1/20発売の本誌ACT208の続き妄想です
ネタバレものなので、未読の方、コミックス派の方はバックプリーズ!!
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特に今回は本誌の展開上多分入口のルート分岐は2択…
今まで以上に被り必発だと思われます…。拝読に伺う作家様のACT208の続き妄想は自分のを書き上げるまで拝読を避けておりますので内容被ってもご容赦くださいませー。
続き妄想に関してははパクリとか被りとか言っちゃいけないと思ふ…←暴言
ACT208妄想 side/R
何だろう、無性に…気に障った。
この子の口から語られる先輩としての俺の話。
さっきまで、敦賀蓮と違って近い距離感がいいななんて思っていたはずなのに。
もちろんこの子から役者の先輩として良い感情を持たれていることは嬉しい事でもあるはずなのに。
無性に男として全く意識していない…純粋に演技を愛する彼女と同じ道を歩く者としか見られていないことがチクチクと心を刺す。
あの時は勢いが欲しいと思ってやった。
どちらも選べない自分に、演技をやりとうそうとする翳らない意志を確かめたくて。
難敵を攻略しても、その意志は何度も闇に飲み込まれた。
決してその験担ぎで打ち勝てたわけじゃない。
闇に引きずられる俺を救い上げてくれたのは君なのに。
あたかも一人の力で乗り切ったかのように信じてい違わないその表情に感じたのは
後ろめたさなのか、自分の力を知りもしないこの子への苛立ちなのか…入り乱れて混沌としたものが腹の奥底で渦巻いていた。
妙な反発心から、何でもしてくれると言った彼女の言葉を逆手にとった。
以前もこんな状況はあったような気がする。
何かして欲しいことがあるかと問われて、思わず口走りそうになった言葉は固まった彼女の表情で飲みこんだ。
なのに…
『古より変わる事のない呪いにかけられた姫や王子を救う最も伝統的な方法…』
いかに愛の欠落者であっても、メルヘン嗜好の強い最上さんが連想しないはずが無いだろうそれ。
持ち上げた右手で己の唇をつっと辿った。
間違いようもなく、この子が口付けを意識するように。
口走ろうとした言葉を飲み込めたあの時と、今とは何が違いがあるのだろう?
真っ直ぐ俺を見ていた最上さんの視線がふっと足元に落ちた。
恥らうでも罵るでもないただ俯いて見えない表情。
(…バカ、だな)
最上さんの反応が怖くなって、目を逸らす。
幼い頃夏の日を共に過ごした妖精の王子として好意を持たれていることは分かるが、それが恋愛感情だと思うことはできないほど彼女の俺に対する態度は純粋だ。ましてこの子は愛を否定し恋愛感情を抱くことは愚行だと言い切る愛の欠落者だ。
それ故に誰の者にもならないことを誓わせて、卑怯な安堵に身を浸していた俺。
俯いたのは、俺の指し示す行為を正確に連想して困っているのだろう。
自分自身に嫉妬して思わず取った行動に苦笑を禁じ得ない。
その時、先ほどと同様に両肩を掴まれぐいっと引っ張られた。
(…え?)
バランスを崩しそうになって思わず目を上げたが、それよりも先に鼻腔を擽った心地よい彼女の香りと唇に押し付けられた柔らかな感触に思考が停止した。
視界に入ったのは伏せられた瞼に長い睫毛。
そんなに長くはなかったのだとは思うけれど、はっとしたのは唇に触れてた温もりがなくなって南国でも体温よりは低い空気にひやりとした感覚を覚えたから。
「どう?コーン。これで呪いが解ける?」
最上さんの顔全体が視界に納まり、心配そうに俺を見上げる琥珀色の瞳。
思わずそう言葉を紡ぐ唇の動きを目で追ってしまい、今の今まで自分のそこに触れていたのが最上さんの唇だと今更ながらに認識した。
(…キス…された…のか)
キスしてと言外に要求したのは俺の方で、実際にそれを叶えられた状態。
触れたいと焦がれていた唇だったのに…
「コーン?どう?呪いが解けた感覚って分かるのかな?笑えそう?」
おそらく俺は無表情だったのだと思う。
俺に話しかける最上さんの表情には頬の赤みや恥じらいはなく、ただただ純粋に幼少期からの友を心配する色合いだけが見て取れる。
キスとはこんなに簡単にできるものなのだろうか?
そう思えば、役者として何人もの女性に触れてきた自分に思い至った。
(―――役者の心の法則…)
それは不破との接触にショックを受けた彼女を守ると同時に浅はかな嫉妬を隠しきれなかった過去の俺が教えた事だ。
「……ダメ…」
「そ…か…、私みたいな人間の庶民の力じゃやっぱり無理かぁ」
「…だって、今の…キスじゃない」
え?と疑問符を乗せた視線が俺を見た。
「……役者の心の法則なんて…使っちゃダメ」
今後どんなに自分の幸せを否定して、愛の欠落者である最上さんの先輩として傍にいても。
仮に演技上で想い合う機会があったとしても、この子はきっと俺との接触すら役者の法則を使いこなしてしまうんだろう。
「呪いを解くには、キスに『気持ち』が伴わなきゃ…」
「…え…?…」
「キョーコちゃんの、ファーストキスが欲しい」
酷い我儘を言っている。
戸惑いの色が広がる瞳に映る俺はなんて醜悪なんだろう。
自分が久遠なのか敦賀蓮なのかもわからない。ただ、俺は『俺』だったのだろう。
無い物ねだりが過ぎるのは自覚できたが、止まらなかった。
「何でもしてくれるって…言ったよね?」
「コ…ーン…?」
じりっと距離を詰めると、詰めた分と同じだけまた距離が離れる。
「俺の呪いを解いて、キョーコちゃん」
「…………」
離れた距離が苦しくて、思わず懇願していた。
見開かれた瞳を覗き込むが、驚きと戸惑いの感情以外読み取ることができない。
男にキスして欲しいと言い寄られているのに、未だに現状を理解できていないこの子の様子に…
………苛立ちが募った
「……くれないなら……勝手にもらうよ」
低く唸って、彼女の顎を捉えて逃げられた距離を詰める。
もう片手は絶対に逃がさないと細腰を捉え、半歩進んで最上さんの足に自分の足を絡めた。
「2度目は…無いよ」
吐息が唇を撫でる距離まで近づいて、囁く。
「え?」
そろりと、固まったままだった瞳が俺を見た。
「だからね。これが、君のファーストキス」
まだ理解していない最上さんの瞳の色を確認したのを最後に視界が瞼で黒く閉ざされた。
飢えた獣が獲物の腸にかぶり付く様に、欲望をのせて唇を薄く開く。
(…言葉でも状況でも分からないなら、体験させるだけだ)
唇を押し付けて、触れるだけの接触をキスだと思った彼女に男の欲望をのせた口付けを思い知らせてやろう…と。
動きの停止した小さな唇を貪って、舌を絡め取って艶やかにぽってりと腫らせてやろう…
「……っ!?」
黒い思考で柔らかな感触を堪能するつもりだった己の唇に、予想もしていなかった鋭い痛みが走った。
噛みつくように愛しい彼女の唇を貪るつもりだったのに、俺が触れるより先に押し付けられた柔らかい感触と同時に歯を立てられた。
痛みで反射的に離れると、伏せて表情は見えないが真っ赤に染まった額と頬が栗色の前髪の隙間から透けて見えた。鋭い痛みはすぐには引かずジンジンと響き、舌先でなぞると薄く鉄の味がした。
ようやく見えた期待した赤面なのに、遠慮もなしに咬みつかれた鋭さにそれほど嫌だったかと落胆し、苛立ちから愚かな行為に走った自分をやっと自覚した。
「……欲しいなら、あげる……これで呪いが解けるなら…あげる」
(……なに…を……?)
軽蔑の言葉が飛んでくると覚悟していたが小さく震える手は俺の肩を掴んだままで、俯いた表情から予想とは異なる言葉が零れてきた。
「今ので、2回目。…コーン、今のキスで…私の気持ち…伝わった?」
「…え…?」
相手の唇を切るほどの鋭い咬みつきをキスという最上さんの言葉に混乱する。
こんな行為は拒否以外の何物でもない……
でも彼女の両手はどこにそんな腕力があるのか俺の肩をしっかりと掴み、至近距離に引き付ける。
戸惑いを隠せない俺の目と鼻の先で、地に向いていた顔が持ちあがりその表情が露わになる。
耳から額まで赤く染まった少女の顔。
キッと俺を見据える瞳は潤んでいて、すんっと鼻を啜った呼吸が空気を震わす振動となって俺の頬を打つ。
「……ごめん…」
視線の強さに、バツが悪くなって思わず目を逸らした。
すると、両肩を掴んでいた両手が、頬に滑ってきてしっかりと捉えられてしまい視線を逸らすことを許されなかった。
「…コーン、なんで謝るの?」
怒ったような鋭い眼差し。
俺の頬を包み込んだ手のひらは熱くて、それでいて至近距離にある紅潮した頬と潤んだ瞳はいっそ拷問だった。
「………」
答えられずに沈黙するしかない。
「…………なんで、謝るんですか?……敦賀さん…」
くしゃりと、強い眼差しが泣いている様な笑ってる様な複雑な色に細められ、潤んだ琥珀色が視界いっぱいに広がったと思っていたら先ほど噛み切られた唇を慰撫するように熱い滑りがなぞっていった。
その直後、再び塞がれた唇。
舌先に新たに彼女が運んできた鉄の味が広がる。
「……これで、3回目」
つっと伝った銀糸を断ち切って、赤い唇が言葉を紡ぐ。
「地獄に堕ちる人でなしの女となら…きっとこれ自体悪魔の呪い、ですね」
禍々しい言葉とは裏腹に熱い雫をこぼして神々しく微笑む愛しい少女。俺は泣きたい気持ちで目を細めていた。
「……やっと……笑ってくれた……」
安堵したしたように零れた言葉に、俺は自分が微笑んでいることに気が付いた。
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この後蓮さんは、怒っているんですからね!?とか散々メルヘン思考を利用して騙したことをなじられればいいと思ふ…
……これ、キョコさんサイドもいるかなぁ…?←自虐プレイ?