好きじゃないのにカッコイイ。映画「少年メリケンサック」 | 忍之閻魔帳

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少年メリケンサック
(C)2009「少年メリケンサック」製作委員会

私は、松尾スズキの魅力なら理解出来るのだが、
宮藤官九郎の魅力は今ひとつ理解出来ない。
これは、作品の出来・不出来というより、両者のテイストに対する好みの問題なので、
永遠に変わることはないだろうと思っていた。
そこに、本作がやって来た。
カッコいいじゃないか。
素晴らしいぞクドカン。
私はようやくクドカンを好きになれそうだ。
今回は、「少年メリケンサック」を紹介しよう。

■YouTube:「少年メリケンサック 予告編」

ある昼下がり、音楽プロダクションとの契約切れも間近な
OLの栗田かんな(宮﨑あおい)は、何気なく見ていたPCの中で、
凄まじい奇声を発しながらパフォーマンスするパンクバンドを発見する。
バンド名は「少年メリケンサック」。
しかも、ベースを弾くアキオ(佐藤智仁)は
社長(ユースケ・サンタマリア)好みのハンサムと来ている。
彼等ならイケると確信したかんなは、社長の許可を得て
彼等にメジャーデビューの誘いをかけに行くが・・・。

出向いた先にいたのは、50過ぎの薄汚い中年男(佐藤浩市)だった。
しかし、その男は自分がアキオで間違いないと言う。
そう、かんなが発見した動画は、25年前の解散ライブのものだったのだ。
かんながとんでもないミスに気付いた時には既に遅く、
社長の独断でオープンした特設サイトのアクセスは10万を突破、
全国ツアーの告知までされていた。
真実を告げるも、信頼第一の業界でドタキャンは御法度と言う社長は
現在のメンバーでの全国ツアーを強行するよう命令。
こうしてかんなは、アキオの弟で、ギター担当のハルオ(木村祐一)、
ボーカルのジミー(田口トモロヲ)、ドラムのヤング(三宅弘城)を連れて
全国ツアーの旅に出ることになったのだが・・・。

監督は人気脚本家の宮藤官九郎。
本作が、「真夜中の弥次さん喜多さん」に続く2作目の監督作品となる。
主演は「初恋」「闇の子供たち」「篤姫」の宮崎あおい。
やさぐれた中年ベーシストに「ザ・マジックアワー」の佐藤浩市。
かんなの恋人で、生緩い恋愛ソングばかり歌うマサルには
「幸福な食卓」の他、舞台でも活躍中の若手実力派・勝地涼。
アニメーション監督は、「鉄コン筋クリート」で総作画監督を務めた西見祥示郎。


いつか芽が出ると信じて、路上で歌い続ける素人ミュージシャン、
見た目にこだわり過ぎてサイボーグ化したトップミュージシャン、
そして、過去の栄光にすがって現実から目を逸らす、中年の元ミュージシャン。
この映画には、カッコ良くないミュージシャンばかりが登場する。
流行を追っても下らないし、昔を振り返っても仕方が無い。
今の音楽業界は真っ暗だ、と言わんばかりの酷さの中で、
口先だけ達者な中年男が「まだまだやれるぜ」と言ったところで、誰も信じない。
しかし、25年前の映像に寄せられた10万人の期待が
すっかり老化した彼等の心の時間を巻き戻していく。
変わらない下品さと、衰えた体。
変わらない乱暴さと、衰えたテクニック。
25年間で変わったもの・変わらないものをごちゃ混ぜにしながら
復元されていく「2009年の少年メリケンサック」は、
やはり25年前の「少年メリケンサック」とは違ったけれど、
充分過ぎるほどにカッコ良い親父バンドだった。

恋人の歌う、甘いだけの恋愛ソングを好きだと言いながら
心のどこかで「少年メリケンサック」に惹かれていく
宮崎あおいの心境は良く分かる。
理屈では説明出来ない、どうしようもなく惹かれるモノに出会った時、
「好き」という感情は、実はとても浅瀬の部分の感情だったと知るのだ。

本作が「真夜中の弥次さん喜多さん」や「舞妓Haaaan!!!」に比べて
すんなり受け入れられたのは、阿部サダヲや荒川良々などの身内で
主要キャストを固めていないことが大きい。
宮崎あおいや佐藤浩市といったキャストに気を遣いながら
自身のカラーも出していくという監督の思い切りの悪さが、
かえって私との相性を良くしたのだと思う。
ということは、これまでのクドカン作品を無条件で大笑い出来たという方には
もしかすると物足りないのかも知れない。
ウンコ、チンコ、ゲロ、オナラ、ケツといった
「桃鉄」レベルの笑いも相変わらず多いので、
物足りない方はそこで補給していただければ良いか。
エンドロールで流れる「守ってあげたい」も妙にハマっていた。

東宝系で拡大公開された「舞妓Haaaan!!!」に比べると
公開規模も小さく、大ヒットは難しいかも知れないが
クドカンが嫌いでないならデートムービーにお勧め。

■CD+DVD:「ニューヨークマラソン/守ってあげたい」
■CD:「少年メリケンサック オリジナル・サウンドトラック」

「ニューヨークマラソン」は、そう聴こえるだけで実はそう歌っていない。
カスタマーレビューでは歌詞がきちんと聴こえないことに不満を述べている方もいるが、
きちんと聴こえてはダメなのだ。
果たして何と歌っているのか、答えは映画の終盤で明らかになる。
試聴用の音源も用意されている。

■Book:「少年メリケンサックオフィシャルブック」
■DVD:「少年メリケンサックはこんな感じ」

オフィシャルブックと、ナビゲートDVDも発売中。

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  タイトル:少年メリケンサック
    配給:東映
   公開日:2009年2月14日
    監督:宮藤官九郎
  キャスト:宮﨑あおい、佐藤浩市、田口トモロヲ、木村祐一、他
 公式サイト:http://www.meriken-movie.jp/
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