た行が、か行になってしまう②:小児の機能性構音障害の訓練(2) | 向き不向きより前向き♪言語聴覚士かあこから感謝をこめて

向き不向きより前向き♪言語聴覚士かあこから感謝をこめて

ST(言語聴覚士)として病院・施設・学校などでリハビリや訓練に長年携わっています。出会わせていただいてきた方々への感謝の心をこめて、日々思う事・考える事などを綴っていきます。
どなたかの「今」にお役に立てることがひとつでもあれば幸いです。



「た行」の音を言おうとすると、
「か」行の音になってしまう。

そのようなお子さんとの構音訓練(発音の練習)についての2回目で、

「た」「と」
の、構音(発音)を誘導した方法についてとなります。


このお子さん(もうすぐ、幼稚園の年長さん)の状況については、こちらをご参照下さい。
  >>> た行が、か行になってしまう①



前回同様、
タイトルは「小児」としていますが、
成人で、機能性構音障害をお持ちの方にも、
応用出来る内容を、書くつもりです。



このお子さんは、
「た」が「か」に
「と」が「こ」に置換(置き換わる)してしまいます。


例えば、

「たいこ」と言おうとすると、
「かいこ」になってしまいます。

「とけい」と言おうとすると
「こけい」になってしまいます。



第3回目のセッションで

ターゲットの音を出す
という練習をしました。


ターゲットは、
「た」と「と」です。



まずは、単音で、誘導していきます。


「た、って言ってみて~」
ですと、「か」になってしまいます。



ですので、

「た、と言ってみましょう!」
とは、言いません。

本人にも、「た」は意識しないでもらいます。




要は、
「た」と言おうとしないでもらって、
「た」の音を出す。


ということになります。






ここで、ちょっと、
「た」「たた」「たたた」と言ってみて下さい。





言う直前。
言っている時。

舌は、どこに当たっていて、
どういう動きになりますか?



その動きを、誘導して、
「た」と言おうとせずに、「た」を出す。




出たら
(出したら、ではなく、出たら)


それが、「た」。
と、伝える。


つかんだその動きを、繰り返す。


あやしくなったら、
誘導の方法を、もう一度。



その時には、
「た」と言おうとしないように、誘導する。




では。
このお子さんの誘導に使った方法です。



言葉と、
私の動きと、
両方使いながら、誘導しました。



舌を上下の歯で軽くはさむ。
(噛むと痛いので、はさむ)

歯と口を、パッと開く。

はさむ。
開く。

はさむ。
開く。

繰り返す。

今度は、口を開くタイミングで、
徐々に息を出して行きます。


息です。

声ではありません。

繰り返す。

ちょっとだけ、「た」の子音に近い音が出てきます。




「それをしながら、あ、って言ってみましょう!」


繰り返すと、徐々に、「た」に近い音が出てきました。



ここまでは、
口を開く前の構えは、、
舌を歯ではさむ形です。


一緒に繰り返しながら、

私の舌を、
少しずつ、口の中、上の歯の裏にずらして行きます。


お子さんの舌も、同じように、すれていきます。


「あ」を出す前の、舌。

先を上の歯の裏につけるだけではなく、
舌の前方の「面」を、
(面積としては、少し)

上のあごの天井で、上の歯のすぐ後ろの面、に当てるようにしていきます。

この辺りは、言葉で説明しても難しいと考え、
私の動きをオーバーにして、
見せながら、一緒に繰り返しました。

すると・・・・。


「た」が、出ました。

その動きを、繰り返します。

そうして・・・・。



「そうそう。それが、 た!



「た」「た」「た」






同じ様にして、
「と」も誘導しました。



舌を歯ではさむのは、同じ構え。

唇を、「お」の形に、少しすぼめます。


その構えから、
息をのせる。


「と」の子音に近い音が出たら

「お」をのせる。

「と」に近い音が出る。



徐々に、歯にはさんでいた舌の構えを、
口の中に移していく。


「と」が出る。

「それが、と!!」






このお子さんの場合は、
「た」と言おうとすると、
舌が中にひっこんで、
舌の奥の方で作る「か」になっていたのです。

「と」についても、同様です。


ですので、
舌が中に引っ込まない構えを、
最初はオーバーに作りました。

そこから誘導していったわけです。



誤る構音は、何か。

そこに一貫性はあるか。

どういう音、どういう構音の運動になっているか。

音の弁別はできるか。

構音に必要な、舌や口の動きは出来るか。

見本(私の口や舌の動きに)注目できるか。

見本をみて、マネをすることは出来るか。

鏡で自分の動きをみながら、運動を調整することは出来るか。


・・・を、確認するステップがあり。

その後の、このセッションでした。




子音は、
構音される場所(息のさえぎられる場所)
息使い(息のさえぎられ方)


で、分類されます。

今回練習した、「た」「と」の子音は、

構音される場所としては、歯茎音。
息のさえぎられ方としては、破裂音。


それが、置換していた「か」「こ」の子音は、

構音される場所としては、軟口蓋音。
息のさえぎられ方としては、破裂音。

です。

ともに、発達的には、3歳位までには獲得することが多い子音です。
そういうことを念頭において、対応します。



今回、
単音は、出ました。
「た」と「と」が語頭にある単語も、少し言えました。

でも、きっと、まだまだ不安定です。



次回の訓練で、状況を見ながら、
無意味音節
単語(語頭・語中・語尾)
短文
会話

という感じで、順に定着を図っていきますが、

他にも置換している語音がありますので、
修正していく順番を考えながら、
訓練をすすめていきます。


以上、小児の構音訓練の実例のご紹介でした。

ちなみに。
大人の方でも、根本の理屈は同じです。



それでは、本日はこのあたりで。

長文お読み下さりありがとうございました。




★ご参考になることがございましたら、応援(クリック)お願いします。

    ⇒ 

    ⇒ 



★ かあこ Facebook はこちら (お友達&フォロー大歓迎です!)

     ⇒ Facebookへ