10/19発売の本誌ACT205の続き妄想です
ネタバレものなので、未読の方、コミックス派の方はバックプリーズ!!
本誌発売までに終わらせる自信皆無のレッツ見切り発車です!←懲りない・・・しかも多分長いヽ(;´Д`)ノ
今回の続き妄想に関しては別途お知らせがあります。読み進めの前にこちらを一読の上お願いいたします→ACT205妄想についてお知らせ
※お知らせを未読の状態でのご意見・質問(特にクレーム)に関しては厳しい反応を返すやもしれません。必ずご確認ください。
それでは自己責任でご覧くださいませ↓
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“もう悲しい思いはしない?”
優しく労わる言葉に
地獄に落ちる覚悟で臨んだこの想いの醜さや、今後享受しなければならないであろう痛みが瞬時に脳裏を駆け巡った
そんなに私を甘やかさないで
その優しさにすがったら
もっともっと
醜く堕落してしまうから
ACT205妄想【2】
涙して停止してしまった事で、困ったように、心配そうに自分を見つめる碧の瞳にキョーコははっとした。
ここで思うままに、奇跡の再会を果たせた妖精の王子に過去の過ちを繰り返すわけにはいかない。また自分の事ばかり聞かせては…と、キョーコは滲んだ涙をグイッと拳で拭った。
「ご、ごめんねっ、何でもないの。コーンに会えたからなんか涙腺が壊れてるみたい…」
あからさまに取り繕うキョーコに、やっぱりこの子は素の状態では嘘がヘタだなと蓮は思いつつも誤魔化した表情の奥に大きな感情の波がある事に気づかざるを得ない。
そして、それを見なかったことにもできない。
“悲しい顔 してるよ?”
「そんなこと…ないもん…」
砂浜に書いた文字を見つめ、尻すぼみに小さくなった幼い言葉尻は幼い日に返ったかのようだった。自分を抱きしめるようにきゅっと膝を抱えたキョーコは蓮の目にどのように映ったか。
蓮はキョーコが本気で嫌がらない限り…と、思考を巡らせる。
敦賀蓮として知り得たキョーコの情報は、あの夏の短い日を過ごしたコーンでは知りえないことばかり。憶測の中で切り出そうにも、キョーコが今ココにいる理由や、容姿の様変わりした理由を理解した上での質問はできない。そして律義で我慢強いキョーコは無理をしてでも誤魔化してしまうのだ。相手に負担をかけないようにと。
でも…
今は先輩『敦賀蓮』としてではなく、彼女の知る妖精の王子『コーン』としてなら…
(俺には話してくれない心の内を聞けるかもしれない)
そんな思いから、蓮はまた手を動かす。
“お母さんとなにかあった?”
蓮の脳裏にあるのは黒髪を二つに結い上げた少女の姿。
真っ直ぐで
何事にも一生懸命で
メルヘン思考で
母親のことで涙し
それがショーちゃんと呼んだ王子のことで笑顔に変わる
コーンとして予測しうる、キョーコの感情の揺れの元になりそうなことを尋ねてみる。
それに対しては少し寂しげだったがフルフルと首を振るキョーコ。
蓮は一度躊躇った後、再度砂浜に小枝を滑らせる。
“君の王子様は?”
本来であれば尚の話題などドス黒い嫉妬が湧き上がってくるから耳にしたくもない。
しかし、幼い日のキョーコの感情を大きく動かす要素を『コーン』はこの二つしか知らないのだ。そして平時では、尚の話題は不機嫌になる蓮をを敏感に察するキョーコが常に避けている。
尚が絡むと社と同様に異常なまでに怯えるキョーコの様子に自分の嫉妬深さに呆れもするが、それなら自分の不機嫌さの背景にどんな感情があるのかも気が付いてくれてもいいものだと、蓮がついつい思ってしまうのは恋する男の身勝手さだ。
そして結局、あの夜の前、あの場所で尚とキョーコが共にいた詳細を蓮は知らないままでいる。
鳴り響くケータイの呼び出し音と表示された非通知の文字に決壊を破った醜い感情の波は、どこまでもセツカを演じたキョーコによって蓮の中で統合された。しかし、だからと言って憎しみを向ける相手である尚とキョーコが一緒にいたことに対する嫉妬心がなくなったわけではない。
追い打ちのように『間違ってもアンタに惚れる様なバカな真似だけはしない』とわざわざキョーコの言葉を尚が待ち伏せしてまで告げてきた背景には、何かしらキョーコと尚の間に自分の知らない自分の話題があったということ。
どういう経緯で尚のあの行動が発生したのか理解できれば、この醜い嫉妬心も少しは治まるのかもしれないという黒い計算も蓮の内にあった。
(今この子の中での不破の存在って…)
蓮の質問にキョーコは砂浜を見つめ、複雑な表情をした。
蓮の知るキョーコであれば、不破の顔を思い浮かべた途端怨キョを発生させ悪鬼の様な怒りや憎しみの表情を反射的に浮かべてしまうはず。
単純な負の感情だけではない表情を見せたキョーコの反応を、蓮は注意深く伺った。
最初は戸惑ったように、そしてふっと遠くを見る様な瞳の色。そして最後は自嘲気味な冷たい色と僅かに温かい色が入り混じる様な表現しがたいキョーコの表情。
「…王子様じゃなかったの」
ぽつりと漏れたキョーコの声は波の音にかき消されるくらい小さかった。
そろりと、蓮を見上げたキョーコと目が合う。
口を開くのを躊躇っている様子のキョーコは、またしても自分のことを中心に話してしまうことを気にかけている。それを読み取った蓮は、話すよう促してみた。
“何があったの?”
「コーン。私…変わったでしょ?昔の面影が全くないくらい」
それは見た目だけの話ではない。見た瞬間にそうだと確信できたコーンと大違い…そう意味合いを含めてキョーコは呟く。
「私ね。コーンと出会ったころに持っていたもの、全部なくして…人としては失ってはいけない大切なモノまでなくしちゃったの」
幼い頃、王子様と思っていた相手は自分のことはお姫様とは思っていなかった。
夢見がちな自分はその事実を突きつけられて、心底相手を憎んで復讐を誓った事。
復讐の為に選んだ道で、失ったものが大切なものだと説く人や今まで出会ってこなかった友人を得た事。
演じることに興味を覚え、自分を作り上げていく芝居を愛し始めた事。
キョーコの口から語られる過去は以前耳にしたものと相違はなく、蓮は静かにキョーコの隣に腰を下ろして耳を傾ける。
南国の潮風に髪を揺らして昔を語るキョーコは、その時々の感情を思い出しては表情に浮かべながら言葉を切らさないが、どこか穏やかで復讐など忘れてしまっているかのような錯覚を蓮に与えた。
尚の事になると感情を顕わにし闘志を剥き出しにする印象のキョーコが、こんな穏やかな表情で過去を語るのに驚きも感じていた。
「…恋をするのは愚かしいこと。愛は破滅と絶望の序曲だって、その時信じて疑わなかった」
(…疑わな『かった』?)
復讐なんて愚かなことは忘れて、もっと自分のために生きればいいのにと、蓮自身も何度も思っていた。いくら復讐の意志よりも演技に邁進する気持ちが勝っていても、キョーコは愛を否定するラブミー部員だ。
だからこそ、キョーコが誰も男として愛さない、誰のものにもならないからと、蓮は告げられない自分の心を慰めているのだ。
それを過去形で語ったキョーコに、蓮の心中がざわめく。
手の中の小枝が力の入った拳にミシリと小さな悲鳴を上げたことに気が付いて、蓮は今すぐ問いただしたい気持ちを押さえつけた。
“今はちがうの?”
聞きたい、けれど聞きたくない回答だが、この機を逃せばキョーコの本音を探り当てることは今後難しいだろう。
演技力を高めているキョーコは、最近役が憑けば本人の気持ちを推し量ることが難しくなってきている上に、仕事上の先輩でしかない自分の前では後輩の仮面を被り本音を見せないことも多くなってきた気がする。
砂浜の文字を凝視するキョーコを、蓮はじっと見つめていた。
キョーコのどんな反応も見逃さないと目を凝らす蓮の前で、キョーコは寂しげに…でも凛とした強さと嫋やかな女性らしさを滲ませていた。
匂い立つような女性性に、蓮は息を呑む。
そして……自分の質問が是であることを理解した。
「認めたくなかったの。お伽噺みたいにキラキラして綺麗なモノばかりじゃなくて…。ドロドロして醜くって…」
自分の恋を認めるキョーコの発言に驚きと、苦しいほどに胸に渦巻く想いに蓮は眉を顰めるが、キョーコの発言に蓮は自分がキョーコに向ける気持ちをなぞっていた。
いっそ凶悪な程、嫉妬心によってコントロールを失った自分は大切にしたいキョーコすら傷つけようとしていたこと…。
それでも
「気持ちはどんどん勝手に大きくなって。恋なんて、やっぱり地獄に落ちる破滅と絶望の序曲なんだけど…どんなにひどい現実でも、すべては必然で…その人に出会うために必要なことで…」
キョーコの言葉は蓮の中に強く響く。
告げるつもりもなく、抑え込める自信をもって解き放ったキョーコへの恋心のきっかけ。
些細な温もりで更に手を伸ばしたくなること
抑制も効かずに行動してしまってみっともなく狼狽えたこと
そしてアメリカでの挫折と敦賀蓮として日本で生きる選択をしなければ、キョーコに出会えなかった事実。
「愚かで、醜くて、でも愛おしい…そんなこの気持ちから目を逸らしちゃいけない、演じることを通して自分を作っていく私には無駄な事じゃないんだって諭されて」
(確かに、この気持ちを知らなければ…俺は役者としてやってはいけなかった)
キョーコに対して持った恋の兆しを育ててみたからこそ出会うことができた新たな一面が無ければ、蓮はダークムーンの嘉月を降ろされることになっただろう。
キョーコの言葉は自分の事として、蓮の心に突き刺さる。
(似てるんだな…俺とこの子は)
だから惹かれて止まないし些細な事でも気にかかる。まるで自分の半身を眺めている様な…キョーコを求める気持ちがすんなりと蓮の中に腑に落ちてくる。
「だから、この気持ちは…私の中だけで育てるの」
遠く海を眺めていたキョーコの視線が、ゆっくりと蓮に向けられる。
淡く微笑むキョーコは美しく、冒しがたい神々しさを湛えているがその奥に揺れる悲しみの蒼はずっと消えない。
(…どうして)
どうして、この子はこんなにも悲しみの色を湛えているのだろう?
大切なモノを取り戻したはずなのに。
自分と同調してひしひしと伝わる切ない感情に、その恋心を向ける相手に向かう嫉妬よりもキョーコの辛さに蓮の意識は向く。
それは、どんなに想っても
どんなに伝えたくても
伝えることができない自分の恋心と同じ
“どうしてそんなに悲しそうなの?”
砂浜にえがいた呼びかけは、自分自身にも向けられる疑問なのに
そのことに蓮は気づかない。
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思いっきりシリアス路線…いや、ギャグ方向じゃないんだけどさ
あの流れに持って行けるのか!?大丈夫か自分!!!←某様のみにやりと嗤って蔑んでくださいませ。
そしてやっぱり描写が長いよ!!!想定の1話のがやっぱり2~3話