霜月プレゼンツ!甘さ皆無のバレンタインデーベインデーネタ、続きです!
よかったー!おさまったー!!これでラストの後編です。
許可を頂きましたので、メロキュン参加作品とさせていただきます!
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HARAKIRI 後編
「…………………君はそんなに俺が嫌いか……?」
「だから!好きだって言ってます!!」
何だコレ…。
見届けたはいいけど………いい…のか?
社はキョーコに言われた通りに水を用意し、ついさっき自らが本命と知って破顔していた男が思わず口にしたセリフと、やっと「好き」というオーソドックスな言葉を口にしたはずの女が逆切れ口調で返しているのを眺め、居心地の悪さを感じていた。
「謝りませんからね。そのチョコは最初っから私が自分のために作ったものなんですから」
勝手に食べたあなたが悪いんですと憤慨するキョーコ。
そんなキョーコに対し、蓮はちゃっかり膝枕なんてしてもらってソファに横になっていた。
口にした瞬間のあまりの苦みの衝撃に、また口の中が渋い。
蓮は水を口にしつつ、それでもそのチョコを食べるのを止めない。
そう言えば禊とか毒悪な感情とか、そんな気持ちを詰め込んだチョコと前置きしていたキョーコ。
蓮が倒れた状態で、そのチョコの正体を社はキョーコに確認した。こんな状態でも蓮のマネージメントを行う社の責任範囲の事柄だから。
常軌を逸した状態だったが、間違いなく愛の告白を受けたはずの担当俳優が本人に「嫌いか?」と聞いてしまう程の破壊力を持ったアイテムなのだ。
「え?市販のチョコを溶かして固めただけですよ?むしろ手作りというのが烏滸がましいくらいの品です」
キョーコの回答に社は首を傾げた。そんな社に、キョーコはカバンを引き寄せパッケージを見せてくれた。
「これです」
社に手渡されたチョコレートのパッケージ。
それはおかしなパーセンテージが表示された重厚なデザインの板チョコだった。
「………これって…」
食べ物に興味のない蓮は知らないかもしれないが、人並みの食欲と芸能界を生き抜くマネージャーとして流行り廃りや時事ネタはある程度おさえている社には見覚えのあるソレ。
砂糖を一切含まず、カカオ主成分で99%構築されたその食べ物はもはやチョコレートとは呼べないという評判のモノだ。残りの1%は土だとの噂もある。
「だって、私の持っている毒悪な感情に合致して、自らの禊として食べるにはぴったりでしょう?」
にこやかに笑うキョーコに社は背筋に感じた悪寒を隠せない。
キョーコの用意した切腹用の鋭利な刃物は、超絶な苦みを持つチョコレート。
コレを一気に食べる所行がキョーコ式の失恋切腹行事なのだ。見事十字に切りさいてやり遂げて見せるとはのことを指していた。
自らの恋心を甘さ皆無で苦みと表現するあたり、やっぱりさすがはラブミー部員。
「きょ、キョーコちゃん。これってほんのちょっとずつ食べるのがいいって…」
「はい。でも自らの粛正の為に私は一気に食べるつもりでしたけど。…って、敦賀さん!」
社との会話中も、まるで苦行のように巨大なひび割れチョコレートの欠片に手を伸ばす蓮をキョーコがたしなめた。
「無茶しないでください!これは一気に食べる様な代物じゃないんです!」
「…自分は一気に食べようとしてたくせに」
「敦賀さんはこれからお仕事です!ほんのちょっとでもこんなに疲労困憊してるのに!」
キョーコは蓮の手の届く範囲からチョコを遠ざけようとするが、蓮は頑として凶悪チョコレートの入ったひしゃげた箱を手放さなかった。
「嫌だ。だってこれは最上さんの気持ちが詰まってるんだろう?全部食べる」
「な…何を屁理屈を…。これは甘いものと一緒に少量ずつ食べるモノです」
オカシイな、この二人バレンタインにチョコのやり取りをして、紆余曲折と常識逸脱を経てだったけど両想いになったんだよな…?とあまりにも素のままの会話を膝枕というラブラブカップルのスタイルで交わしている蓮とキョーコに社は頭を抱えたくなった。
おそらく、そんなことは二人とも…少なくともキョーコの方はすっかり忘れてしまっているんだろう。
「分かった。甘いものと一緒に食べればいいんだね?」
蓮はむくりとキョーコの膝から起き上がった。そしてキョーコの隣に座り直す。…そう、至近距離に。
社は嫌な予感がして2人から目を逸らし、まだたくさんあるチョコレートをダンボールの隙間に詰めはじめた。
キョーコは蓮が何を言わんとしているか全く理解できず小首をかしげている。
蓮は追加で割れたチョコレートを手にして口の中に放り込んだ。途端、その苦味に歪む蓮の表情。
「ああっ、またっ……んっ…」
その様子に眉を顰めたキョーコを引き寄せ、蓮は素早く小言を紡ぐ唇を塞いだ。
蓮の舌先からチョコレートの苦みが広がり、キョーコの眉根がきゅっと寄った。
「ん…甘くなった」
ぺろりと出した蓮の舌先に乗っかった苦い苦いチョコレート。
それを見せつけられて、口の中を占拠する苦みが蓮のキスでもたらされたと理解したキョーコは、やっと乙女らしい反応を見せた。
首から額まで…甘い甘い苺のように真っ赤だ。
「やっぱり恋人とのキスは甘くていいね」
「なっ…こ…っ!!」
「だってそうでしょ?最上さんの本命は俺で、俺の本命は最上さんだし」
口元を両手で覆い真っ赤になったキョーコに、蓮はにやりと笑った。
夜の雰囲気を醸し出した蓮の指先がキョーコの手を引きはがし、柔らかそうな唇をなぞった。
「さて、このモンスターを攻略するために、協力してね?」
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スイマセン!
カ○オ99%、ホントに溶かして固められるかはわかりません!!!