Blu-rayで楽しめるミュージカル映画のお勧めをいくつか。
大人向けならばこの3作。
ロブ・マーシャル監督の前作にして、オスカーを席巻した傑作「シカゴ」、
近年のミュージカル映画では最大のヒットである「ドリームガールズ」、
舞台の迫力を完全再現し、BDの画質も素晴らしい「オペラ座の怪人」。
■BD：「ヘアスプレー」
■BD：「ハイスクール・ミュージカル トリロジー・ボックス」
■BD：「アクロス・ザ・ユニバース」
若者向けならこの3作。
体型にめげずに幸せを勝ち取るガールズムービー風ミュージカル「ヘアスプレー」、
ザック・エフロン他、若手実力派のパフォーマンスが楽しめる
学園ドラマ風ミュージカル「ハイスクール・ミュージカル」、
ビートルズの楽曲を全編に使用し、
ビデオクリップのような映像でまとめ上げた「アクロス・ザ・ユニバース」。
使用楽曲はビートルズだが、物語の運びも映像も若者向けなのでこちらに入れてみた。
以上の6作ならばどれを買っても損はしないはず。
私はもちろん、全部持っている。
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タイトル：NINE / ナイン
配給：松竹／角川
公開日：2010年3月19日
監督：ロブ・マーシャル
声優：ダニエル・デイ・ルイス、マリオン・コティヤール、他
公式サイト：http://nine-9.jp/
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