オータム・クラシック2016&べヴァリーさんの記事翻訳 | siennaのブログ 〜羽生君応援ブログ〜

siennaのブログ 〜羽生君応援ブログ〜

羽生結弦選手の現役時代をリアルタイムで体験できる幸運に心から感謝しつつ、彼のスケートのここが好きあそこが好きと書き連ね、ついでにフィギュアにも詳しくなろうと頑張る欧州住まいのブログ主です。

初戦終わりましたー!
優勝おめでとう!世界初クリーン4Lo公式認定おめでとう!!

SPもFSもまだあまり見返す時間がなくてちゃんとした感想は書けませんが、とにかく両プロとも彼の多彩な魅力を引き出してくれてて、大好きとしか言えない。今後の進化・深化に期待大です。ノリのいいプロをずっと見たかったので、SP嬉しい。しかも、ロックという下手すると泥臭くウエットになりがちな方角ではなく、もっと乾いてダンサブルなファンク系だったこともどんぴしゃりでした。レクイエムやトラベラーさん、ビリーブのようにしっとりしたエキシに高難度ジャンプ入れて競技プロにしてもいいモノになるだろうなあと常々思っていたので、流れるような振り付けのホープ&レガシー路線も大歓迎です。

というわけで、生まれたてのプロの感想はまた次回ということで、今回はオーサー談や怪我について情報の入ったベヴァリーさんの記事を訳させていただきました。リンクはこちらですので一度是非クリックしてくださいね。



羽生のオータム(FALL)クラシック、あるいはクラシックな(典型的な)転倒(訳注:FALL(秋)をオータムと転倒にかけています)

モントリオール、2016年10月2日 ベヴァリー・スミス



 面白い展開ではある。羽生結弦は男子フィギュアでは孤高の地位にあると考えられている。軽々とクワドを繰り出す驚くべき才能を持つチャンピオンで、氷上の「センセイ」だと。

 だが羽生は、自分の得意分野で肩を並べんと挑む若手からのプレッシャーも背後に感じ取っている。全米フリーで4クワドを跳んだ米国のネイサン・チェン。4Fを持ち札にJOでも現王者フェルナンデスを下した宇野昌磨。フリーで4クワドを跳び続けている中国のボーヤン・ジン。しかもそのうちの1本は理解を超えた4Lzだ。ジンは芸術面のブラッシュアップにも意欲的だ。

 羽生は、トップの座を守り抜く必要性を理解している。少なくとも、取り残されないようにしなければならないことを。だからこそ今季初戦のオータムクラシックで4Loを入れ、そのジャンプを競技会で降りた史上初の選手となった。

 そうだ。この大会で彼はショートで1本、フリーで1本の4Loを決めた。優勝もした。しかし彼の考えた野心的な計画は、今の段階では非常に厳しかった。

 フリーの得点172.27は、彼の持つ219.48の世界記録から47点以上下回り、総合得点260.57点は世界記録の330.43から70点ほども低い。これは実にショートプログラム1本分に当たる差だ!

 土曜日行われたフリーで羽生は4Loと4Sを降り、質の高いコンビネーションスピンと熱の入ったレベル4のステップを見せた。しかしその後、歯車が狂い出す。

 完璧とは言えない3Fを降り、予定されていた4S3Tが2A2Tになると、会場の大観衆は信じがたいというように息を詰めた。

 続く4Tは回転が不足し、転倒。

 3A3Tは3-2になってしまうが、絶望的というわけではない。
 
 しかし、一大得点源である3A1Lo3Sが3A1Lo1Loになるに及ぶと、点数の損失は大きなものとなった。

 その後3Lzを転倒してしまう。なおこれは、彼の好きなジャンプではない。

 さらに羽生はあたかもダメ押しのごとく、ミックスゾーンに向かう途中床で滑って尻もちをつく。ブレードカバーがプラスチック製だったため足元が悪かったのだ。「それで、転んでしまった」とオーサー。転ぶのは氷の上に止まらなかったというわけだ。しかも不運なことにジャーナリストの目の前でやらかしてしまった(我々の商売は因果なものだ)。

 そう、羽生は出番前にナーバスになっていた。オーサー・コーチによるとそれも普通の事だ。

 ウォームアップも素晴らしい出来ではなかったが、オーサーはそれほど気にしていなかった。

 「しかし、(本番は)締まりがなかった。4Loを降りて良いスタートが切れたと思ったのだが」。結局新しいジャンプが一番良い出来という結果になった。

 「唯一気にかかっているというか自分がアドバイスしたいことは、他人が何をしているかにとらわれなくてもよいということだ。我々が常に勝つのもその点においてではない。他の部分で強いからだ。そこに練習の焦点を当てる必要がある。ハビがやっていることはそれだ。彼は難度を上げようとは考えていない」

 プログラムに4クワドを入れるとなると、ジャンプ間のコレオグラフィーや見せ場をどうするかについて疑問が湧き上がる。土曜午前の公式練習では羽生はこの問いに対し答えを持っているかのように見えた。しっかり意識できていたのだ。ステップや演技には訴えかけるものがあった。しかし本番になるとその部分の意識がおろそかになり、精彩を欠いてしまった。

 「彼は非常に4Loに集中していた」と、オーサーは言う。「我々は、ループがサルコウとはリズムやテンポにおいて全く別物であるという技術的レベルの理解を進めている最中だ。これについてはすでに話し合った。ループを終える、その後身体の状態をサルコウの感覚とテンポに変え、ギアを上げて跳ぶ」

 そう、羽生は終盤疲れていた。「フリーはそれほど練習できていなかった」とオーサー。

 オーサーによると、羽生は怪我のために不定期にしかトレーニングできていなかった。3月のワールド後は左足の靭帯損傷のため6週間氷を離れていた。この怪我の始まりは去年のスケートカナダ(これも彼にとっては厳しい大会だった)にさかのぼる。6週間のうち3週間は歩くこともできなかった。

 そして右足首を捻挫したのが2週間前だ。「ずっと何かしらあったよ」とオーサーは言う。

 羽生は自分のやりたいことが極めてはっきりしており、その方向に自らイニシアチブを取る。オーサーは羽生がリンクに出るまでオータムで着る衣装についても全く知らなかった。

 しかし、すべてが失われたわけではないとオーサーは言う。4Loが3月のワールドに向けての戦略であるならば、1月でなく今から始めなければならない。新しい高難度ジャンプを組み込むことにより、プログラムの他の要素が乱れることはしばしば起きる。それを解決するには時間が必要だ。「必要なのは積み重ね。そして彼はその点に非常に長けている」

 「彼のことを野心的過ぎると考える人は多いかもしれない。だが、練習が軌道に乗りさえすれば、ちゃんと実現できると思う」

 オーサーによれば、羽生は、自分のスタンダードより悪い演技をすることがあると「非常に深い分析を行う」。去年のスケートカナダではパトリック・チャンに敗北し沈んでいたが、次のNHK杯では世界記録を打ち立て、さらに2週間後のGPFではその記録を更新した。過去のNHK杯で4位となりギリギリでファイナルに出場した時も、そこで素晴らしいスケートを見せた。

 オーサーは辛抱強い人間だ。いや、時に彼は、そうあらねばならないのだ。

以上。



スミスさんの記事を読むと、オーサーがゆづの人一倍強い意志とモチベーションに手こずりながらも彼の個性を受け入れ、彼の理想に沿うようにコーチングしているのが感じられます。羽生くんは、高難度vsコレオグラフィー、このフィギュアにおいては相反すると考えられている側面を融合して異次元の演技(lights-out performance)をしてしまう天才。それはワンシーズンに1度の奇跡なのかもしれないし、プログラムの難しさゆえに、万全の体調や準備で挑めなければ、彼に限っては非常に高い期待のハードルを課すのが当たり前と思っているジャーナリストに皮肉を書かれたり、スケートファンから厳しい言葉を浴びたりすることもあります。ファンにとってはキリキリと胃の痛いことこの上ないのですが、今夜放送されたインタによると、羽生くんはそのチャレンジングな状況を含めてワクワクと楽しんでいるというではありませんかw ほんとに…いろいろと非凡だな…という思いを新たにしつつ、今季も彼を全力で応援していきたいと思います!