主文、大友克洋は死罪。映画「蟲師」:オダギリジョー 蒼井優 | 忍之閻魔帳

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■DVD:「蟲師 通常版大友克洋完全監修 蟲箱」

●主演:オダギリジョー、監督:大友克洋で「蟲師」が実写映画化

>問題は大友克洋である。
>私はもう、大友の泉は枯れたと思っているのだ。
>「スチームボーイ」で、疑惑は確信になった。
>そんな大友に実写の監督を任せるとは・・・

上記の過去ログは、2005年10月のものである。
1年半前からある程度覚悟していたとはいえ・・・これは酷い。

【あらすじ】

今から100年前の日本には、「蟲」と呼ばれる妖しき生き物達がいた。
彼らは時に人に取り憑き、様々な厄災をもたらす。
蟲に引き寄せられるように旅を続けるギンコ(オダギリジョー)は、
蟲を見つけ、蟲と対話し、蟲を払うことで多くの人々を癒して来た。
人は、彼のような人間を「蟲師」と呼んだ。

ある日、雪深い山で一夜の宿を借りたギンコは
庄屋の女将(りりぃ)から相談を受ける。
孫娘の真火(守山玲愛)の額に4本の角が生えたというのだ。

主人公ギンコを演じるのは、
今や邦画界で最も忙しい俳優・オダギリジョー。
筆を使って蟲を封じる少女、淡幽には蒼井優。
ギンコと旅をする虹郎には大森南朋。
ギンコの片目の秘密を握る女性、ぬいには江角マキコなど、
主要キャストもかなり豪華だが、
庄屋の主人にりりぃ、淡幽の世話役であるたまに
李麗仙を配するなど、脇もしっかり固められている。


最初に断っておくと、りりぃと李麗仙の二人は抜群に良い。
蒼井優も大森南朋もそこそこハマっている。
キャストに関しては、江角以外に特に文句はない。
文句はないのに、この出来なのである。

ジャパン・デジタル・コンテンツの説明文には、
「壮大なSFファンタジー大作」という表記があった。
劇場で配布されているチラシには、
「衝撃的なスペクタクル巨編」という表記があった。

こういう謳い文句を用意している時点で、
製作者達は「蟲師」という作品を明らかに取り違えている。
出来上がった作品は、確かに「大作」っぽくもあり、
「スペクタクル」と呼べるシーンも多少は存在する。
原作を破壊した、という意味では「衝撃的」でもある。
しかし、少なくともこれは「蟲師」ではない。

少し前に紹介した「どろろ」は、原作発表時からの時代の流れや、
王道の冒険活劇に仕上げるという意味において
原作の改変も止むなしと思えたのだが、
「蟲師」は現在進行形で連載中の作品であり、
監督を務めるのは「同業者」の大友克洋である。
原作を凌辱されることの辛さは充分理解していると
思っていたのだが、甘かった。

全体的なストーリーは、

「柔らかい角(第1巻)」
「筆の海(第2巻)」
「雨がくる虹が立つ(第2巻)」
「眇の魚(第3巻)」

の4編を適当に継ぎ接ぎして構成されている。
ショートシナリオを挿入しつつ、メインシナリオを同時進行させる
よくあるタイプなのだが、
原作にそこそこ忠実なショートシナリオに対し、
肝心のメインシナリオが滅茶苦茶なのである。
原作ファンの大半が唖然とするであろう、
ギンコとぬいの関係を描いた物語後半は
「木っ端微塵改悪」とでも呼びたいほどの改竄ぶりで、
怒りを通り越して可笑しくすらあった。
後半のぬいは、完全に「貞子」と化している。
ジジィ向けに説明するならば、1983年公開の「里見八犬伝」に出ていた、
ヨネヤマママコ演じる「船虫」が最も近い。

巻物から浮かび上がった淡幽の文字が宙を舞うシーンなど、
特撮部分はそれなりに見応えもあるのだが、後半以降の
ぐだぐだな展開と投げっぱなしのエンディングで全て台無しである。

「蟲」という概念自体、原作を読んでいない人間に
説明するのは難しいということは分かる。
分かるが、だからと言って「妖怪大戦争」や
「リング」と一緒にして良いという言い訳にはならない。

私が劇場版「蟲師」に期待していたものは、
優しくて静かな「ちょっと怖くて、ほのかに温かい物語」であった。
淡幽との恋愛要素も、ぬいのスペクタクルホラーも必要ない。
蟲がいて、人間がいて、ギンコがその間をすり抜けて
旅をしているような、そんな映画で良かったのだ。

結局、蒼井優は和服もイケるな、という一点のみを心の支えに
最後まで観続けることが出来たが、
蒼井優に興味の無い人間は、何を拠り所にすれば良いのだろう。
オダギリジョーの鬼太郎ルックか、
はたまた江角マキコの貞子ぶりか。
いずれにせよ、まともに付き合うのは困難な映画である。
さすがに「デビルマン」クラスだとまでは言わないが、
原作ファンはそれなりの覚悟をして劇場へ。

最後に、

>私はもう、大友の泉は枯れたと思っているのだ。

この部分を訂正しておく。
大友の泉は、干上がってカラッカラになっている。
未だに「AKIRAの」が付いて回ることが
今の大友を生んだというのなら、
かつて心酔していた私としては何とも複雑な気持ちだ。

*念のため断っておくと、
 私は原作至上主義ではないので、アレンジの仕方によっては
 多少の改変は「アリ」だと思っている。
 また、罪状は「市中引き回し」でも「島流し」でも良い。
 「これは酷い」という意味を表す短い言葉を探しただけで、
 それ以上の意味はあまりない。
 本文を読んでいただければ分かるとは思うのだが、
 タイトルだけに気を取られぬよう。



■Book:「キネマ旬報 2007年 3/15号」




■Book:「蟲師 8」


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:蟲師
    配給:東芝エンタテイメント
   公開日:2007年3月24日
    監督:大友克洋
    出演:オダギリジョー、蒼井優、江角マキコ、他
 公式サイト:http://www.mushishi-movie.jp/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

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