グラインドハウス風、傑作ガンシューティング。Wii「ハウス オブ ザ デッド:オーバーキル」 | 忍之閻魔帳

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ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)

★元記事はこちら。

■Wii:「ザ ハウス オブ ザ デッド: オーバーキル 通常版」
■Wii:「ザ ハウス オブ ザ デッド: オーバーキル Wiiザッパー同梱版」

当BLOGを長く読んでいただいている方ならば、
私が異様に高い頻度でホラー映画を取り上げていることにお気づきと思う。
漫画界では楳図かずおや古賀新一の作品がヒットし、
映画界では未だに語り継がれるホラー映画の傑作が次々に誕生した年代と
私の多感なお年頃がぴったりとマッチしたおかげで
ホラーと聞けばなんでも反応する体質になってしまった。

今回取り上げるWii「ハウス オブ ザ デッド:オーバーキル」も
もともと購入予定ではあったのだが、遊んでみてビックリである。
これは間違いなく「ハウス オブ ザ デッド in グラインドハウス」だ。

■DVD:「プラネット・テラー in グラインドハウス」

【紹介記事】2007年度最高のB級大作「グラインドハウス」が遂にDVD化

「グラインドハウス」とは、1960~70年代にかけて数多く存在した
インディーズ系の低予算映画を複数本まとめて上映していた劇場のことで
(ちょっとニュアンスは異なるが)日本でいうと名画座が近いかも知れない。
映画界では、グラインドハウス映画をこよなく愛する
クエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスの2大オタク監督が
「プラネット・テラー」「デス・プルーフ」という
2作のグラインドハウス風映画を現代に蘇らせ、B級映画ファンから大絶賛された。
Wii「ハウス オブ ザ デッド:オーバーキル」は
ロドリゲスが担当した「プラネット・テラー」に特に強い影響を受けているものと思われる。

■DVD:「イルザ ナチ女収容所 悪魔の生体実験 ヘア解禁リマスター版」
■DVD:「イルザ DVD-BOX ヘア解禁リマスター版」

Wii「ハウス オブ ザ デッド:オーバーキル」が
グラインドハウス映画を意識していることは、もうメーカーロゴの段階から明らかで
ゲーム中の演出はもちろん、ステージごとのタイトルやメニュー画面のBGMに至るまで
B級映画へのオマージュがびっしりと詰め込まれている。
意図的に処理されたグラフィックノイズと、アナログレコードを思わせるBGM、
下卑た声&胡散臭さ満開のナレーション、女体(ヴァーラ)が登場した時だけ
舐め回すような動きになるカメラワーク、過剰過ぎて逆に笑えてくる残虐表現、
どこを切っても「これぞグラインドハウス映画」な出来。
登場するキャラクターも、マッドサイエンティストや胎内回帰願望を持つマザコン男など、
いわゆるキ印な連中がゾロゾロと登場し、人間の指示に従うゾンビが可愛く思えるほど。

各ステージはそれぞれ独立した世界を構築しており、「本日の出し物」といった雰囲気。
目を凝らして良く良く見れば、どこかにマイクでも映り込んでいるのではという
嘘臭さ・安っぽさが、B級好きのツボをギュンギュンと刺激する。
過去のB級ホラー映画へのオマージュが随所に散見されるが、
大筋のストーリーは、私は「イルザ ナチ女収容所 悪魔の生体実験」を思い出した。
しかし、ホラー映画に関して知識豊富な方ならばもっと近いものが挙げられるであろうし
この辺は各自で想い出の作品を想起しながら楽しめば良いのではないか。

ちょっと細かいことも書かせていただくと
1面のボス前に入るムービーシーンで、メガネをかけた少年の顔を
キ印博士が殴り、メガネが吹っ飛ぶシーンがある。
ところが、次のカットでは何事もなかったように少年はメガネをかけており
かと思ったらその次のカットではまた消えている。
これはもちろん、製作者のミスなどではなく
低予算映画ならではのいい加減さを意図的に模したものであろう。

ラストステージでも、デモの最中に「MISSING REEL」という画面が入り
再開したら話がかなり進んでいたという演出が入っているのだが、
これは「プラネット・テラー」でも再現されていた、グラインドハウス映画ならではの事故である。
当時の劇場は環境も劣悪で、映写機を回す技師のくわえ煙草が原因で
フィルムが1巻丸ごと焼失してしまうような、今では信じられない不手際が良くあったらしい。
「プラネット・テラー」ではこの後にちゃんとお詫びのメッセージが表示され、
「不手際をお詫び申し上げます」と日本語字幕も付けられているのに対し、
残念ながら本作では、英語で「MISSING REEL」としか出て来ないので
この辺の背景をご存知ない方が遊ぶと訳が分からないという事態に陥る可能性も。
ここまで愛情を込めた作りにするのなら、
説明書で補足するか、ゲーム中に解説を用意するなどしてくれると尚良かった。

ゲーム部分に関しては、これまでの「ハウス オブ ザ デッド」シリーズとは
比較にならないほど簡単になっていて、下手っぴな私ですらあっさりクリアできた。
これは、本作が1枚でも多くの100円玉を吸い取ることを目的としたアーケードゲームではなく
5040円支払ってゲームを手にした観客を、ひとりの漏れもなくエンディングまで
到達させるためのバランスなのだと考えれば納得がいく。
腕に自信のあるガンシューティング好きには不満もあろうが、
世界観を楽しみたい私には大変有り難かった。

クリア後にオープンになるモードが
「VERY HARD」ではなく「DIRECTOR'S CUT」である点もいい。
ただ単に敵の数が増えた、固くなったという調整ではなく
増えた部分が面白さを増幅させているか、それとも蛇足かという議論までも含めて
ちゃんと「ディレクターズカット」になっているのだ。

「バイオハザード」系の正統派ホラーゲームではないので人を選ぶのは確かだが、
タランティーノ作品がそうであるように、このノリがツボにハマった方なら
全Wiiタイトルの中でも上位にランクインするほどのフェイバリットソフトになるはず。
事実、私はなった。ハラショー、セガ。ブラボー、セガ。

▼関連商品

■Wii:「ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド 2&3 リターン」
■Wii:「ゴースト・スカッド 通常版Wiiザッパー同梱版」

セガから発売中のWii向けガンシューティング。

今冬発売■Wii:「バイオハザード/ダークサイド・クロニクルズ」
09月18日発売■Wii:「バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ Best Price!」

カプコンから発売されているWii向けのガンシューティング。
「アンブレラ」が本作並みの難易度であったならと思わずにいられない。
そして「ダークサイド」は本作並みの難易度でありますようにと願わずにいられない。