リーゼントこそ東映の故郷。映画「ワルボロ」松田翔太 新垣結衣 | 忍之閻魔帳

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ワルボロ 松田翔太 新垣結衣
(C)2007「ワルボロ」製作委員会

9月7日公開の邦画は面白い。
東宝は、フジテレビとのタッグで邦画界の新記録樹立を狙う「HERO」を、
松竹は、今作で20周年を迎える安定感抜群の「釣りバカ日誌18」を、
そして東映は、ハンパ者をヒーローに仕立てる得意技で
2007年の世にリーゼントとツッパリを復活させた。
今回は、興行的には3作中最も苦戦するであろう「ワルボロ」を紹介する。

【あらすじ】

1980年代前半の東京都立川市。
受験を控えた中学3年生のコーちゃん(松田翔太)は
憧れのクラスメイト・山田(新垣結衣)の気を引くために今日もガリ勉中。
ある日、些細なきっかけで幼なじみのヤッコ(福士誠治)相手に
キレてしまった日を境にコーちゃんの人生が一変、リーゼントとボンタン、
鉄板入りのカバンで街を闊歩するツッパリになってしまった。
ワルになったコーちゃんに激怒する母(戸田恵子)、
逆に歓迎する叔父(仲村トオル)、冷ややかな視線を送る山田・・・
周囲の反応は様々だったが、走り出したコーちゃんは、
もう誰にも止められない。

コーちゃんには「花より男子」「ライアー・ゲーム」
「女帝」と現在大活躍中の松田翔太。
ヒロイン山田には「マイ★ボス マイ★ヒーロー」の新垣結衣。
コーちゃんの仲間達には福士誠治、木村了、城田優といった
若手の期待株が勢揃いしている。
主題歌は甲本ヒロトと真島昌利の
ザ・クロマニヨンズの3rdシングル「ギリギリガガンガン」。


初めに断っておくと、私はゲッツ板谷の小説もコミックも未読なので
あくまでも映画だけを観ての感想である。

原作はゲッツ板谷の自叙伝的なエッセイらしいので
そういう意図は無かったと思うが、映画版のスタッフが狙っているのは
まさしく「ビーバップ・ハイスクール」、それも最近作られたドラマ版ではなく、
80年代に一世を風靡した劇場版シリーズであろう。
映画化の手法としては、下手に現代風の手法を取り入れず
ドラマ版のテイストを尊重していた「スクール・ウォーズ」に良く似ている。

ストーリーは、「ビーバップ・ハイスクール」的なキャラクター設定に
「花のあすか組!」的な「ガキの世界の勢力争い」をプラスしたもので、
「花のあすか組!」読者ならば「戦23の男子版のようなもの」と言えば
一番伝わり易いのではないか。
立派な大人(劇中では戸田恵子演じるコーちゃんの母親)から見れば
下らないガキ同士の喧嘩でも、当人達にとっては
生きるか死ぬかの大勝負なのだ、という温度差も含めて
実に上手く描かれており、この辺のテイストを楽しめるのは、
新垣結衣や松田翔太を目当てに劇場に足を運ぶ若い方々ではなく、
ペシャンコに潰した鞄を満足そうに眺めるコーちゃんに
「そうそう」と頷くことの出来る私のようなジジィ連中かも知れない。

「ガリ勉上がりのツッパリ」という役柄が上手くマッチしている松田翔太、
ある意味一番オイシいポジションのヤッコを演じる福士誠治、
ひとり逃げ回る気弱な役柄を好演している城田優など、
錦組のメンバーは皆違和感なく「古めかしいツッパリ」になっていた。
「ビーバップ」出身の仲村トオルが
武闘派のヤクザを嬉々として演じているのも微笑ましい。

唯一の難点は、ヒロイン役の新垣結衣だけが
2007年を感じさせるヒロインである、ということ。
劇中には聖子ちゃんカットの女生徒も登場しているので
余計に新垣結衣だけがポッカリと浮いているように感じるのだ。
これは演技力の問題ではなく、服装や髪型の問題であろう。
出演者全員が中学3年生に見えない、というのもあるが、
それはまぁ、目をつぶることとしよう。

「HERO」よりは確実に映画らしい映画に仕上がっているので
「HERO」を観に行ったものの残念ながら満席、といった場合には
思い切って「ワルボロ」に鞍替えしてみるのも手だ。


■CD:「ギリギリガガンガン DVD付き/ザ・クロマニヨンズ」
■CD:「ギリギリガガンガン/ザ・クロマニヨンズ」

さすがというか、映画のイメージに良く合っていた。
ジャケットは、劇中にも「女優」として登場する西原理恵子氏。


■Book:「ワルボロ/ゲッツ板谷」
■Book:「ワルボロ 1/ゲッツ板谷、花岡暁生」
■Book:「ワルボロ 2/ゲッツ板谷、花岡暁生」

原作小説とコミック。


■DVD:「スクール・ウォーズ HERO」

山下真司のドラマ版をどうやって2時間にまとめるのかと
思っていたが、意外なほど良く出来ている。
泣き虫先生を演じる照英のオーバーアクションな喜怒哀楽が
映画のベタな空気と絶妙にマッチし、とどめは大黒摩季の「HERO」。
「ワルボロ」を観る前のリトマス試験紙として。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:ワルボロ
    配給:東映
   公開日:2007年9月8日
    監督:隅田靖
    出演:松田翔太、新垣結衣、福士誠治、木村了、城田優、他
 公式サイト:http://www.waruboro.jp/
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