「ユヅルはロールモデル」ネイサン過去記事 | siennaのブログ 〜羽生君応援ブログ〜

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羽生結弦選手の現役時代をリアルタイムで体験できる幸運に心から感謝しつつ、彼のスケートのここが好きあそこが好きと書き連ね、ついでにフィギュアにも詳しくなろうと頑張る欧州住まいのブログ主です。

歴史を作った少年、ネイサンが羽生くんのことを「ロールモデル」だと言った記事ってどれだったかしらと思って探したら、なんと今年の全米SPの後、あのハーシュさんが書いたものだったんですね。

読み進めるうちに「エニグマ」ネイサンの考え方も分かり、米スケ連の方向性と言うのも見え、面白かったのでご紹介します。随分前の記事なので、既出かもしれませんが…。

なおハーシュさんは、もう皆さんご存知でしょうが、筋金入りのクワド推進派。アメリカ男子フィギュア界のいわゆる「クワドレス」状態に常々容赦ない苦言を呈していて、その信念ゆえに時に的を外れた批判もされる方。該当する米男子選手ファンの方々は読むと不快な思いをされるかもしれません。くれぐれもご注意くださいね。そして記事は前述の通り、今年1月時点の内容です。



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歴史を作ったチェンと旧態依然の米国ジャッジ


米男子フィギュアが五輪やワールドでメダルレースに加わろうとするならば、ネイサン・チャンのような姿勢を持ったスケーターが必要だ。

チェンはまだ16歳でジュニアとシニアを並行して戦っているが、このスポーツの新しいリアリティをちゃんと理解している。だからこそ、金曜夜に全米選手権会場に訪れたやりきれないほど少ない観客の前で、新たな歴史を作ることができたのだ。

アメリカ人ジャッジたちの理解力も同じレベルであればよかったのだが。

ジュニアグランプリファイナルを制して1カ月、チェンは全米選手権ショートプログラムで二つのクワドジャンプを降りただけではなく、そもそも試みた最初の選手となった。

「アメリカのスケート界にやっと面白いことが起こった」と、チェンのコーチ、ラファエル・アルトゥニアンは言う。

しかし、それもジャッジにとってはクワドレスのアダム・リッポン(26)やロス・マイナー(25)を下すには十分ではなかった。リッポンのワールドにおける過去の戦績は6、13、8位、マイナーは11、14位と、どちらもワールドのメダリストになるチャンスはない。

4-3コンボを決めたマックス・アーロンも91.83対90.90と、マイナーにかろうじて勝った形だ。リッポンは、86.33のチェンに対し88.01だった。フリーの試合は日曜に行われる。

アルトゥニアンは「これはフィギュアスケートにとって『君たち、クワドを跳ぶなよ』というはっきりしたメッセージだね」と皮肉った。

チェンのクワドの着氷は完璧ではなかったし、スピンに大きなミスが出たのも本当だ。しかし彼のやったことは、まさにSamuel Auxier米フィギュアスケート連盟会長が言ったように、「スポーツとしての人気が瀕死状態にあるフィギュアスケートに、新しい生命を吹き込んでくれるようなチャンピオンをアメリカが生み出す」ためには必要ではないだろうか。

「真にフィギュアに注目してもらうには、ワールドランキングのトップに米国の男女選手がいなければならない」と、Auxier氏。「私はジャッジ資格者で、国際大会でも仕事をするが、他の国々の進歩のレベルには少々怖さを覚える。我々は追いつかなければならない」

追いつくためには、選手たちがもっと若い時からクワドを跳ぶのを容認するだけでなく、むしろ奨励しなければならない、と彼は言う。

一方、現在怪我で欠場中の現全米王者ジェイソン・ブラウンは21歳だが、去年まで競技会でクワドを跳んだことがなかった。着氷はいまだにしていない。それでも彼が2016年のワールド3枠の選考対象となる可能性は残されている。

去年準優勝したリッポンは、1年前のSPではクワドルッツに挑戦したが、今年はすべて3回転を跳ぶという堅実路線を選んだ。

しかしそれでは絶対に、日本の羽生結弦や宇野昌磨、カザフスタンのデニス・テン、スペインのハビエル・フェルナンデスやカナダのパトリック・チャン相手には戦えないのだ。チェンが属するさらに下の世代は言うまでもない。

国際ジャッジたちは、ショートプログラムにおけるクワドを、時代の「マスト」と見なすようになっている。クワドを装備しないスケーターは、超音速で進化するフィギュア界においては時代遅れなのだ。

もちろん、マイナーもリッポンも審美的には魅力的なスケーターたちだ。だが、先に挙げた5人の選手たちもそれは同じだ。正直なところ、より魅力的だ。

「ワールドでは男子はクワド合戦になる。トリプルアクセルを入れれば満足という選手たちではない」(アルトゥニアン)

チェンはこれまで競技会で二つのクワドを跳んだことはなかった。挑戦のリスクが極めて大きいことは分かっていた。しかし、その報酬は、世界のトップグループの仲間入りをする、いや、そこで有利に立てるレベルの難易度を手中にすることなのだ。

クワドの点数は、捨ててしまうには高すぎる。

「今、シニア選手としての自分の地位を確立しようとしている。これはそのためのステップだ」とチェン。「羽生は自分にとってものすごく大きなロールモデルだ。いつか、今の彼のようになれたらと思っている」

羽生は今季、GPFとNHK杯でそれぞれ5本のクリーンなクワドを跳んだ(SPで2本、フリーで3本)。フェルナンデスはGPFのフリーで3本(うち1本の実施は良くなかった)が認められた。中国のジン・ボーヤンは、同大会フリー演技で4本(うち3本がクリーン)が認定されている。

「自分にはショートとフリーで計5本のクワドを跳ぶだけの体力がある。挑戦するならまだ若い今がチャンスだ。歳を取れば取るほど難しくなるだろう」(チェン)

そして彼には、一本目のクワドであるサルコウがうまく行かなかった場合にプランを素早く変更できるだけの機転も備わっている。

サルコウの着氷が乱れ予定どおりに3Tを付けられなくなると、それを次のクワドトウループの後に入れ、見事なコンビネーションジャンプとして実施、16.46という点数をもぎ取った。

「自分のプログラムにはすべて、いざという時のためのバリエーションを用意してある。演技中に考えなくてもいいようにだ。コンボを一つ入れなければならないこと、そしてトリプルアクセルはコンボにしてはいけないということは知っている」

チェンがクワドの練習を始めたのは14歳の時だ。4度目の回転が自然に感じられるまで、3回転ジャンプの高さとパワーを徐々に上げるという方法をとった。

「いざ跳ぼうとした時にはもうほとんど出来ていた」とチェン。

彼によると、彼を悩ませてきた一連の怪我(膝、肩、足、腰)とクワドの練習の間には何の関連性もない。

「これまでの2年間もそれほどクワドの練習はしていない。この数年の怪我はすべて成長に伴うもの。それが終われば完全な健康体になるはず」

彼は数年前より頭二つ分背が伸びた。チェンは、金曜のショートで彼より上に立ったクワドレスのスケーターたちより抜きん出ている(訳注:身長ではなく能力について言っています)。

「彼はどの国際大会に出しても恥ずかしくない」とアルトゥニアンは言った。

それは、2010年五輪でのライサチェク優勝以降、アメリカ男子の主要国際大会における戦いぶりについては、当てはまらない。2011年以来、グランプリファイナルにすら進出できていないのだ。

これ以上明確なメッセージがあるだろうか?

以上。